忍者ブログ
「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
19 . May
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

07 . January


オーストリア、東西兄弟と同居時代のお話。
何だかんだで、上手くやってる感じ。

8/31  加筆





拍手[25回]







「…おはよ」
「お早うございます」



ハンガリーにイタリア、私は意外にもこの同居、上手くやっています。だから心配しなくても大丈夫です。








寝起きのプロイセンは短い髪を豪快に跳ねさせて眠い目を擦り、キッチンに立つオーストリアの横でコーヒーをドリップする。朝のコーヒーを淹れるのがプロイセンの仕事であり、朝食を作るのがオーストリアの仕事である。そして、ドイツが食卓に並ぶ朝食のパンを買いに行くのがいつもの日課となって半年が過ぎた。

ドイツの元に身を寄せることは、それは天敵、不倶戴天の敵と言ってもいいドイツの兄であるプロイセンと一緒に暮らすと言う事でもあった。……それに、ハンガリーやイタリアから心配をされ、同居には猛反対を食らい、プロイセン自身が同居に嫌そうな顔をしていたが、オーストリアはドイツとの同居を強行した。相変わらず、口喧嘩は絶えないが、それはもう何と言うか自分たちに組み込まれた茶番のようなものので、罵りあいに発展するほど酷くはならない。当初はどうなるかと思ったが思いのほか、プロイセンとも上手くやっているとオーストリアは思う。

「…ドイツは?」
「パンを買いに行っています」
「…あー、焼き立てが美味いもんな」
「そうですね」
こんな他愛のない会話を出来るまでには、馴染んだ。
「坊ちゃん、今日もミルヒ多めか?」
「出来れば、クリームが希望です」
「…あー、面倒臭ぇな」
そう言いつつも、ボールでミルヒを泡立て始めるプロイセンをオーストリアは横目で見やる。戦場で何度も対峙した相手が傍らでコーヒーに淹れる為のクリームを文句を言いつつも泡立てている。時代は変わったのだなと思う。
「よし、と」
意外と器用なプロイセンは泡立てを終了し、棚から色違いの揃いのカップを3つ取り出すと、コーヒーを注いでいく。プロイセンの淹れるコーヒーは毎日味が違うが、不思議と濃さや砂糖、ミルクの加減が絶妙で、一度、それを褒めて以来、オーストリアの分も毎朝、淹れてくれるようになったのだ。

「ただいま」

リビングのドアが開く。パンの袋を片手にマフラーと帽子を取ったドイツが入ってくる。それにプロイセンはカップをテーブルに置いて、腕を広げた。
「おう。おかえり。そして、おはよ」
「ああ、お早う。兄さん」
兄弟が交わす親愛のキスとハグ。それが少し、オーストリアには羨ましい。この兄弟は本当に妬けるほどに仲睦まじい。

「…あ」

兄弟同士の挨拶にしてはやや長めの抱擁が終わり、プロイセンが声を上げた。
「どうした?」
声を上げたプロイセンにドイツが首を傾ける。

「坊ちゃん」

ドイツから向き直ったプロイセンが思い出したかのように腕を広げた。

「何ですか?」
「おはよ」

ぐいっと引き寄せられて軽く抱きしめられる。触れてすぐに離れる、ひんやりと冷たい頬。

「お早うございます」

同じように返す。…そう言えば、今日はしてませんでしたね。オーストリアはぼんやりと思う。一緒に暮らし始めてから、お互いの歩み寄りの為に始まった習慣。お互いぎくしゃくとしていた頃に比べれば随分と馴染んだなと思う。

「…いつから、そんなに仲良くなったんだ?」

仲が悪い頃しか知らず、いがみ合う様を間近で見てきたドイツが気持ち悪いものを見るように、プロイセンとオーストリアを見やる。それにプロイセンは眉を寄せた。
「仲良くしろって言ったのは、お前だろうが」
「確かに言ったが…その、兄さんはその…」
ごにょごにょと言葉を濁したドイツの語尾をプロイセンは拾う。
「あー、確かに嫌いだぜ。でも、今、こいつ、敵じゃねぇし」
「え?…でも、オーストリアも…」
ドイツが泳がせた視線にオーストリアは着けていたエプロンを外した。
「嫌いですよ。でも、今は敵ではないですしねぇ」
その言葉が腑に落ちないのかドイツは眉を顰めた。
「なら、何故?」
「あ?今や、お前の一部だしな。愛せるまではいかないが、ちょっとくらい歩み寄ってやろうかと思ってよ」
「まあ、私もそんなところです。…朝食にしましょうか?」
昔話をするのにも、たまに自分のピアノに合わせ、奏でられるプロイセンの個性的なフルートの音も、知りすぎるほどに知ってしまった相手がいることは長くいがみ合って来た相手とは言え、中々、そう簡単に得られるものではない。そう思えるほどに自分も丸くなってしまったのだろうとオーストリアは思う。

「…あ、ああ」

これはプロイセンとオーストリアだけにしか共有できないことだ。ドイツは不可解そうに眉を寄せながらも、皿を運ぶのを手伝う。そして、三人での朝食が始まるのだ。それがこの先も続けばいいのにと、オーストリアは願う。







心配しないでください。

プロイセンも昔に比べると、大分、丸くなりましたし、相変わらず口は悪いですけれどね。

ドイツが私たちの間にいるからでしょうか。プロイセンとの口喧嘩の数も最初の頃より、減りましたよ。そして、時々、昔のことを思い出します。あなたたちと過ごし、あの子が居た、本当に昔のことです。…ずっと、私がこうなればいいなと望んでいたことが今、漸く叶ったのです。


私は大丈夫です。
今、とても幸せなのですから。





おわり





PR
NAME
TITLE
TEXT COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Powered by NINJA BLOG  Designed by PLP
忍者ブログ / [PR]