読んでいた新聞の上をぽたりと雫が落ち、インクの字が滲む。ぱたっとまた落ちた雫が首筋に落ち、ドイツは背後を振り返る。
「兄さん、ちゃんと拭いてから出て来いといつも言ってるだろう」
下着だけ身に着け、頭からタオルを被っただけのプロイセンの色素の抜けた髪は水分を含んで、毛先に雫が溜まり、ドイツのシャツに染みを作る。それを頓着する様子もなくプロイセンは腕を伸ばしてきた。その体からは石鹸の香りとシャンプーの匂いがする。ドイツは目を細めた。
「…拭け」
肩に腕を回し、器用にソファーを飛び越えたプロイセンは新聞を取り上げ、放り投げるとドイツの膝に腰を下ろす。眉を寄せたドイツに赤い目は笑んで、そう命令してくる。風呂上りの所為かいつもは白く冷たい肌も熱って、ほんのりと桃色に染まっている。命じられるままに肩に落ちたタオルを手にとって、髪を拭いていく。上機嫌に薄い唇の口角が上がった。
「機嫌がいいな」
「ん?そんなことないぜ」
「兄さんは機嫌がいいと俺を構いたがる」
ごつごつと無骨な指先が丁寧に髪の水分を拭き取って行く。プロイセンはその指に猫のように喉を鳴らした。
「何で、機嫌がいいか解るか?」
そろりと顎を撫でた指先。ドイツは視線を上げる。
「解らない」
プロイセンの指先がドイツの唇をなぞる。
「久しぶりだから。お前が家にいるの。さあ、存分に構ってやるから、お前も俺様を構え!」
重ねられた唇に、ドイツは「ja」と返事を返し、プロイセンをソファへと押し倒したのだった。
オワリ