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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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23 . June



遭難、第一弾は親分。

しかも、アルマダ海賊親分と公国普だよ(笑)。…コメントで頂いた展開を裏切り申し訳。
ブイブイ言わせてた頃の親分と公国成り立ての初々しい普に滾ったんだ。
ちなみに親分20~22歳、普は14~15歳な設定です。犯罪臭がプンプンするね☆


6/25 加筆修正しました。




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「…熱い」

ジリジリと頬を焼く太陽に目を開ける。体が重い上に湿っている。状況把握が出来ずに何度か瞬いて、プロイセンは体を起こした。
「…どこだ?ここ?」
頬がじゃりじゃりするのを叩いて、辺りを見回す。見たこともない、青い海、白い砂浜、緑の濃い植物。ざざんと打ち寄せる波の音と遠くで聴こえる鳥の鳴き声だけ。波打ち際には板きれと化した船の残骸物が打ち上げられている。

「…船、沈没したんだったな」

航海中、突然の嵐に船は巻き込まれ、あっという間に高波に飲み込まれ、海に放り出された。波に飲まれた瞬間に気を失ったかそこからの記憶がない。幸いなことに死ぬこともなく、良く解らない場所に自分は流れ着いたらしい。状況把握が終わり、プロイセンは息を吐く。
「…取り敢えず、誰か他にも漂着した奴がいねぇか、探してみるか」
海水を吸って重くなったケープを絞る。だばだばと水が滴る。ずぶずぶになったブーツを脱ぎ、そのブーツとケープを抱え、プロイセンは波打ち際を歩き始めた。

 

 

「…誰も、いなかったな」

島は小さく、あっという間に自分が漂着した場所まで戻って来てしまった。それから島の奥を探索するも、中は密林。人の気配はない。日が暮れ、島の奥から聞こえてくる得体に知れない獣の啼く声と胸を徐々に覆っていく不安で夜もろくに眠れていない。日がな一日、海を眺め、船が見えないかと視線を凝らすのにも疲れた。この島に漂着し、三日。解ったことはこの島にいるのは自分ひとりだと言うこと。取り敢えず水は確保できたが、食料は微妙で、食えるのか解らないものばかりだ。
(…あー、どうすりゃいいんだ?こんなときはよ…)
長いこと生きてはいるが無人島に辿り付いたことなどない。これが陸ならば、星と太陽を頼りに歩いていけば必ずどこかに辿り付くことが出来るが、見渡す限り海。たどり着く場所などどこにもない。プロイセンは眉間に皺を寄せた。いつ助けが来るかもこれでは解らないし、助けが来るまでどう凌げばいいのかも解らない。途方に暮れて、海の彼方を見つめるも船が通りかかる気配もない。
(…暫くは飲まず食わずでも、俺は大丈夫だけどよ…。あー、何でこーなるんだよ)
ケーニヒスベルクの港から船に乗り、海を経由してイタリアに渡航する予定だった。バチカンに呼ばれたのだ。それが、まさかこんな展開になるとは。プロイセンは頭を掻き毟った。
(俺様の日頃の行いが悪かったってのかよ!…んな、コトねぇよな?)
公国として認められ、何とか頑張って存続していこうと言う時期だった。…それが、何でこうなるんだよ。…プロイセンは溜息を吐く。これからどうすればいいのか、助けは来るのか、不安で頭がいっぱいでいつもなら当に気づいても可笑しくない気配に気づかず、突然、喉もとに突きつけられたナイフにプロイセンは目を見開き固まった。

