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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
07 . May
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30 . October


  あなたは、夏と言ったら何を思い浮かべますか?

「夏と言ったら、忘れてはいけません。怪談に肝試しですよね」

ビーチバレーの時同様、イイ顔をした本田さんが蝋燭を片手にニッコリと笑った。



 (ハンバーガー君が)恐怖!(に打ち震える)絶叫、肝試し!!三日目 前編




 別荘に来て三日目、流石に俺はちょっと疲れてしまった。何せ、バイタリティ溢れる人達ばっか(本田さん含)なので、一般人である俺はついていくのがいっぱいいっぱいだ。俺のいっぱいいっぱいぷりに、配慮してくれたのか、本田さんが、
「今日は自由行動にしたいと思います。自由行動だからと言って、羽目を外しすぎないでくださいね」
と、言ってくれて、今日は各人自由行動に相成った。

 自由行動と言うことで、イタリア君とムキムキさんは近くの陶芸品を扱う工房に陶芸体験が出来ると言うので、二人とも興味津々wktkで出かけていった。イタリア君は芸術、ムキムキさんも職人のお国柄らしく、日本の伝統工芸に前々から関心があったのだそうな。髭さんと親分さんは先日のマダムからヘルプ要請が来たらしく、髭さんに親分さんには引っ張られ、海の家へ。うさぎさんとハンバーガー君は、

「海に来て、泳がなくてどうする!!」

と、今日も元気に海に突撃していった。

「さて、アーサーさん、私達は今晩の仕込みにかかりましょうか」
「おう!まかせとけ」

と、何やら暗黒微笑(厨ニ病的な)を湛えた本田さんと眉毛さんは出かけていった。眉毛さんの壊滅的な料理の腕前を知っているので、仕込みが夕食方面じゃないことを祈るばかりだ。本田さんはメシウマだが、昨日の鰯水の前科があるので油断が出来ない。…何か、嫌な予感がするのは気の所為だと思いたい。 
 そして、みんな出かけて行き、残ったのは俺とメイプルさんとクマ次郎さん。午前中は部屋の掃除や大量の洗濯物をふたりで片付けて、昼はメイプルさんがプーティン、フライドポテトにグレイビーソースと粒状のチーズを掛けたやつと、サーモンチャウダーを作ってくれた。これがめちゃくちゃ、美味い。そして三時のおやつにはホットケーキをカナダ特産の超美味しいメイプルシロップを掛けて頂いた。これもすげぇ、美味しかった。うさぎさんがホットケーキにハマるのも解る気がする。ホットケーキ本体もふわふわで美味しいのだが、メイプルシロップがその美味さを更に引き立てる感じ。掛け過ぎな感じに感じに掛けて、じゅわって生地にシロップが染み込んだのと溶けたバターの塩味が本当にたまらん感じで、俺はいつもは二枚が限度なのに、四枚も食べてしまった。その後はカナディアンタイムでまったりと時を過ごし、クマ次郎さんをもふらせてもらいつつ昼寝に興じた。…何か、久しぶりにまったりした気がする。メイプルさんってほわってしてて、本当に和むし、居心地のいいひとだ。



 夕食(恐れていた最終兵器は出てこなかった。…良かった)で、それぞれの今日一日過ごした話を訊いて、和気藹々と問題なく一日がまったりと過ぎようとしていた。…のだが、そうは問屋がおろさない。二十一時を過ぎて、蝋燭を片手にした本田さんが、冒頭の台詞を口にし、
「これから、皆様に日本の夏の夜を経験していただきたいと思います」
と、ニッコリ。部屋の隅と中央に蝋燭灯して、電気を消した、中央の蝋燭を囲むように座談を組んだ。
「HAHAHAHA、菊、何を始めるつもりなんだい?」
無邪気にバリバリとスナック菓子を頬張るハンバーガー君が本田さんに訊ねる。
「今から、怪談を語ります。百物語を本当はやりたかったのですけれど、時間がありませんしねぇ」
本田さんが答える。
「怪談って、アレか。ヨツヤカイダンとか、ボタンドウロウとか言うラクゴでやってたヤツだろ」
「そうですよ」
「ラクゴとは何だ?」
うさぎさんから通な言葉が出てくる。それに、ムキムキさんは首を傾げる。
「落語はウチの伝統的な話芸です。…ギルベルト君、良くご存知ですねぇ」
「大昔、お前が連れてってくれたじゃねぇか。サンユウテイエンチョウだったけ?…聞きに行った時は日本語覚えたてで、あんま良く理解できなかったんだけどよ、迫真迫る話ぷりは凄かったぜ」
「ああ、懐かしいですね。彼の落語が好きで、あの頃は忙しい合間を縫っては寄席に通ってましたからね」
本田さんが懐かしむような顔をする。うさぎさんの言うサンユウテイエンチョウは「三遊亭圓朝」。江戸、明治の頃の落語家で人情噺や怪談噺の巧い、名人の中でも別格だったひとだそうだ。…ってか、うさぎさんって何気に日本通だ。
「…で、そのカイダンの後に、キモダメシをするってこと?」
と、髭さんが訊ねる。それに本田さんは頷いた。
「ええ。…時間もありませんし、早速、始めましょうか」
本田さんは姿勢を正すと、語り始めた。

 本田さんが語り始めたのは、2chで怖い話のスレが上がると筆頭に上がってくる「コトリバコ」と言う怪談だ。「コトリバコ」と言う言葉に、うさぎさんが小鳥が詰まってんのか、格好いい!とアホなことを言っていたが、話が進むにつれ、段々と険しい顔になっていき、ハンバーガー君のスナック菓子を貪る口は完全に止まってしまっている。皆が難しい顔をして、本田さんの話に聞き入っていった。



