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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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24 . August


何だ、コレ。弟を虐めたかっただけじゃねぇか。…ってか、普独だわ。

普段はおっぱい星人の皮を被っているノーマルなのに天然に無意識にSな普って、萌だろ!って言う俺得にお付き合い、有難うございました。






拍手[90回]



覚えているのは硬い靴底の感触と殴られたのだというぼんやりとした実感。口の中に広がった鉄錆の不味さ。見下ろす赤。

「馬鹿が。お前は加減も解らないのか?痛めつければいいってもんじゃねぇんだよ。お前のやったことは尋問の範疇を越えたただの虐待だ」

がっと肩を蹴られ、呻けば赤はただ眉を寄せた。

「…チッ、まだ何も聞き出せてねぇってのに、頭がイカレてなきゃいいんだが、お前の所為で入る筈の重要な情報がパアだ。…お前はことの重要性をまったく解っていないようだ。暴力振るえば、簡単に口を割ると思ってんのか?それは大きな間違いだ。訓練された人間はそんなものでは口は割らねぇ。割らすにはそれなりの準備ってモンがあるんだ。その準備も意味を失くしちまった。お前がこんなことも解らない馬鹿だったとは思わなかったぜ」

ガッと靴先が鳩尾に入り、ルートヴィッヒは眉を寄せ、見下ろす赤を見上げる。赤は心底、落胆したような色して、黒革で覆われた指先を振った。

「…頭を冷やして来い。連れて行け」

後にも先にも、ギルベルトに折檻を食らったのはこれが初めてのことで、ギルベルトの呆れたような視線と切り捨てるような物言いにルートヴィッヒは心の柔らかい部分を裂かれた。叱責されるとも殴られるとも思っていなかったからだ。そのショックは計り知れなかった。ショックと同時に見放されるのではないかと不安が心に重く圧し掛かってくる。

 

 誰よりも、何よりも、全世界の人々に嫌われようが痛まない胸が、ギルベルトの言葉には胸を裂かれ血を吹く。

 

 完全にトラウマになってしまっていた。

 

 

 


