「親父!」
バンッとドアが壊れかねない勢いで開く。ドアを開けたのはやはりプロイセンだった。プロイセンは何故かスカーフで頭を覆っていた。怪我でもしたのか、領土に何かあったのか?私がペンを止めるとそれを見計らったかのようにプロイセンは私の前にやってきた。
「そのスカーフは何だ?怪我でもしたのではあるまいな?」
「怪我なんて、してないぜ」
するっと顎の下で結ばれたスカーフが解かれる。隠された頭が露わになり、プロイセンの頭の上には三角の…これは、猫の耳か?
「俺、可愛い?」
心持ち首を傾けて、プロイセンはそう聞いてきた。…何を言ってるんだ。いい歳をして。…と、思ったが不覚にも可愛いと思ってしまった。格好がではなく、そう私に聞いてくるところがだ。
「…その猫の耳はどうしたのだ?」
「兄上がくれた」
「神聖ローマ殿が?」
「何か、昔、ベルギーの猫祭りに行ったときもらったんだって。…でさ、」
「何だ?」
「俺、可愛い?」
我が国はこんなアホの子ではなかった筈だが、…でもまあ、アホの子程可愛いと言うしな。そうでなくとも可愛い訳だが。
「顎を擽ってやろうか?」
持っていた羽ペンの羽先で喉を撫でてやると、プロイセンは擽ったそうに仰け反った。
「うー!そうじゃなくってさ!!」
フーッと威嚇するように、羽先を掴んだプロイセンが言う。もう少し、可愛くじゃれて見せてくれれば良いものを。
「解っておる。構って欲しいのであろう。これを片付けたら、休憩にするつもりだ。神聖ローマ殿も一緒に庭でお茶にしよう」
「兄上、呼んでくる!!」
猫と言うよりは犬だろうか?…しかし、猫耳をつけたまま部屋を出て行ってしまったが、まあ、良いか。私は残りの仕事をプロイセンの邪魔が入らぬうちに片付けることにした。
二度も聞きやがったアホの子や。たまにはアホの子兄さんもいいかなと。