「俺の秘密の場所を嗅ぎ付けてくるとは、ええ鼻しとるやないか。お前、どこのもんや?」

初めて耳にした人の声に、プロイセンは顔を上げる。日に焼けた肌、褐色の髪、緑色の目の青年が剣呑な目つきでプロイセンを睨む。プロイセンは赤い目を瞬かせた。
「……なんや、口も聞けんのか?」
「…ひとがいたのか…?」
遭難して三日ぶりに聞く人の声に思わず、安堵からぽろりと涙が零れる。それに青年は慌てた。
「な、何で泣くん?訳解らん奴やな、ってか、お前、海賊やないんか?」
「…かいぞく?」
初めて聞く単語にプロイセンは首を傾ける。内陸での生活が長く、海とは眺めるだけのものにしかすぎないプロイセンに海賊が何なのか解るはずもない。
「海賊ちゃうんか?」
「ちげーよ。…イタリアに向かってる途中、船が嵐に遭って、沈没したんだ…気がついたら、ここに流れついてて…」
「遭難?…あー、そういや、ウチの船で漂流しとる奴、何人か助けて、イタリアに行く商船に乗せたったわ。なんや、マリアがおらへんって、大騒ぎしとったな」
青年は突きつけていたナイフを鞘にしまうと、プロイセンの濡れた目じりを拭った。
「何人かは無事だったのか。良かった。…マリアは俺だ」
「へ?…マリアって女の子の名前やろ。お前、どう見たって男やん」
「…マリアが俺の名前なんだよ。新しい名前になったけど、古参の連中は俺のことをそう呼ぶんだ」
苦虫踏み潰したような顔をして、プロイセンは涙を袖でごしごし拭うとそう言い、顔を上げた。
「…お前も俺と同じで、嵐遭ってここに漂着したのか?」
プロイセンは青年を見つめた。
「俺?…違うよ。ここ、俺の秘密の場所やねん。ここからは陰になって見えへんけど、東側に船つけてあるよ」
青年の言葉にプロイセンは赤を瞬いた。
「…マジで?」
その言葉に青年が頷く。
「よっしゃー!!神様はやっぱ俺様を見捨てた訳じゃなかったんだな!」
プロイセンの口から歓喜の言葉が漏れた。
(…なんや、けったいなの拾ったな。口は悪そうやけど、なかなかの別嬪さんや。フランスに高う売りつけたろか)
そう思いながら、青年はプロイセンを見やる。プロイセンは首から下げた十字架を取り出すと膝を着き神に祈った。

「生くる甲斐も無しと独り、定めたりし者を死をも賭して救いませる、深き神の愛よ」

ラテン語で紡がれた言葉と深く澄んだ声に青年は暫し見蕩れる。プロイセンは滔々と歌うように神に謝意を捧げ十字を切ると、青年を振り返った。
「俺をあんたの船に乗せてくれ」
「どこのもんか解らんのを俺の船には乗せられへん」
ラテン語を喋り、聖書を諳んじるなど教養がなくては出来ない。身に着けている十字が刺繍されたケープもそのへんの庶民が身に着けているような安い麻や木綿ではない。首から吊るしたロザリオは銀だろう。青年は改めてプロイセンを見やった。
(…こんなけったいな目した奴、初めて見るわ)
淡い蜂蜜色をした金の髪に赤のコランダム。肌は透き通るように白い。南方にはまずいない。北方か、それともまだ見たことのない大陸から渡って来た人間だろうか。陽に透けて、色が変化していく瞳は今まで手にしてきた宝石の中にもないほどに美しいく輝いている。
「俺は、プロイセン公国の者だ」
「…プロイセン?聞いたことあれへんなぁ。身分を証明するもんがあるんか?」
「…ねぇよ。全部、流されちまったもん。バチカンに行けば身分を証明してくれる知り合いがいる。…頼む!俺を船に乗せてくれ!」
じっと赤に見つめられ、迷う。得体の知れない者を船になど乗せたくはないが、ここで見捨ててしまうのも気が引けた。まだ子どもではないか。嵐に遭い、島に流れ着き、不安な日を数日過ごしたのだろう。縋ってくるような潤んだ赤を振り切れるほど青年は鬼畜ではない。青年は溜息を吐いた。
「…ま、遭難したんやったらそうやろな。バチカンに知り合いって、お前、教会の関係者か?」
「関係者って言うか、以前、下で仕事してたことがあるんだよ。今回は大掛かりなミサをするって言うんで、イタリアの兄弟と歌うことになって呼ばれたんだ。陸から行くと時間かかるし、船で行くことになったんだけどよ…。あー、こんなことなら陸から行けば良かったぜ」
溜息を吐いて項垂れたプロイセンに青年は眉を寄せた。
「…イタリアの兄弟と歌うことになって?」
そう言えば、今回の出航間際、ロマーノが、