中途半端になってしまったものの、満足そうに帰っていた紳士を見送り、ギルベルトは控え室に戻る。そこにはぶすりとむくれた弟とその弟をイジリたくて仕方のなさそうなユーリーと物言いたげな半蔵と、溜息を吐くオーナーと。ギルベルトは開口一番、謝罪の言葉を口にした。
「迷惑かけてすまなかった」
「まあ、いいわよ。お客様は怒ってなかったし」
「…あー、うん。でもまあ。悪いから、この埋め合わせはするって言っといたぜ」
「そう?なら、いいけど。…で、どうするの?お店、辞める?」
オーナーの言葉にギルベルトは暫し、逡巡した。
「えー、辞めちゃうの?折角、お友達できたと思ったのに!」
「我侭を言ってはいけませんよ。ユーリー」
「だってさ、アタシのこと、偏見なしにちゃんと怒ってくれたり窘めたりしてくれんのハンゾーとギルだけなんだもん」
ぷすりと頬を膨らませ、ユーリーが言う。それを宥めながら、半蔵もギルベルトを見やる。
「私も折角、お話が合う方と出会えましたし、これで終わりと言うのは非常に寂しいです」
それにギルベルトは顎を掻いて、ふーと息を吐いた。
「辞めねぇよ。予約の客、捌けてねぇし、金も目標金額にはまだ足りてねぇからな」
どかりとプロイセンは椅子に腰を落とし、終始、俯き黙りこくっているルートヴィッヒを見やった。
「よくここが解ったな」
「………」
「…ってか、家で待ってられなかったのか?」
ギルベルトの言葉にルートヴィッヒは顔を上げた。
「店の内容を知って、冷静でいられるか」
「お前、そーゆーの趣味だろ。別に乗り込んでくることねぇだろが」
「…あなたが縛られたり、吊るされたりしているのを考えたら、我慢出来なかったんだ」
ルートヴィッヒの台詞にユーリーと半蔵は顔を合わせる。ギルベルトは深い溜息を吐いた。
「残念だったな。想像と違ってて。俺、Mじゃねぇから。まあ、Sでもねぇけど。甚振られて喜ぶ趣味は持ち合わせてねぇからな?」
手持ち無沙汰に鞭を弄るギルベルトの手元を凝視するルートヴィッヒはうっすらと額に汗を掻き始める。それに半蔵は気づき、首を傾けた。
(…弟君はギルベルトさんに対して、加虐したいという欲があるようですが、ギルベルトさんも弟君がSだと認めるようなことを言ってますし、でも、ご兄弟ですよね?…は!もしかして、近親相姦ですか!?…いやいや、何ですか、萌、ビジュアル的に萌ですよ!これは次の小説のいいネタになりそうです)
思わず、想像に顔が緩くなるのをキリッと半蔵は何とか堪えた。
「…なんだって、こんなところで、いかがわしい。そんな服まで着て、何を考えてるんだ」
緊張に強張った口調でルートヴィッヒは口を開く。それにギルベルトは視線をくれた。
「いかがわしいって、別に俺は服は脱いでないし、性的なことはされてねぇし、まあ、どちらかと言うとする側だけど、別に興奮なんてしねぇし、軍服がストイックに見えて、余計にそそるんだとよ。お前の持ってるDVDみたいなことはしてねぇから」
ぱしんと手のひらで小気味良い音がする。ルートヴィッヒは眉間の皺を深め、ギルベルトを見やった。
(S.VS.Sって、たまらん!間に入って、二人とも調教したーい!首輪つけて、鎖つけて革ベルトで思い切り縛りあげて、跪かせたーい!!…ってか、ギルが弟しばいてるところが超見たいんですけど!!…ってか、弟、絶対いいMになると思うんだよね。なんつーか、ギルに頭上がらないみたいだし…ああ、二人ともまとめてアタシの奴隷になればいいいのに…)
目を爛々と輝かせ、ユーリーは二人のやり取りに見入る。
「そんなことを訊いてるのではない。何だって、こんなことをしているのか訊いている。大体、仕事なら他にいくらでもあるだろう。何で、よりによってこんな店なんだ!」
ダンッと叩かれたテーブルが跳ねる。それに半蔵とユーリーは身を竦める。溜息を吐いて、今まで黙っていたオーナが口を開いた。
「こんな店で悪かったわね。でも、立派なサービス業よ。人に知られたくない性癖を悩んでるひとを助ける為に店を開いたの。だって、世間からは変態扱いされて終わり。殺人を犯した訳でも、泥棒したわけでもないのに性癖でレッテル貼られて疎外されるなんてあんまりじゃない。他人様に迷惑がかからない範囲で楽しむことは悪いことではないはずよ」
オーナーの言葉にルートヴィッヒは言葉に詰まる。
「ま、俺も最初はちょっとなぁって思ったけどよ。仕方がねぇよな。嗜好ってもんはどうにもならないし、煙草が好きだったり、酒が好きだったりするのと変わらねぇんだからよ。別にいいんじゃねかと思ってるぜ」
「嗜好はひとそれぞれですもの。迷惑かけない範疇で双方合意で楽しめる範囲なら構わないと思うのよ」
「…だとよ。ルッツ」
ニヤリと口端を上げれば、苦虫を踏み潰したような顔をして、ルートヴィッヒはギルベルトを睨んだ。
「…それは良く解ったが、あなたがこの店で働いている理由は何だ?あなたは別にSでもなんでもないだろう」
「そんなの、時給が良かったからだ。急ぎで金が入用だったんでな」
ギルベルトの言葉にルートヴィッヒは眉をひくりと上げた。
「金?」
「俺が可愛がってた部下の孫が心臓病で移植手術を受けないと助からねぇんだと。でも、金がなくて手術が受けられねぇらしいんだ。用立ててやりてぇと思ってよ。普通に働いてたんじゃ、とても間に合う金額じゃねぇしな」
「な?」
「まあ、他の連中にも頼んで寄付募ってよ、目標金額まで、後、ちょっとなんだよ。それが貯まったら、バイトは辞める。それまでは黙って、目瞑っとけ」
ギルベルトはそう言うと、立ち上がった。

「…返事は?」

鞭の切っ先がルートヴィッヒの顎を掬う。真っ直ぐに見据えてくる赤に屈したように、青は視線を伏せた。
「…ja」
その返事に満足そうに笑むとギルベルトはルートヴィッヒの頭を撫でた。

「よし、いい子だ。でもな、」

ダンット椅子の背凭れを長靴の爪先が踏みつける。それに身を硬くし、ルートヴィッヒはギルベルトを見上げた。

「大方、俺の上着に発信機でも付けて置いたんだろ?まあ、それについては褒めてやるよ。俺も失念してたしな。上出来だ。…だが、」

ガッと髪を掴まれ、ルートヴィッヒは仰け反る。見下ろす赤に息を飲んだ。
「俺のやることに口を出すな。いいな?」
普段は煩いくらいに構えと干渉してくるクセに、こちらが干渉してくるのをギルベルトは酷く嫌う。ルートヴィッヒは諦めにも似た返事を返す。結局、兄には何をやっても現実では敵わないのだ。この赤を目にするとあのの光景がフラッシュバックして身が竦む。

「…ja」

それに一応満足したのか、ギルベルトは居住まいを正す。それにほうっと息が漏れるのに、ギルベルトは我に返った。
(やべ。ここ、控え室だったな)
ケセセと笑って誤魔化すのもアレな気がして、制帽のつばを引く。

「アタシ、マジでギルにならしばかれてもいい」
「私もです。ちょっと今のキました」

興奮に目の色を変えたユーリーと半蔵と、そして、

「…あの頃を思い出すわぁ…」

感慨に耽るオーナーと、

「…どうすれば、俺は兄さんを組み敷けるようになるんだ…」

ぶつぶつと何やら物騒なことを呟き始めた弟にギルベルトはやり場のない溜息を吐くのだった。

 

 


オワレ!!





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