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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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14 . September


…アレ、おかしいな?本当は、お兄様待ち伏せ→弟が帰宅したところを奇襲→昏倒させて、踏ん縛る→色々あって、仲直りな予定だったんですが、弟の兄不足は深刻だったよ。…まあ、前々回から三ヶ月も放置されてればな…。

 

後、ちょっとだけ本家ネタが混じってます。

独普なのか、普独なのかは読んだ人の判断に任せるぜ。



 





拍手[28回]




今日も、兄さんを見つけられなっかった。

 各国に派遣した部下達の報告を聞き終え、退出させて、ドイツは深い息を吐いた。あれから、一月が経つ。どこを探してもプロイセンの気配はない。国内にも、彼の実家である場所にも、ロシアにも探りを入れたが引っかかるものすらない。カードとパスポートを使えなくしたその日、兄はフランクフルトの日本行きの便に搭乗しようとしていたらしいが、時間差で逃げられた。そこからぷつりと後を追えなくなってしまった。
戦時中も口論の末、兄が出て行ったときも物の見事に自分がいた痕跡を全て消しさって、一介の兵士として前線に立つようなひとだ。冷戦中など最初の東西の会談に姿を見せたきり、その後は壁が崩壊するまで公の場に兄は姿を見せなかった。あんなに目立つ外見をしているくせに回りに溶け込むのが上手い。兄のほうから戻って来るか、連絡を取ってくるか、兄の親しい友人から連絡を貰うまでは動きようもない。ドイツは何度目になるか解らない溜息を吐く。

 すぐに許してくれると思っていた。

 それが甘い誤算だった。プロイセンは何があっても最後には必ず自分を許してくれると信じていた。あの日もすぐに謝ってしまえば、立て篭もった書庫から出てきて、「仕方がねぇな」と苦笑を浮かべながらも、自分を許してくれるのだろうとどこかで信じていた。それが、出て行かれ、一ヶ月も家に戻ってこない。これは、もう愛想を尽かされたのか、嫌われたのか…そう思うと胸が軋むように痛い。子どもの頃の自分に、プロイセンに嫌われるのが怖くて、我侭も言えずに、ただプロイセンの背中を見つめていたあの頃に戻ってしまう。

「…っ、いやだ」

嫌われたくない。愛されたい。

「…にいさん、いい子になるから、帰ってきてくれ…」

四十年、プロイセンの不在に耐えてきた。でも、一ヶ月のことがもう既に耐えられない。ぼろぼろと脆く崩れ落ちていく何か。ドイツは胸を押さえ、机に突っ伏し、嗚咽を漏らした。

 

 

 



泣き腫らした顔のまま、ドイツは帰途に着く。こんな顔、部下にも、隣国にも見せられない。俯き、のろのろと待つ者のいない家へ、足取り重く向かう。
家の中は何をする気も起きず、酷い有様だ。いつもはぴかぴかに磨き上げられた廊下には薄っすらと埃が積もり、キッチンとリビングには空けた酒瓶が転がったままになっている。そんな状態で犬たちの世話が出来る訳もなく、知人に預けたままになっている。こんなにも自分は、あのひとがいないと何も出来ない奴だったのかと自嘲し、鍵を取り出し、ドイツは顔を上げた。そして、目を見開いた。

「…明かりが」

暗いはずの家にオレンジ色の明かりが灯っている。ドアノブを捻れば容易にドアは開いた。廊下はオレンジ色の明かりが灯り、埃が積もっているはずの床はきれいに磨かれている。その廊下を歩き、明かりの漏れるダイニングに入れば見慣れた背中が見えた。

「兄さん!」

思わず声を上げる。それに振り返り、プロイセンはドイツを見やった。
「おう。お帰り。遅かったな」
何事もなかったかのようにそう言ったプロイセンにドイツは堪っていたものがどっと溢れ出す。ぼろりと涙を零したドイツにプロイセンは一瞬、驚いた顔をして、息を吐いた。
「…ひでー顔。フランスとスペインが帰れ帰れ言うから、帰って来てやったけど、何だこの有様は?お前らしくもねぇ」
空き瓶を突っ込んだゴミ袋が片隅にある。流しに突っ込んだままだったグラスや皿はプロイセンが片付けたらしく、所定の位置に収まり、整然と片付いていた。
「…あ、あなたがいないと、俺は、何も、出来ないんだ…」
「情けないことを言うな。俺がいない四十年の間もきちんと出来てただろうが」
「…あなたがいずれ帰ってくると、思ってたから、だ…」
ぐずっと鼻を啜ったドイツにプロイセンは息を吐いた。思っていたよりも、以上にこの弟は自分に依存している。依存することで安定を保っていると言えばいいのか。未だにドイツの中にはプロイセンの遺物があちらこちらに残っているから、ドイツの精神的な主柱になっているのだろう。でも、いずれ、それは消える。そのときこそ本当に自分は消えるだろう。領邦達もそうやってドイツの中に取り込まれていった。そして、自分は早く、この弟の中に取り込まれたいと、血肉の一部になりたいと望んでいるのだが、それを許さない。そのくせ、体が欲しいと矛盾したことをドイツは言うのだ。
「…ごめんなさい。…もう、絶対にあんなことはしない。あなたにはもう二度と触れない。…だから、帰ってきてくれ…お願いだ…」
小さかった頃は我侭すら言わず、黙って俯いているような子どもだった。そのクセ、青い瞳は訴えるように愛して欲しいと望んでくる。…ドイツが兄であるプロイセンを抱きたいと望むのは自分の中に取り込みたいから、加虐嗜好は未だ自分の心の全てを支配しているプロイセンを屈服させたい、支配したいという本能からなのだろう。すでに自分は膝を折り、忠誠を誓い、尽くしてきた。でも、ドイツのそれを許してしまえば、自分を保てなくなる。「兄」ではなくなってしまう。そうなったら、ドイツが間違いを犯したとき、諌める者がいなくなってしまう。
「あんなことは御免だが、キスもハグもしてくれないのか?…俺は、お前を」
何だかんだ言いつつも、許してる。あの青い目が自分を捕らえた瞬間から、何もかも与えてきた。でも、最後の最後を明け渡してしまうわけには行かないのだ。この子どもはまだ、自分の存在の存続を望んでいるならば、尚更。

