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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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14 . May


爺と普でお花なお話。

事後ぽいな。普日に見えなくもないが、日普ですから!!…全力で言い張るんだぜ。








拍手[9回]



 


 布団の上、縒れたシーツの上を転がって、プロイセンはスンと小さく鼻を啜る。それと同時に鼻腔を擽る甘い花の香りに身を起こせば、引き留めようと白い腕が伸びた。

「…どちらへ?」
「ん?何だ、爺、起きてたのかよ?」
「寝てませんよ。余韻を味わっていただけです」
「…イチイチ、恥ずかしい爺だな」

上半身を露わに起き上がったプロイセンの体には無数の薄赤が散り、腰に腕を回すようにしな垂れてきた日本の背には引っ掻き傷が生々しい。日本はずるりとプロイセンの膝に乗り上げると、脇腹に薄く残る傷に舌を這わす。それに色気の無い「ぴぎゃ!!」と言う声を上げたプロイセンは日本の額を押して遠ざける。遠ざけられた日本は恨めしげにプロイセンを見上げた。
「舐めるな!」
「いいじゃないですか。舐めるくらい」
減るもんじゃないし。そう言えば、ぴしりと鼻先を弾かれ、日本は眉を寄せた。
「減る!俺の精神が磨り減る!」
そう言いつつも日本の腰に回った腕をプロイセンは解く気は無いらしく、ぐしゃぐしゃと日本の黒髪を撫でる。月明かりがぼんやりと差し込む部屋は少し肌寒いが触れる肌は未だ火照りを残している。それが心地よいと日本は思う。ぴったりとくっついて半ば,微睡む。プロイセンの髪を梳く指が心地が良かった。その指が止まる。それに日本は視線を上げた。
「…庭から、甘い匂いがする」
髪に指を絡ませたまま、プロイセンが視線だけを庭へと向ける。障子の隔てられたその向こう。今日は雨戸を立てなかった。夜になって日常の喧騒が薄れると夜は一層、昼間省みられることの無いものの存在を鮮やかにする。日本は目を細めた。
「…この匂いは、梔子ですね。…そう言えば、そろそろ咲く季節でしたねぇ」
鮮やかな緑色の葉に咲く、純白。初夏の日差しにその白は良く映え、香りは心を和ませる。
「…くちなしか。そういや、昔、ダンスパーティーとかで、女性を誘うときに胸に飾ったその花を差し出したりしてたな」
懐かしむように目を細めたプロイセンに日本は眉を寄せた。
「…意中の女性に差し出したりしたんですか?」
「ん?何だ、いきなり?」
低くそう問う日本にプロイセンは目を見開いて、それからによりと頬を緩ませた。
「何だ、嫉妬してんのか?」
「ええ、そうです。悪いですか?」
例え、昔の、自分がプロイセンを知らぬ時代のことであっても、妬ましいと思う。恭しく差し出されたその花をどんな淑女が受け取り、プロイセンに微笑み、その手を取ったのか…思うだけで、胸が掻き毟られる。思いのほか、自分は嫉妬深い。
「…一度だけな。でも、小さいお嬢さんだぜ?」
「本当に?」
「本当。そのお嬢さんは上司の奥方になったけどな。歌が上手でよく聴かせてもらったぜ」
遠い目をするプロイセンにちりっと胸が焦げ付く。…いつからこんなに自分は嫉妬深くなったのだろう。昔は何にも執着しなかった。来るものは拒まず、去るものは追わなかった。…きっと、どうでも良かったのだろう。長いこと生き過ぎて、瞬く間程の短い時間を生きるひとに何かを望むのも求めるのも虚しいと知ってしまった。望まなければ裏切られない。想わなければ悲しまずに済む。…諦めることに慣れてしまったからだ。
「…彼女がいなければ、俺はここにはいなかっただろうな」
しみじみそう呟いて、プロイセンは微笑うと日本の頬を突いた。
「おい、爺、嫉妬は嬉しいけどな、俺が今好きなのはお前なんだから、そんな顔すんなよ」
嬉しいことを言ってくれる。でも、素直には喜べない。いつから、こんなに卑屈になってしまったのだろう。日本はプロイセンを睨んだ。
「そんな顔って、どんな顔ですか」
「泣きそうなぐしゃぐしゃな顔してるぞ。…ってか、もういない奴にまで嫉妬するなよ」
頬を撫でられ、日本はその手のひらに頬を摺り寄せた。
「…解ってます。でも、そのひとは私の知らないあなたを知っているのでしょう?…それが切ないのです」
切ない。無理なことだと解っていても、もっと、目の前のプロイセンの全てを知りたいと思う。どうすれば全てを知ることが出来るのか。体を重ねても、渇いていくばかりで欲求は満たされることがない。じっと赤を見つめれば、それにプロイセンはわしゃわしゃと日本の髪を撫でた。
「彼女は俺の今を知りようがない。これから先の俺を知っていくのはお前だろ?彼女とは本当に早く死に別れてしまったからな。思い出はこの先、増えない。でも、お前とはずっとこの先、増やしていけるだろ?それって、すげえことだと思わないか?」
視線を上げれば赤い目が細められる。日本は敵わないと思う。…いつも後ろ向きに思うことを、プロイセンはいつも前向きに捉えている。それが、プロイセンの良いところであり、自分が惹かれやまないところなのだ。

「…ずっと、一緒にいてくれますか?」
「お前が嫌だって言ってもな」

両頬を挟まれ、唇が落とされる。梔子の甘い香りが鼻腔を擽り、日本はプロイセンの背へと腕を回した。

 

 


おわり






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