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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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04 . June



教授な親父と学生な普。ギル視点。

深紅の続き。…次はいちょいちょさせるぜ。いちょいちょの展開の為にえらい長い前置き。
大王の親父とプーは純粋に親子であって欲しいので、パロでは、恥ずかしいくらいにラブラブに持ってゆきたいです。









拍手[30回]



 


赤い刷毛が爪の上を撫でていくのをただ、ぽかんと見ていた。小さな爪先ひとつだけ、きれいに塗られて、マニキュアの蓋を閉めた教授を見上げる。教授の表情は平素と何一つ変わらず、ただ、爪先を見つめる薄い色をした青い瞳だけがいつもより色が深いような気がする。その青がそっと逸らされ、テーブルにマニキュアを戻すと教授は何事もなかったように自分の席に座り、学生のレポートを手に取ると読み始めた。

(…俺はどんな顔をすりゃいいんだ?)

未だに心臓が煩く、バクバク言ってる。顔だってきっと赤い。…だって、仕方ないだろう。好きな人に初めて触られたんだ。狼狽するし、恥ずかしいしどうすりゃいいのか解らない。赤く塗られた爪の先から呼吸困難になっていきそうだ。…ちらりと視線を上げて、教授を伺うが教授はいつもと変わらない。俺だけがぐるぐるして、馬鹿みたいだ。

(…赤)

俺は赤い色が好きじゃない。それはこの色自体が、俺にとってのコンプレックスだからだ。俺は生まれつきのアルビノで瞳は兎のように赤く、皮膚の色は病的なまでに白い。陽光に当たれば直ぐに皮膚が腫れ上がる。夏場でも日差しを遮る長袖のパーカーは必需品だ。昔は視力も弱くて、ろくに物も見えなくかった。この容姿の所為で散々、揶揄われ虐められてきた。高校に上がるまではいつも俺はこの容姿の所為で除け者にされ、独りだった。…別にずっと独りでも良かった。家に帰れば、俺には大好きな家族がいたし、そこでは自分の容姿を気にする必要なんてなかったから。でも、高校に入って、初めて、俺のことを怖がらない、気持ち悪がったりしない気の置けない友人が出来て、そいつらとつるむようになって、自分の容姿のことを少しは忘れられるようになった。それでも、やっぱり俺の姿は異端らしい。その二人の友人を覗いては相変わらず誰も、学校の先生ですら、腫れ物扱いで俺とまともに目を合わせてくれたことすらない。でも、教授だけは違った俺の目をちゃんと見て、話をしてくれたし、訊いてくれた。教授だけは俺を他の学生と同じように扱ってくれた。それだけのことが凄く嬉しくて、気がつけば、教授の後を付いて回っていた。そして、いつの間にか、教授の中に俺の居場所を見出していた。面倒に思われてるのも、鬱陶しいと思われているのも解っていたけれど、どうしてもそばにいたいと思ってしまった。

「それってさ、恋なんじゃないの?」

教授のところに入り浸って、すっかり付き合いが悪くなった俺に料理人の修行に励んでいる高校時代からの友人のフランシスが言った。
「何、言ってんだよ。相手はスゲー年上だぜ。しかも、男だぞ?」
「何、言ってんの。好きになるのに、年も性別も関係ないでしょ」
「で、でもさ…」

「一緒にいてさ、どう思うの?」

そう訊かれて、俺は何も言えなくて黙り込んでしまった訳だが解ってしまった。この「気難しく」「偏屈」で「人嫌い」な癖に傍目には人当たり良く振舞っているこの男が、俺は好きなのだ。好きだけれど、それをそうと告げる勇気はない。…この関係が壊れてしまうのが一番、怖い。

「………」

左手の薬指。その指に何か、意味はあるのだろうか?…期待してもいいんだろうか?この指に意味があることくらい、俺がいくら馬鹿だからって知らないはずないだろ。

「…帰る」

ああ、ぐるぐるする。解ってんだよ。無駄な期待だって。…教授が俺みたいな子どもを相手になんかするハズねぇ。ただの気まぐれでこんなことをしただけだって。

「…気を付けて帰りなさい。…明日、来るときにショップでいつものコーヒーを買ってきてくれると助かる」
「…解った」
「…ギルベルト、」
「何だよ?」
「…いや、何でもない」

逸らされ、再びレポートに落ちてしまった青を見つめる。

「何だよ。言いかけといてやめるな」

そう言えば、教授はレポートを読むのを止め、青い目をこちらに向けた。…弟の瞳の色ともフランシスの瞳の色とも違う、日が落ちる前の群青の闇が全てを蔽う前の空の色。…格子の嵌った窓の向こう側と同じ色している。

「…何かを、望むのは、得意ではないのだ」
「?」
「…まったく。老いらくの恋もいいところだ」

小さく呟かれた言葉に息の根が止まる。赤く塗られた薬指の意味を、俺は曲解してもいいのだろうか?…そんな、都合のいい話があってたまるかよ。

「…お前が嫌ではなかったら、私の手を」

立ち上がり、そっと差し出された右手。その手を見つめる。

「…俺、本気にするぞ?」
「…私が冗談でこんなことをするように見えるかね?」

赤く塗られた指先を差し出す。ぐっと強く、その手を掴まれ、抱きしめられる。鼻腔を擽る教授のコロンの匂いに涙が出そうになる。


一度に望んでいたことが全て叶って、俺は嬉しくて息が出来なくなった。

 

 

おわり






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