「…愛してるのに?」

離れていた距離を詰める。濡れた頬を撫でれば、ドイツは許しを請うように手のひらを伸ばし、それをぎゅうっと握りこむ。それに息を吐けば、びくりと肩が跳ねた。

「…支配したいんなら、俺を犯せ。愛したいんだったら、俺をぎゅって抱きしめてくれよ。…ルッツ」

もうどっちでもいいと思う。どうなったて、結局は許すのだ。ドイツが望むように。その結果、消えたって、その所為でドイツが悲しむことになったとしても、自分の心はきっと痛むこともなく、満足できる。求められなくなることのほうが酷く、怖い。
「…兄さん、俺は…」
ぎゅうっと握りこまれた指先が恐る恐る背に回される。掻き抱くように抱きしめられ、プロイセンはドイツの背を撫でた。
「…あなたが好きだ。あなたが欲しい。…でも、支配したいんじゃない。そばにいてほしいんだ」
あァ、本当にどうしようもない弟だ。望むものを口にすれば簡単にそれを俺が与えてくれると知っている馬鹿な弟。自分が望むようにそうなるように兄が仕向けていると知ったらどうするのだろう?…プロイセンは嗤う。…支配しているのは、どちらだろうか?

 

 なんて、昏い悦びだろう。

 


そう思いながら、プロイセンはドイツの髪を梳く。ドイツの濡れた睫毛が上がる。それに、プロイセンは目を細めた。

「…俺も、お前のそばにいたいぜ。…Ich liebe es.Mein Reich.」

あの日からずっと、望んできたことだった。

 

 

 

 


「…仲直り、出来た訳ね」
「まあな」
「そりゃ、良かったわ。ドイツ、めちゃ柔らかい顔しとるもんなぁ」

EUの会合の場所となったホテルのロビーの一角、ドイツに同行したプロイセンをフランスとスペインは休憩時間に捕まえた。
「…で、お前、ドイツとどうなったの?」
「どうって?」
「ヤったんか?」
「ヤってねぇよ。何で、すぐ、そっちに直結すんだ?」
「だってなぁ」
「話の流れからして、どう考えてもそっち方面だったでしょ?」
それにプロイセンは溜息を吐いた。
「無理矢理、かかってくるんだったら、ちょっと荒治療してやろうかと思って、アイツの部屋からロープとか引っ張り出して隠し持って、待ち構えてたんだけどさ、アイツ、泣くんだもん」
思い出したのか、プロイセンはによりと頬を緩ませた。
「は?」
「ドイツが泣いた?」
フランスとスペインは顔を合わせる。あのムキムキが泣いているところなど、想像も出来ない。
「想像出来ないんですけど」
「すんな。アイツの泣いた顔知ってるのは俺様だけで十分だぜ」
「言うてくれるやん」
惚気にスペインは肩を竦める。…まあ、何はともあれ、ここ一ヶ月、ドイツが不調だった所為か議案は何一つ進捗を見せておらず、硬直状態だったのだがこれでさくさくと進んでいくだろう。フランスは息を吐いた。
「…ってか、ホント、お前、子育て成功してんね」
「ロマなんか、俺がおらんでもきっと平然としとるで?」
思い切り過去に失敗しているフランスと、未だ子分に手を焼いているスペインは溜息を吐いた。
「…ま、俺様の躾が良かったんだろ」
良すぎて、ブラコンも度が過ぎてしまったが取り合えず問題ない。今後はベッドの中でじっくりと自分好みに、ドイツを躾けてやればいい。

新たな楽しみにプロイセンはニヨリと口元を緩ませるのだった。

 

 

おわり!







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