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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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01 . January

史実寄り。 

WW2の終戦後のロシアとプロイセン。

露→普で、フリ←普。独→普。
殺伐としているわけでもなく、ほのぼのでもない。

プロイセンが望んでいたものは。








拍手[29回]





傷だらけの死に体で。

  それでも、彼は一切そんな素振りは見せずに、皆が戦争で疲弊した顔をし、背を丸めていたあの場でひとり背筋を伸ばし、前を向いて立っていた。

死にも等しい、母体解体宣言を「そうか」と一言で、彼は片付け…。

彼は足掻くときにはとことん悪足掻きして生き残ってきた癖に、その言葉は自棄に潔いものだった。その言葉を訊いたドイツ君の方が青ざめてた。そして、ドイツ君の処遇を巡り、僕とアメリカ君で揉めて。それを黙って訊いていた彼が言った。

「…東には俺がなる。…ロシア、俺じゃ駄目か?」

ずっと僕が願ってやまなかったことが叶った瞬間だった。そして、間一髪入れずに嫌だ!と叫んだドイツ君の悲壮な顔を見て、僕は自業自得だと思った。

だって、彼を失うことになったのは君の所為でしょう?
 
 
 
「…はー。寒い」
「仕方ないよ。今は冬だし」

積もった雪の上を軍靴が踏みしめる。その度に、ぎゅっぎゅっと軋むような音がする。鼻を赤くしたプロイセンは口元までマフラーを引っ張り、ロシアを見やった。
「…あんときも、寒かったけどよ。…何か、すげー堪える」
「あのとき?」
「逃げたウチの上司を追いかけてフランスの上司が来たとき」
「…あー。そんなこともあったねぇ」
ロシアはぼんやりと思い出し、目の前のプロイセンを見やった。
「…フランスに負けて、ベルリン占領されて、あんときは流石に死ぬって思ったんだけどな。…まあ、何か、生き残ったって言うか」
「うん。プロイセンが生きててくれて嬉しいよ」
「なんで?」
「だって、僕、プロイセン君のこと好きだもん」
君が僕を嫌いなのは知ってるけれど、僕が君を好きなのは僕の自由だ。…ロシアはずっと、プロイセンが好きだった。憧れていたと言ってもいい。
「…どこが?」
プロイセンはこちらに来てから一際、赤くなった目でロシアを見やる。ロシアはにっこりと笑った。
「痛いのに痛いって言わないところ。君は強いよね」
「…当たり前だろ。俺を誰だと思ってんだ!」
ケセセと笑って、プロイセンは小さく息を吐き、肩を抑えた。
「…プロイセン君?」
「…ああ、寒さが傷に染みる。…お前んとこ、やっぱ嫌いだ。…何で、こんな寒いとこどうして欲しがるのか俺には全然解らねぇよ。…何で、俺がやったもんで満足出来なかったんだよ。…まだ、足りなかったのかよ…ドイツ…」
呟きは雪の降りしきる音に掻き消されて萎んでゆく。ロシアは黙り込んでしまったプロイセンを見やる。
「…ねぇ、プロイセン君、やっぱり僕のこと嫌い?」
長い間、対立したり、条約・同盟を結んだりを繰り返して来た。…対立することはあったけれど、実際、敵対して正面向いてロシアはプロイセンと戦ったことは一度もない。この戦争でプロイセンは最後までロシアと開戦することに反対していたと言う。…知っていたのだ。ロシアと戦うことはこの寒さと戦うことになると。その結果が何を齎すのか。…モスクワに上司と共に訪れても、プロイセンはこの地から逃げるように直ぐに帰っていた。外交上はにこやかに振舞うプロイセンは本当は自分を好いていない、寧ろ嫌われているのは解っていた。今も嫌われたままだろう。それでも、ロシアは聞いてみる。最愛と言ってもいい、泣き叫ぶ弟と別れの挨拶もさせぬまま引き離すように、北へと連れて来たのだ。ドイツと二人きりにさせて、プロイセンが行かないと心変わりしてしまうのが怖かった。そして、ドイツを瀕死にまで追い詰めたのは自分なのだ。だから、恨んでいるだろうと、尚更、嫌われただろうと思った。
「お前の国は寒いから嫌いだが、お前自身のことはそんなに嫌いじゃねぇよ」
てっきり嫌いだと即答されるかと思ったが、プロイセンはそうは言わなかった。
「…ホント?」
ロシアはプロイセンを見つめた。
「嘘、言ったって仕方ねぇだろ。ってか、お前ん家、マジ寒い。骨まで凍りそうだぜ。…ああ、イタリアちゃん家に行きてぇなぁ」
夢見るような眼差しで南の方を見つめるプロイセンにロシアもひまわり畑の夢を見る。暖かいところのない北の地に暮らす自分に南の地は憧れだ。
「イタリア君家って温かいの?」
「お前のとこに比べたら、常春だな」
「常春か。…いいなぁ。欲しいなぁ」
「…いいなぁ、欲しいなぁじゃなくてさ、お前、それじゃ侵略だろ?イタリアちゃんと友達になりゃいいじゃん。そうしたら、遊びに行けるだろ」
「…そっか。イタリア君、僕と友達になってくれるかな?」
ロシアは目を開く。プロイセンはいつもロシアに新鮮な驚きをくれる。そして、プロイセンの言葉に丸くなったなと思う。昔の彼ならば、こうは言わなかっただろう。ドイツを得て、プロイセンはやっぱり変わったのだ。
「お前が、コルッとか言わなきゃなってくれるんじゃねぇの?」
そしてプロイセンは変わらない。今はロシアの支配下にあるにも関わらず、支配者である自分をラトビアやリトアニアのように怖がらない。昔と変わらず、ぽんぽんと遠慮も怯えもなしに返って来る言葉がロシアには酷く心地よかった。

