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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
19 . May
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02 . July


トマトと、親分が~と、遭難西+普を絡めて、続き。
悶々とまどろっこしいのが好きなもんで…。思春期の少年かと突っ込んでやってくれ。







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 滞在も今日で24日目…。

 

「いつまでそちらにいるつもりなんだ?いい加減、帰って来てくれないか?」

ドイツのいつもは遠まわしな帰宅を促す言葉が直球に変わった。…統一してから、そういや、こんなに離れて暮らしたこと、なかったけ?…そう思いつつ、やはり曖昧な返事を返して、プロイセンは電話を切った。気持ちの整理があやふやなまま帰りたくないと思う。

「電話、終わったん?」

がしがしっと頭を拭きながら出てきたスペインに視線をくれて、プロイセンは携帯のボタンを押した。
「…ん」
「風呂、入って来たら?」
深く突っ込まずにそう言ってくれるところは今まで通り。前より、多少、スキンシップが増えた…スペインはお気に入りのものは構いたくて構いたくて仕方がない性格をしている。…それは、俺もだが。…プロイセンは携帯をテーブルに置いた。
「そーする」
すっかり慣れたスペイン宅の間取り。シャワーを浴びて、温い湯の張られたバスタブにプロイセンは浸かる。
「…帰らないとな」
居心地良さと飯の美味さと、スペインの泣き付く言葉にずるずると一週間の約束が三週間を過ぎてしまった。
「…好きって、国としてじゃねぇよなぁ。俺、もう国じゃねぇしなぁ…」
昔、結婚を申し込まれたこともあったがそれは国と国として関係を築く為のものだった。フランスの横槍が入ったのと上司が余り乗り気じゃなかったこともあって、その話は流れたのだが。
(…まあ、フランスよっかは好きだけと、なんつーか、アイツも老大国だからな。何、考えてるか解らなねぇとこもあるし、笑ってるけど目が笑ってねぇときとか何か怖いしよ。…ってか、アイツ、俺のどこがいいワケ?…俺様が男前なのがいけぇねぇのか?!)
プロイセンは溜息を吐く。ちゃぷりと温い湯が肌を髪を落ちていく。微温湯の心地良さはスペインのそばにいるときの心地良さに似ている。気を張らなくていいと言うか、気が抜けると言うか…。その心地よさに慣れてしまうのは、危険だ。
「…やっぱ、帰ろう」
待つとスペインは言ったのだから、待たせれば良いのだ。…ルッツの顔も長らく見ていないし、あのメープルシロップたっぷりのホットケーキもジャガイモ料理もビールもヴルストも恋しい。…結論が出て、プロイセンはバスタブから体を起こした。

 

 リビングに戻ると、スペインはひとり、ヘレスを空けて飲んでいる。キッチンから氷塊ひとつグラスに放り込んで、隣に座って勝手に注ぐ。辛口でキレのある喉越しは風呂上りには美味い、でもやはり自分にはビールだ。

「プーちゃん、帰るん?」

からりとグラスで氷が動くのを見やり、スペインは口を開いた。
「…あー、西側のトマトの棚の収穫が終わったらな」
「…そか。寂しなるなぁ」
ぽつりと本当に寂しそうにそう言われて、ぐらりとプロイセンは心が揺らぐ。
(…っ、絆されそうになってんじゃねぇよ!!)
今、先、帰ると心に決めたのだ。
「…また来るし、お前も俺んとこ、遊びに来ればいいだろ」
「うん。せやな。でも、ドイツに睨まれてしまいそや。ずっと、引止めとったしなぁ」
「別に、俺が居たかったから居ただけだろ」
「居心地良かったやろか?俺んとこ?」
緑色の潤んだ瞳が上がる。それにプロイセンは頷く。北に住む身としては南方はずっと憧れだった。日差しのきつさには閉口したが、燦々と地に降り注ぐ太陽と豊かな土地がもたらす野菜や果物、肉は美味い。確実に少し、体重が増えた。
「なら、嬉しいわ」
へらりと笑ったスペインの腕が伸びる。それにプロイセンは身を竦める。それに苦笑して、スペインはプロイセンの髪を撫でた。
「俺、もう寝るわ。明日も早いしな」
「…そうだな。俺もお休むぜ」
ゆっくりと竦んだ体の力を少しずつ抜いて、プロイセンは視線を伏せた。

「…ほっぺたにお休みのキスしてもええやろか?」

髪を撫でていた指が頬を撫でる。一瞬、迷ってプロイセンは心持ち首を僅かに傾け、頬を差し出した。
「ん」
精一杯、恥ずかしい気持ちと良く解らない感情を押し殺す。それにスペインは小さく笑うとプロイセンの頬に触れた。
「おやすみ」
離れていく指を掴み、プロイセンはスペインの首の後ろに手を回す。そして、スペインの酔いが回って、僅かに赤くなった頬に口付けた。

