忍者ブログ
「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
19 . May
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

03 . October


再統一じゃ!と言う訳で。

年に二度、隊長の甘えモードが全開、兄さんも甘やかすモード全開だよね。…で、いちゃこらさせるぞ!って張り切ったはいいが何だか、いつものグダグダになりました。密着度は高いけどな…。






拍手[15回]





朝から、べったりと酷い有様で。一年に二度、普段は聞き分けの良過ぎる良く出来た弟は駄々っ子に還る。

「ヴェスト、」
「何だ?」
「俺、トイレ、行きたいんだけど」
「…どうしてもか」
「いかねぇと、漏れるだろうが」

後ろから羽交い締め。腰に回された腕が離したくないとぎゅうと締まる。その腕をプロイセンは軽く叩く。

「すぐ、戻って来るから」
「…本当にだぞ」
「すぐ、戻るって」

立ち上がり、部屋を出て行くのを視線で追うドイツにプロイセンは部屋を出て、溜息を吐く。ベタベタは滅多に無い上に、長じて…いや、あまり、甘えるのも上手じゃなかった子どもがこうも露骨に甘えてくると、いっそ清々しい。プロイセンは用を足すと手を洗い、思い出して自室に戻る。読みかけの本を手に階下を降りれば、鬼の形相のドイツが階下で睨むように立っていた。

「すぐ、戻るって言ったじゃないか!」
「すぐだろ。そんなに時間、経ってねぇだろうが」
「何を言ってるんだ。もう、五分経った!」

むんずと腕を掴まれ、転びそうになりながらリビングに戻る。ぎゅうっと今度は正面から抱き締められ、これでは暇つぶしに持ってきた本を読めないなとプロイセンは諦め、傍らに置くと、空いたその手でドイツの撫で付けられた髪を梳いた。

「とんだ甘ったれだな」

「別にいいだろう。昔、したくても出来なかったことを今してるだけだ」
揶揄いを含んだ言葉に素っ気無く、肩口に鼻先を埋めたドイツが言葉を返してきた。
「昔のほうが、お兄様は嬉しかったけどな」
今も昔も変わらぬ触り心地の柔らかい金の髪に鼻先を埋める。嗅ぎ慣れたシャンプーの香りがする。プロイセンはそれに目を細めた。
「…悪かったな。今はこんなで」
「んなことは言ってねぇだろうが。…でもまあ、あんまり構ってやれなかったしな。もっと、小さいお前をぎゅうってしとけば良かったな。これも、嫌じゃねぇけど、俺、お兄ちゃんだから」
すっかり大きく、自分よりも逞しい体躯と美しい青と金と。自分が持ち得なかった色をした弟の腕にすっぽりと収まって、プロイセンは腕を滑らせる。大きかろうが小さかろうが、初めて出会ったときの募っていくような愛しさは今も変わることがない。
「…兄さんは、色々、俺にしてくれた」
「そっか?」
「だから、今の俺がある。…俺は、」
「何だよ?」
言葉を切って、口を噤んだドイツの顔をプロイセンは覗き込んだ。