「…ねえ、プロイセン君」

きゅきゅと雪を踏みしめる足音。プロイセンの首に巻かれた色あせたマフラーが風に靡くのをロシアは目で追った。
「…どうして、僕のところに来てくれたの?」
プロイセンがロシアのところに来たのは、プロイセンの意思だ。でも、ロシアはずっと不思議に思っていた。あのまま、西側へ留まってしまっても良かったのだ。彼は解体宣言が出される前より、当に国ではなくなっていた。
「…物理的な、会いたくても会えないそんな距離が欲しかったから」
「距離?」
「俺とドイツは離れた方がいいんじゃねぇかと思って」
「何で?ドイツ君は君が必要みたいだったけど?」
「それじゃ、駄目なんだ。あいつは独り立ちして、一人前の国になったんだ。俺は消えなきゃならなかった。…普通、国の隆盛なんてそういうもんだろ?」
「…うん。そうだね」
そうやって国は消えていき、その後に生まれた国が後を継いでいくのだ。
「…なのに、俺は消えなかった。それはドイツが俺に大半、依存しているからだ。あいつは俺がいなきゃ何にも出来ないって思ってる。…それが頼られてるみたいで心地よかったけど、それじゃ、あいつの為にならねぇから」
「…だから、僕のところに来たの?…プロイセン君はホントにドイツ君が好きなんだね」
ロシアの言葉にプロイセンは目を眇めた。
「好き、か。…好きとかそんなんじゃねぇよ。あいつは俺が望んだから生まれた存在だ。俺のすべてを与えて、俺のすべてを継ぐ……。だから、俺はドイツに血肉を分け与えることが出来たんだ」
愛情ではないのだと言い、プロイセンは視線を伏せた。
「俺の血肉を受け継いだドイツが国になり、俺はその栄光と誇りのうちに消える……。そういう最期を思ってた。でもどこで、狂っちまったんだろ。…上手く行ってたはずなのにな」
まるで、ドイツの存在が自分が消える為に存在するかのようにプロイセンは言葉を紡ぐ。ロシアは訝しげに眉を寄せた。
「…プロイセン君、消えたかったの?」
「…ああ。消えたかった。この地上からいなくなりたかった。…あのときから、ずっと。…でも、約束を果たさないまま行けなかったから…」
…約束がなんなのか、ロシアには解ってしまった。いや、本当は知っていた。プロイセンが死に急ぐかのように戦い、得たもの全てをドイツに与え、投げ出していくのを。…プロイセンはずっと、愛した今は亡き人の面影想い、ぬくもり与えてくれた手をそれだけを望んでいたのだろう。彼の大王の御許へ、ずっと行きたかったのだ。

そして、ドイツもプロイセンが真に何を望んでいたのか知ってしまったのだろう。

だから、彼を繋ぎ止める為に呪いをかけた。…それが、こんなことになるなんて予想もしていなかっただろう。
「…でも、君は今、ここにいるね」
「…そうだな。解体宣告を訊いても、まだ、親父のところには行けないと思った。あのまま、ドイツを放っておけなかったし」

ドイツはボロボロだった。ベルリンで捕虜となった彼は息も絶え絶えで。苛烈を極めた東部最前線の指揮を執り、同じく捕虜の身の上でドイツ以上にボロボロのプロイセンがそれでもドイツが負った瑕疵の半分を引き受け、ドイツは漸く意識を取り戻した。一気に負荷を負い、足元をふらつかせ顔色を変えたプロイセンに大丈夫かと心配そうに尋ねたフランスに、
「お前にベルリン占拠されて、身体半分持ってかれたときの方がしんどかったぜ」
と、プロイセンは事も無げに笑った。その身体から滲みでる濃い膿んだ血の匂いに気付かないものはいなかったけれど、誰もそれを指摘することはなかった。

「…放っておけば良かったのに。ドイツ君がこうなった責任を取るべきだと思うな」
プロイセンは愛情などではないと言ったが、ドイツとの絆は見えない深いところで結ばれている。それをロシアは羨ましく思う。無条件に愛し、許し、献身的に自分の傍にいてくれた者など、ロシアにはいなかった。

「あいつはまだ若いし、経験も浅い。俺にとっては血肉を与えた肉親だ。あいつの身体をアメリカとお前に半分に裂かれる訳にはいかないだろ」

だから、ずっと目の前の青年が欲しかった。自分のものにしてしまいたかった。でも、目の前の青年の愛情は自分が真に想う相手のところに行くための手段だと知ったドイツの絶望は如何なものだったのだろう。この青年はやさしくも残酷だ。

「…お前のものになった地は俺に縁が深い。それにお前とは付き合い長いしな。俺が適任だろ」
「うん」
「…ま、世話になるぜ」
「うん」
ロシアは頷いて、空を見上げる。曇天の空、白い羽毛のような雪が降る。


神様は不公平で、残酷だ。


望み、願って、叫んでも、遠い空の向こうにいる神様にこの声は届かないのだろう。

僕の望みも、
プロイセン君の願いも、
ドイツ君の叫びも、

雪の中に沈む。
それでも、思う。
 



 

どうか、彼がいつまでも僕のそばにいてくれたら…、と。




 
 
 



オワリ





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