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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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01 . June



教授な親父と学生なプーで現パロ。


…何か、こういうことする親父とかってどうよ!って、妄想したら凄く滾ったので。







拍手[21回]





余りにもきれいな色だったので、つい買ってしまった。私はそれを渡すような妻も恋人もいないいい歳をした中年なのだが、その色を見た瞬間、私によく懐いている彼の顔を思い出したのだ。彼は私の勤める大学の学生で哲学科の教授の、「気難しく」「偏屈」と評判の私のどこが気に入ったのか解らないが、私の部屋に居座るようになった。最初はその彼が邪魔で仕方がなかったし、相当、邪険にしてきたと思うのだが、彼がそれにめげることはなかった。慇懃無礼、口の利き方もなっていない二回りも歳が離れた生意気な子ども。私は子どもが大嫌いなのだが、いつの間にかすっかりと未だに子どもっぽさが抜けない彼が私の中に馴染んでしまい、今やその存在がなくてはならないものになってしまっていた。

「…ったく、こんなもの、どうするつもりなのかね。私は…」

「プレゼントですか?」と聞かれ、「そうだ」と言うしかなかった。コートのポケットに突っ込んだ包装されたそれを弄ぶ。

 それは女性の指先を彩るものだ。

男の私にそんなものは不要だ。あげる女性もいない。…まったく、私は自分にも理解し難い不可解な行動を取ってしまった。

 ウインドウに並べられた色。その中で一際、美しい赤。

その赤が目についた瞬間、私は店のドアを開いていたのだ。その赤は私を見つめてくる彼の赤だった。


「おかえり、遅かったな。教授、本買えたか?」

「ただいま。お陰さまで、目当ての本の初版を相場より安く買えた」
「だろ。あそこ、結構、穴場なんだぜ。探してる本あったら言えよ。探しといてやるよ」
「ああ。頼む」

大学校内の私の部屋。彼はパソコンを弄っていた。それを見やり、マフラーを取り、コートを壁に掛ける。その拍子に、コートのポケットから滑ったそれは彼の足元へと転がり落ちた。

「…何んだ?」

スニーカーの爪先に当たったそれを彼が拾い上げる。きれいに包装された小さなそれを見て、彼は訝しげに眉を寄せ、スンっと犬のように匂いを嗅いだ。
「…けしょうひん?」
それを包んだ包材からはやはり女性特有のあの場の甘やかな香りでもするのだろうか。私はその匂いがあまり好きではない。
「…誰に、やんの?」
低く声を落とした彼が、私を上目遣いに伺う。見上げる赤は明らかに下降線を辿る色をしていた。何やら、私は彼の機嫌を損ねるようなことをしたか言ったらしいが、思い当たる節もない。そもそも、彼の機嫌は気まぐれな秋の空よりも頻繁に目まぐるしく変わるのだ。
「…色がきれいなので、衝動買いしただけだ。返しなさい」
手のひらを差し出せば、全身で嫌だと彼はそっぽを向いた。
「アンタが衝動買いとかって、ぜってー、あり得ない。誰にやるんだよ?」
疑いの眼差しを向けてくる。「お前には関係ない」…喉からそんな言葉が出そうになって、思い留まる。前に一度、そう言ってしまったことがあって、そのとき彼は本当に悲しい顔をして、何も言わずに部屋を出ていってしまい、一ヶ月も部屋に顔を見せなかったのだ。その間のことを思い出すと、私の心は何故だかもやもやと自分でも理解できない何かに悩まされるのだ。
「…誰にも。欲しければ、お前にやろう」
そう言えば、彼は赤い目を見開いて私を見つめた。
「本当に?誰かにやるんじゃねぇのか?」
疑うように訊いてくる。
「衝動買いだと言っただろう。色がきれいだったんだ」
彼は手のひらのそれに視線を落とすと、視線を上げた。

「…あけてもいいか?」

子どもが大人の許しを乞うような視線に頷けば、彼はパソコンをずらして、テーブルの上にそれを置くと丁寧な手つきでリボンを解き、薄い包材を剥いでいく。その白い指先を私は見つめる。その指先のたった一箇所にだけ、あの赤を塗り付けたいと思う。

「…マニキュア?」

深紅を思わせる、薔薇の花びらのような赤。私を見つめる瞳。私をいつの間にか捕らえた、赤。

彼は首を傾ける。テーブルから私はそれを取り上げ、蓋を捻る。それを赤が追いかける。外は日が暮れて、真っ赤な夕日が部屋と私と彼を照らした。

「左手を出しなさい。ギルベルト」

その言葉に一瞬、彼は逡巡し、シャツで一度、手を拭い、左手を私に差し出してきた。私はその手を取る。彼の指は細く、爪は短く切られ、清潔な手をしていた。

「教授?」

薄く熟する前の桃の実のような爪先。彼の眉が訝しげに寄せられるも、警戒はしていない。私は赤く濡れた小さな刷毛をその爪の上に滑らせた。

 

 

おわり







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