「…俺は、あなたの望むものになれただろうか?」

その言葉にプロイセンは赤を瞬いた。
「…未だに、俺はあなたの足元にも及ばない。縋るものがなければ、悪夢に飲み込まれそうだ。…いつも思うし、考える。俺が「ドイツ」で良かったのかと。上司は兄さんを望んでいたのに、帝国の玉座に座ったのは俺だった。…俺だったから、あんなことになったんじゃないかと…兄さんなら、もっと…」
ドイツの言葉を吐き出そうとする口をプロイセンは塞ぐ。何度か唇を食んで、震えが収まるのを待って、離れる。頬を撫でれば、ドイツは視線を伏せた。
「…すまない。取り乱した」
その伏せた青が微かに潤むのを見やり、目尻にプロイセンは口付けを落とした。
「…ん。別にいいけどな。…てか、上司は確かに俺を望んでたけどよ、国民はお前を望んでた。民意はな国にとっては王の意思より重いもん何だよ」
「…ああ」
「前から言ってると思うけどな、あるべきものがあるべき者のところへ還った。それだけだ。俺は端っから帝国になんてなるつもりはなかったし、それは荷が重いって思った。あんなことになったのは、俺があの髭に吹っ掛けすぎた所為だ。お前は悪くねぇよ」
普仏戦争、勝敗が決まった際、オットーのゆるやかな条約を結びフランスに遺恨を残さぬようにと言う進言を聞き入れておけば良かったのだと後になって思った。ナポ公に消失寸前にまで追い込まれた恨みは相当、自分でも深かったらしい。それが、後々、何を招くか考えれば解ったはずなのに、目の前、漸く、自分の望みが達せられた喜びに目が眩んで何も見えなくなっていた。
「…お前は良く出来た子だ」
「帝国」と言う重責に潰されることなく、立派に育った。もう少し視野が広く、同年代の友人がドイツの傍にいれば、あの暗澹たる時代をもう少し違った方法で乗り越えられただろうと思う。良くも悪くも、自分の悪いところをドイツは引き継いでしまった。力だけで切り開いていける時代は終わってしまった。でも、自分はそれしか知らなかった。自分にはそれだけしか、ドイツに教えてやることが出来なかった。…その先のことは何一つ教えてはやれなかった。
「…だが、俺は過ちを犯した」
過ち…あの狂った熱狂の波に誰よりも近くにいたドイツに逃れる術などなかった。…切り離された位置にいたから冷静だっただけだ。プロイセンは目を閉じる。うねるような歓声。その中、声高に叫ばれる忠誠を叫ぶ声。それに逆らえる者などいなかった。誰もが高く掲げられた第三帝国と、あの時代の勝利に、理想に酔っていた。また、輝かしい美しい帝国が建国されるのだと信じて疑わなかった。…それはかつて、自分が経験したことのある逃れられない興奮と歓喜。それに飲み込まれてしまえば、波が引くまで熱は冷めない。
「…お前は頑張ったじゃねぇか。…今も償いながら生きてるだろ?」
戦後の歩みは破壊され尽くした街と同じようにぼろぼろに崩れ落ちた自我の構築から始まった。責められ、自省し、非難に耐え、それでも一歩一歩、ここまで歩いてきた。復興したドイツは世界に名立たる経済大国へとなっていた。

「…生きている限り忘れないし、俺に出来ることをやっていく。…あなたに対しても」

「俺?」
青がプロイセンの赤を捕らえる。捕らえられた赤はじっとその青に見入った。

「どれだけ言葉を尽くしても、失った四十年を許してもらえるなんて思ってない。本来なら俺が負うはずの負担をまだあなたに背負わせて、…でも、まだここに、俺のそばにいて欲しいと思うことは傲慢で、俺のエゴにしか過ぎないのだと思う。解ってる。…俺はまだ、」

ぐいっと引き寄せられ、骨が軋む。再び伏せられた顔。縋るように掴んだ指が震えている。

「あなたと一緒にいたい。来年もまた次の年も、ずっとずっと、この日をあなたと過ごしたい」

ああ、まったく。なんて、駄目な子だろう。そんなにヤワに育てたつもりはなかったのに。

小さい頃はずっと俯いて我侭も言わず、目だけは「そばにいて欲しい」と訴えてくるような子どもだった。マントの裾を掴んで、何も言えずに立ち尽くしていた子どもが、今、全身で自分を求めている。欲してる。その幸福をどれだけ、自分が今、噛み締めているのか。ドイツには解らないのだろう。

「顔を上げろ。Mein schönes Reich」

プロイセンは顔を上げるように促した。それに、ドイツは視線を上げる。

「どんなに時代が変わろうと俺にとってお前はずっと俺の王だ。そして、俺はお前の騎士だからな。ずっとそばにいてやるよ」

額に口付ける。

兄弟で、主従で、そして、恋人で。出会って、別れて、またひとつになって。…その間に色々と付属してきた関係も、そこに至るまでの長い道のりも辿り着けば、たったひとつの願いに行き着く。何ひとつ変わらない。出会ったときから募っていった愛しさに名前を付ける必要なんてない。ただ、一緒にいたいだけだ。

 

 たった、それだけ。その想いが、今日のこの日になったのだから。

 

 

 

 

 

おわり






PR
NAME
TITLE
TEXT COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Powered by NINJA BLOG  Designed by PLP
忍者ブログ / [PR]