『おい、スペイン、おれ、バチカンに弟と一緒に呼ばれたんで、暫く家に帰るぜ』

と、言ってはいなかったか…。

「…もしかして、お前、国か?」

特異な容姿はどう見てもやはり人ではない。青年は改めて、プロイセンを見やる。プロイセンはそれにこくりと頷いた。
「そーだけど。俺が、プロイセン公国だ」
それに青年は緑色の瞳を瞬かせた。
「…はー。まさか、こんなとこで国に会うなんて思うてもみんかったわ」
この南の小さな名前もない島で国の化身に会うなど誰が思うものか。青年はまじまじとプロイセンを見つめた。
「?…って、お前も国なのか?」
「そや。俺はスペインや」
青年は名乗る。それにプロイセンは目を見開いた。
「え?スペインって言ったら、超大国じゃん!なんで、そんな国がこんなとこいんだよ!?」
スペインと言えば七つの海を支配し、率いる艦隊は無敵の名を欲しいままにしている国ではないか。プロイセンはぎょっとした顔で青年を見やる。
「え、俺、超大国やったん?知らんかったわー。最近、海にばっかおるもんやから」
スペインの言葉にプロイセンは呆けたように口を開けた。
(…超大国だって言うから、すげー強そうな奴想像したたんだけど…なんか、イメージ違ぇ…)
見るからに人懐っこく、頼りがいがありそうに見える年若い兄ちゃんにしかみえない。プロイセンは夢でも見ているのかと、頬を抓った。それにスペインは可笑しそうにカラカラと笑った。
「お前、面白い奴やなぁ。ま、船に乗せたるわ。俺、丁度、国に帰るとこやったんよ」
「本当か?」
「ああ、本当や」
スペインはそう言い、立ち上がらせるべくプロイセンに手を差し伸べる。
「ありがとう。恩に…」
それに手を差し出し、帰れると解った安堵から、へらっと笑ったプロイセンの表情が瞬時にして険しく、赤が殺気を帯びる。その表情に見入るも束の間、スペインの腰から剣が引き抜かれる。それにハッとするも、殺気の強さに反応が遅れる。手首をぐっと引かれ、スペインは地に伏せた。

「ぐあっ!」

呻き声と一緒に鮮血の迸る音。白い頬に返り血を付着させ、プロイセンはスペインを背に庇い、片手で剣を構えた。

「な?!」

斬られると思ったが衝撃はいつまで経っても来ない。頬にざらりとくっついた砂を払い、振り返れば、そこには風体の怪しい武器を構えた男達。スペインは状況を把握すると眉を寄せた。男達の中央、眼帯に義足の男に見覚えがあった。
「…なんや、懲りずにまたちょっかいかけにきたんかい?」
砂を払って立ち上がる。どうやら、自分の背後に迫っていた男に気づき、プロイセンは咄嗟に自分の剣を抜いたのだろう。一瞬でも、子ども相手に油断し、裏切られたと思い、敵の気配に気づくことすら出来なかった自分をスペインは自嘲し、恥じた。
「ここにてめぇがお宝隠してることはお見通しなんだよ。案内してもらおうか、アルマダさんよ!」
声高に男が告げる。じりっと迫る手下の男達にスペインはフンっと鼻を鳴らした。
「ハン、ヤなこった!」
海賊とスペインの応酬に訳が解らず、プロイセンは眉を顰め、背後のスペインに視線だけをくれた。
「…えーっと、こいつ等、お前の敵?…ってか、俺、咄嗟に斬っちまったけど…」
プロイセンの緊張感に欠けた言葉とは裏腹に白い頬に斜めに走った血飛沫の跡が目に鮮やかで、それを目端に捉え、スペインはナイフを引き抜き、構えた。
「敵や。しつこく付きまとわれて困ってねん。討伐命令も出とる海賊の首領や」
「じゃあ、遠慮はいらねぇな!」
プロイセンはニヤリと笑うと剣を構える。襲い掛かってきた海賊の腕を払い、胴を薙ぐ。飛び散る血に怯むこともなく槍を持ち突進してきた海賊を躱し、一撃にうちに仕留めるのを見やり、スペインはほうっと息を吐いた。
「たいしたもんやな」
そう言いつつ、手にしたナイフでスペインは斧を振りかざし迫ってきた海賊の喉を裂いた。
「伊達に戦場で暴れてねぇよ!」
見事な手際で襲いかかって来る海賊を同時に相手にしながら、怯むこともなく一閃のうちに倒していくプロイセンにスペインも負けじと奮闘する。あっという間に屍の山が築かれ、波打ち際は赤に染まった。