「おやすみ!」

プロイセンは背を向け、自分に宛がわれた二階の部屋へと逃げて行く。それをスペインは頬を押さえ、見送った。

「…あかん。勘違いしてしまいそや」

多分、初めて、…いや、二度目だ。プロイセンが自分から触れて来た。…プロイセンは覚えているだろうか?…初めて会ったあの日のことを。別れ際、頬にされた唇の柔らかな感触を思い出し、スペインは赤面した。
「…なんやの、もう…」
ウブでも何でもない、酸いも甘いも修羅場も知り尽くし擦れきった男が何を今更、こんな子ども染みたことに動揺してしまっているのだろう。

「…あー、俺、ホンマにプロイセンが好きなんやなぁ」

情熱の国は額を抑え、深い深い溜息を吐いた。

 

 

 

「………」

ドアを閉めて、バクバクと煩く鳴り響く胸を押さえるが動悸は酷くなるばかりだ。…されてばかりは癪で、ちょっと意表を衝いてやろうぐらいの気持ちだったのだが、スペインの緑が大きく見開かれ、頬が上気していくのを目の当たりにして、自分の行動が恥ずかしくなって逃げてしまった。
「…馬鹿か。俺…」
子ども騙しのキスをした自分が何故、狼狽しないといけないのだ。…ってか、何で、スペインのヤツ、赤面してんだよ!お前が赤面するから、俺様も恥ずかしくなっちまっただろうが、クソ!!…悪態を吐いて、プロイセンは柔らかなベッドにダイブし、枕を抱え込む。

「…愛だの、恋だの、そんなの俺様のガラじゃねんだよ!」

生まれた時から、戦う為に剣を取っていた。そして、戦って奪って、生きてきた。与えられることには慣れてはいない。父と慕った上司から与えられた愛情は擽ったくて、それでいてやさしくてやっと安心出来る場所を作り出せたのだと思った。弟が出来て、神の説く愛が与え、与えられものだと知った。注ぐ愛情が形になって還ってくるのはひどく新鮮で、夢中になって、弟を愛した。その結果、すべてを失うことになってしまったが、満足だった。…でも、その愛とスペインを想う何かは、全然、違うのだ。
「…愛って、一個だけじゃねぇのかよ…?」
例えば、ルッツに対する愛は大切にしたいと、何か遭ったら身を呈してまで守ってやりたいと思う、身を捧げる…そんな愛だ。昔、上司が自分にくれた愛情そのものだ。…スペインに対する想いは何か違う。スペインは守ってやるほど弱くはないし、身を呈してまで守ってやろうとは思わない。むしろ、互いの背中を預けて、安心出来て敵と戦えるようなそんな感じならある。
「……アイツ、俺とヤりたいって言ってたな…」
セックスしたいと言った。セックスは生殖行為だ。本来なら男女間で行われるその行為が男同士で出来るものなのか?…プロイセンは眉を寄せた。
「…想像出来ねぇ…」
敬虔なキリスト教徒ではもう無くなってしまったが、良く考えたら、それは神の教えに反する行為ではないか。プロイセンは頭を抱えた。

「…あー、もう寝る!寝るぜ!!」

考えれば考えるほど混乱していく。プロイセンは頭からブランケットを被ると目を閉じた。

 

 

 


「プ-ちゃん、朝やで?」

いつもなら寝起きのいいプロイセンがとうに起きてきてもおかしくない時間だが、リビングにプロイセンの姿はない。スペインは客室のある二階に上がり、プロイセンの部屋のドアを叩くが、返事はない。
「入るで」
一応、断って、部屋に入れば白み始めた部屋、ベッドの真ん中で丸まって眠っているプロイセンが目に留まる。スペインはベッドのそばに立つ。
(…息、苦しくないんやろか?…何か、写真で見た母親の胎内の中にいる子みたいや)
スペインは思い、ベッドに腰を下ろした。

「プーちゃん、起きて」

スプリングが微かに軋む。スペインはブランケットの端から覗く、プロイセンの色褪せた髪を見やり、そっとブランケットの端を捲った。
(…あかん。可愛い…)
睫毛が頬に落とす影だとか、薄く開いた唇だとか…。同性の寝姿にドキドキしてしまう。こんなドキドキはいつ以来だろうか。長い歴史を思い返してみるが、あの船上での出来事に集結してしまう。
(ほんまに、俺、あんとき、コイツに惚れてしもうたんやなぁ)
守られることを必要としない強さと、背中を任せられると言う安心感と、不安そうに揺れていた赤い目が安心したように緩み、笑んだことを忘れられそうにない。戦場で見せた殺気だった赤い目もいいが、穏やかに笑うプロイセンは無邪気な初めて出逢ったあの頃の笑顔と何一つ変わらずに、自分に向けられるのが嬉しかった。
(…辛いことばかりやったやろうに。お前はあの頃と何一つ変わってないんやな。…お前とあんとき結婚、出来とったら良かったんやけどな…)
あのとき、結婚出来ていればきっとあんな辛い目になんて遭わせなかった。…でも、もうそれは過去のことだ。それをぐだぐだ言っても仕方がない。ただ、目の前にいるプロイセンがスペインには愛しい。

 

「なあ、起きんとキスしてまうよ?」

 

ああ、まったくなんて今更な恋やろか。

 

スペインは眠るプロイセンの頬に唇を落とした。

 

 

 


オワレ






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