 あらすじを簡単に説明する。概要だけなので、内容が気になるひとは目の前の箱で、ググってくれ。

 コトリバコと呼ばれる不気味な細工箱を発見した投稿者たちが、その箱の謂れを聞く……というもので、幽霊などの怪奇現象が描かれているわけではないが、山陰地方の部落に纏わる陰惨な過去や、箱の正体に関するおぞましい物語が語られており、読後の後味の悪さが尾を引く。


 ある地域で土地の権力者から虐げられ、迫害を受けていた村があった。村人たちは権力者に対抗する為にある寄木細工を作った。寄木細工の出来はとても美しかった。権力者へ村人から寄木細工が送られた。コトリバコのデザインは女子供が好むようなものだったという。

 「この箱はコトリバコと申します。」

村長は権力者へ箱を献上する時にそういった。権力者はコトリバコの美しさに魅了されて村長を褒め称えた。権力者の娘もコトリバコを気に入って愛でていた。しかし、その日から権力者の家族には不幸が続いた。まず、権力者の娘が急に苦しみだすようになり、血を吐きながら死んで行った。娘の内臓はズタズタであったという。権力者の妻や家にゆかりのある女子供が同じような症状で次々に死んで行った。しかし不思議な事に不幸に見舞われるのは、みな、コトリバコに接触したものばかりだった。
 権力者が途方に暮れていると村長がやってきた。権力者が村長に事情を話すと村長は驚くべき事を口にする。

「それはコトリバコの呪いでございます。我々への迫害と虐待をやめて箱を捨てれば呪いは解けるでしょう。」

権力者は村長の言う通りにするしかなかった。村長は自由になったが、村でのコトリバコ製造は辞めなかった。コトリバコは寄木細工に見えるが中には動物の雌の血で満たされたスープの中に間引きされたこどもの指や内臓などが入れられている呪いの箱であったのだ。
 しかし、ある日村に悲劇が襲う。コトリバコは厳重に管理されていたはずなのだが、ある日子供が勝手にコトリバコを持ち出し、血を吐きながら苦しみ抜いて死んでしまう。
 コトリバコの脅威が身内にも及ぶ事を知った村長はコトリバコを封印する事を決意するがコトリバコの呪いは長いもので140年もの間続くので、村人を何組かの班にわけ悪用されないように点在する神社に管理を依頼し、班同士のメンバーは決して他の班のコトリバコと接触しない掟を作った。もちろん女子供への接触は御法度となった。

 しかし、近年神社の倉を整理したときにコトリバコが出てきて、誰かが持って行ってしまったという。


「呪われたコトリバコの行方は誰も知らないままです。誰が何のために持ちだしたのか、定かではありません。…古い寄木細工の箱にはお気をつけ下さい。…もしかしたら、その箱は災いを齎す、コトリバコかもしれません」



本田さんは締めくくると、フッと蝋燭の火を消した。

「子を取る箱だから、コトリバコかよ。趣味悪ぃな」
うさぎさんは後味悪そうに顔を顰めたままだ。
「日本独特の風習の怖さを感じるな」
真面目な顔で評したのはムキムキさん。
「その箱の中に入る、子どもが増えると力が増すんだな?」
と、本田さんに尋ねたのは眉毛さんだ。
「ええ。だから、箱には1人のこども…イッポウ、2人のこども…ニホウ、3人のこども…サンポウ、4人のこども…シッポウ、5人のこども…ゴホウ、6人のこども…ロッポウ、7人のこども…チッポウ、8人のこども…ハッカイと呼び名が変わるそうです」
「八人以上はないんやな」
と、訊いたのは親分さん。それに、
「それ以上は呪縛の力が強すぎて、制御しきれなくなるとか…」
と、本田さんは答える。
「子どもが可哀想ですね」
「ヴェ~…、今は、そんな風習ないいんだよね?」
悲しそうな顔なのはメイプルさんとイタリア君。
「…私の知る限りでは、ですね…。さて、」
本田さんは安心させるように、僅かに微笑し、立ち上がると箱を持ってきた。その箱の中央には大きな穴が開いている。
「箱には数字の書いた紙が入っていますので、引いて、同じ数字の方とペアを組んでください」
言われた通りに、紙を皆で引いていく。

1 ムキムキさん・イタリア君
「良かったぁ。ルートと一緒なら怖くないよ」
「…あー、何か、不安だな」

2 ハンバーガー君・俺
「…だ、大丈夫なんだぞ!俺はヒーローなんだから!!」
「(顔色、悪いけど、大丈夫かな…)、はあ、頑張りましょうね」

3 うさぎさん・メイプルさん
「マシューとか。よろしくな!」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

4 親分さん・髭さん
「キモダメシって、ワクワクすんなぁ」
「出てくるのが、美女なら言うこと無いんだけどね」

と、ペアが決まった。

「…あれ? 菊とアーサーはやらねぇのか?」

ふたりがくじを引いていないことに気づいたうさぎさんが本田さんと眉毛さんに問う。それに、本田さんと眉毛さんは顔を合わせ、イイ顔をして、にっこりと笑った。

「私とアーサーさんは脅かし役です」

…朝、言ってた仕込みって、肝試しの仕込みだったのかと腑に落ちる。…ってか、何、ある意味最恐なふたりによる最恐な肝試しになりそうだ。



 そして、簡単な地図と懐中電灯を一本…。裏山にある祠から、箱を持って、本田さんが待つ入り口まで、戻ってくる肝試しが開始された。







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