「…さて、後はアンタ一人みたいやな?」

剣呑な視線を差し向ければ男は怯んだかのように島の奥へと逃げていく。それを冷めた目でスペインは見送った。
「えーっと、追いかけなくていいのか?」
追いかけようかどうしようか迷って、プロイセンはスペインを振り返る。スペインはナイフに付いた血を払うと鞘へと収めた。
「別に、ええやろ。奴らの乗ってきた船はもう俺んとこの者が片付けてるやろしな」
「…そっか」
プロイセンは頷くと、屍と化した海賊の衣服で剣に付着した血をきれいに拭い、柄をスペインへと向けた。
「悪ぃな。思ってたより間近に迫ってたんで、声かけられなかった」
「ええよ。助かったわ。プロイセンは俺の命の恩人やな。ありがとな」
柄を掴み、鞘に収めるとスペインはプロイセンの頬に手を伸ばした。
「…ん?」
その手にきょとんとした顔をするプロイセンにスペインは笑う。
「返り血ついとる。別嬪さんが台無しや」
「別嬪は余計だけど、ありが…にぎゃ!!!」
ぐいっと親指で頬を撫でられ、近づいてきた顔に反応が遅れる。頬をぺろりと舐められ、プロイセンは顔を真っ赤にして腕を突っ張る。それにスペインはにっこりと笑んだ。
「なんや、意外とウブなんやな」
「な、お前がいきなり変なことするからだろ!!」
「ちょっと、ほっぺた舐めただけやん」
「舐めるな!!」
舐められた頬を押さえ、睨むプロイセンが可愛い。見たところ、ひとで言えば十四、五歳、国としての成り立ちも浅そうだ。この異端の色をした子どもを周囲の人間は大事に、人の子と同じように特別扱いすることなく接してきたのだろう。口は悪いが、擦れてはいない。「ありがとう」を口に出来る素直さもある。接する人間に愛されて育ってきた国の子どもだ。スペインはプロイセンが可愛く思えて、手を伸ばす。それに何をされるのか警戒したような顔をして、プロイセンは身を硬くしたが逃げようとはしない。スペインはわしゃわしゃとプロイセンの髪を撫でた。
「お、意外に触り心地ええなぁ」
「むう。子どもあつかいすんな」
プロイセンは口を尖らせたもののされるがままになる。嫌な気はしない。この三日間、本当に寂しく心細かった。その所為か人肌が少し恋しい。短い頭髪を梳かれ目を細めるとスペインは小さく笑った。
「…ほんま、可愛ええな」
「可愛いって言うな!」
文句を言いつつも、肌に触れる手のひらにほっとしたような顔で目を閉じたプロイセンをスペインは思い切って抱き寄せる。プロイセンの体の線は国としての基盤が磐石ではないのか、華奢で細い。この華奢な体で荒くれ者の海賊を相手に引けを取ることもなく剣を振るったプロイセンの姿を思い出し、ぞくりと背筋が震える。
(…欲しいなあ…)
過ぎった征服欲。指先で頬を撫でる。先ほどの些細な悪戯に過剰反応して見せたプロイセンは暴れるかと思ったが、一瞬、体を強張らせただけで腕の中でじっとしている。
「…スペイン?」
腕の中、不安げに顔を上げたプロイセンの赤と目が合う。それに、スペインは首を振った。
(…あかん。子どもに手出したら、あかんやろ!バチカンに知られたら処刑されるわ!)
顔見知りの厳格な爺様の顔を思い出し、スペインはべりっとプロイセンを自分から剥がした。
「怖くて、寂しかったやろ。親分がちゃんとバチカンまで送ったるからな!」
「おう。ありがとうな!」
にこっと信頼し、安心しきった顔をして笑い返したプロイセンに胸がちくりと痛み、きゅんとなる。
(…あー、ウチのロマーノもこれくらい素直やったら、可愛ええのにな)
スペインは心の中、溜息を吐いた。

 

 


 

 イタリアまで、プロイセンを送る航海は思いのほか、楽しいものとなった。

 プロイセンの容姿の異端さに、初めはいい顔をせず、腫れ物扱いな船員達だったが、プロイセンはそれに慣れているのか飄々としていてた。何かを自分が言っても無駄だろう。スペインはプロイセンに居心地の悪い思いをさせているのではないかと思い、ひとりでいるプロイセンに声をかけた。
「悪いなあ」
「別に。慣れてるし」
事も無げにプロイセンはそう言い、海を眺め、美しい声で神へ捧げる歌を歌う。人を寄せ付け難い見かけに寄らず人懐っこく口も達者なプロイセンは気が付くと船員達に早々に馴染んで、甲板の上で船員たちと談笑したり、賭け事に加わったりと意気投合したようだ。そして、航海中、二度程、海賊に襲われたが武勲を一番に上げたのはプロイセンだった。それで一気に船員たちの信頼と尊敬をプロイセンは得た。

「お前、俺の子分になれへん?」

航海中、何度、そう口説いたことか解らない。プロイセンの返事はいつもつれないものだった。

「お前の子分になったら、馬に乗れねぇじゃん。海も悪くはないけどよ。俺、馬に乗るほうが好き」

子どもらしい理由で素っ気無くそう返されては諦めるしかない。無理矢理、自分のものにしても良かったのだが、年端のいかない子どもに手を出すのはやはり気が引けた。命の恩人でもある相手にそうそう無体も働けない。…スペインが悶々と自分の中の欲を抑えて理性と戦ううちに、船はローマ近郊の港に到着した。

「ありがとな。送ってくれて」

岸壁に船が付けられ、板が渡される。甲板の上、プロイセンは視線の高いスペインを見上げた。
「かまへんよ。俺も楽しかったわ。…なあ、」
諦めなければと思うが、この自分を見つめる赤が欲しいと思う。スペインはプロイセンを見つめた。
「何だよ?」
「ほんまに子分にならへん?」
スペインの言葉にプロイセンは首を振った。
「俺、ちゃんとした国になるのが夢なんだ。だから、お前の子分にはなれねぇ」
きっぱりとそう言われ、スペインは息を吐いた。
「…そっか。親分、フラれてもうたなぁ」
それにプロイセンは困った顔をして、一瞬、眉を寄せると子どもらしい邪気のない笑みを浮かべた。
「いつか、俺が国になれたら、友達になろうぜ!」
そう言って笑ったプロイセンにスペインは苦笑を返した。
「それ、いつになるんやろか?」
「…むう」
口を尖らせたプロイセンの頬をスペインは突く。
「ま、楽しみにしとるわ」
「お前より、絶対、超大国になってやるからな!!」
拗ねたようにそう言ったプロイセンは背伸びをすると、スペインの首に巻かれたスカーフをぐいっと引き寄せた。

「またな、スペイン!」

頬に柔らかな唇の感触。それに、スペインは目を見開く。スペインの驚いた顔に悪戯っぽく笑ったプロイセン。翻る黒いケープ。スペインの伸ばした手のひらは空を掴む。そのまま、振り返ることなく港に迎えに来ていた同郷の者の待つ所へ、プロイセンが駆け出していくのをスペインは見送る。

「…あかん。本気で惚れてしまいそうや…」

頬を押さえ、空を見上げたスペインは呟く。その呟きは海風に掻き消され、耳まで赤くなったスペインの頬をその風はやさしく撫でるのだった。

 

 


おわり

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