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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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05 . October


遠まわしな弟と鈍い兄さん。
結構、親父が出張ってます。

多分、普独。頑張れば、独普。…あー、まあどっちでもいいか。






拍手[27回]





何が好きかと問えば、例えをあげろと言う。

 気だるそうに、床のラグの上、ブランケットに包まり三匹の犬達と小鳥一羽侍らせたプロイセンの目蓋は落ちそうだ。それを、ソファからドイツは見下ろした。

「好きなお菓子は?」
「最近はホットケーキだな。お前が作るの限定だけど」
「…そうか。飲み物は何が好きだ?」
「訊くまでもねぇだろう。ビールだ」
「愚問だったな。好きな花は」
「…花?…あー、何だっけ、名前忘れた。国花になってる青いヤツ」
「矢車草か」
「あぁ。昔、ルイーゼが髭とドンパチやって、ぶっ倒れてたときせめてもの慰みにって花冠作ってくれたんだよな」
「そうか。兄さんから聞く女性の話は王妃のことばかりだな」
「あんな良く出来た女、いねぇよ。俺が国じゃなかったら、求婚してたぜ。…あいつは母親のように俺を愛してくれたからな。…でも、呆気なく逝っちまいやがってよ」
かの王妃は、プロイセンがフランスの支配下から脱するの待たず、肺炎でこの世を去った。プロイセンは思い出したのかスンっと小さく鼻を啜った。ドイツは彼女の晩年に会ったことがある。穏やかでやさしく、兄が唯一、心を許し、気さくな口を利き、敬愛していた女性だった。彼女は最期のときまでプロイセンのことを案じていた。
「…好きな動物は?」
「犬、後、小鳥。小鳥は触り心地が俺好み」
肩に留まった小鳥が嬉しげに囀る。プロイセンはそれに目を細め、小鳥の顎を擽った。
「好きな趣味は?」
「日記書くこと」
「前から思ってたんだが、何時ごろから書いてるんだ?」
ドイツは前々から思っていたことを訊こうと言葉を続けた。
「…んー、何時ごろからだったか…あの頃は紙が貴重で手に入らなくてよ。羊皮紙とかも手に入り辛かったし、まともに付け始めたのは神聖ローマんとこに世話になってるときからだったかもな」
「しかし、飽きっぽい兄さんが良く続いてるな」
「まあな。…国じゃなかったからいつ消えるか解らなかったし、居たぞって証みたいなのを残しとこうって思ったらよ、ここまで続いちまったぜ」
「…そうか」
ドイツは言葉を切った。
「好きな場所は?」
「ここと後、サンスーシの親父の執務室」
「…フリードリヒ大王の?」
「ここはお前とこいつらがいるから。あそこは何か、何て言ったらいいのか解らないけどよ、親父がいる気がする。何か、ほっとするんだよな。どっちも。帰る場所みたいな、俺を待ってるひとがいるみたいな感じがしてよ」
「…兄さんの帰る場所はここだぞ」
「解ってるって」
何か言いたげに顰められた青を見やり、赤は笑う。ドイツは溜息をひとつ落とした。
「好きな料理は?」
「ソリャンカ。残り物で作ったスープだけどよ。たまに食いたくなるな」
「東側の料理だな」
「刻んだピクルスとサラミを入れて、コクのある香辛料効かせたちょっと塩辛いスープなんだけどな。これと蒸かした芋と合わせて食うと美味いんだよな」
「食べてみたいな。食べたことが無い」
「んじゃ、今度、作ってやるよ」
「楽しみにしてる。…好きな果物は?」
「さくらんぼ。…親父が好きだったのがうつった」
「大王はさくらんぼが好きだったのか?」
「好きすぎてよ。実を食われるってんで小鳥を駆除したりな。それが原因で虫が増えて、全部食われちまったりしてよ。まあ、んで小鳥駆除すんのやめたりとか。結構、無茶苦茶だろ?」
「聡明なひとだと訊いたが」
「聡明だったが、偏屈だったぜ。俺の所為だけど。…でもまあ、あいつもさ、墓に芋ばっか供えられて気の毒だよな。好物じゃねぇのに」
「じゃがいもを市民に広げた功績を讃えてだろう。真っ先にじゃがいもを食し、普及に努めたんだろう?」
「まあな。普及させるために色々考えたレシピを片っ端から食卓に並べさせて、あの頃は悪魔の実だなんて言われてたからよ。気が狂ったのかと思ったぜ」
「…兄さんはそんなことは気にし無さそうに見えるが」
「…お前な、俺をなんだと思ってんだ!俺は結構、繊細なんだからな!」
繊細と自分で言ってしまう時点でどうかと思ったが、深くは突っ込まない。プロイセンは口を尖らせていたが、その口を緩めた。
「普及させんのに、畑、見張らせて、捕ってゆく者がいたらそれは見逃してやれとか。王がわざわざ畑を見張らせて作らせているのだから、美味いモンに違いないって思わせるところがあいつも策士だよな。お陰で国中に広がって、飢饉も乗り越えられるようになった。…親父は広まった途端、食わなくなったけどな」
プロイセンはケセセと笑う。ドイツも笑って、口を開く。
「好きな香りは?」
「好きな香り?…んー、良く日に干したシーツの匂いとか?」
「それは俺も好きだ」
「気持ちいいよな」
幸せな匂いだ。そう言ったプロイセンにドイツは頷いた。
「そうだな。…好きな、行ってみたい所は?」
「イタリアちゃん家。ヴェネチア行ったことねぇからよ。ゴンドラに揺られてみたいぜ」
「…休暇が取れたら、行こう」
「約束だかんな!日記に書いとくからな」
「ああ。…訊かずとも解る気がするんだが、好きな時代は?」
「十八世紀。親父と居た頃だ」
「兄さんは本当に大王が好きなんだな」
「そりゃま、親父だしな。アイツ、いなかったら俺、今、ここに居たかどうか解らねぇし。…ひとの親みてぇに俺を子のように愛してくれたのは、アイツが初めてだったからな。それがなかったら、お前のことを愛せたかどうか解んねぇや」
「………」
「だから、親父には感謝してんだよ」
プロイセンはふっと赤を緩め、傍らに寝そべったベルリッツの背を撫でた。
「…好きな季節は?」
「夏。活気があっていいよな。…最近は暑すぎるけどよー」
「異常気象だからな。一層、日本とも他の国とも協議して、エコに励まねば」
「おう。頑張れよ!」
それにドイツは頷いて、広げたままの本を閉じた。
「兄さんの好きな色は?」
「青」
「青?」
「空の色、海の色、マリアの色、親父の目の色、お前の目の色。俺の好きなものは青い色を必ず持ってるから、俺は青が好きだ」
笑った赤を青は眩しいものを見るように見つめ、視線を伏せた。

「最後の質問だ。……あなたの好きなひとは?」

視線を伏せたドイツを見つめ、赤を見開いたプロイセンは体を起こす。小鳥がバランスを崩して、肩から落ちるのをアスターが背で受け止めて、ブラッキーの上に落ちたブランケットをベルリッツが引っ張る。

「…何て、言って欲しいんだよ。ヴェスト?」

ソファーに腰を下ろして、腕を伸ばす。僅かに赤く染まった頬を撫で、プロイセンは笑った。
「…解っているクセに」
その言葉に、フンっと鼻を鳴らして、こちらを睨んでくる青を見やる。
「その言葉、そのままお前に返してやるぜ。解っているクセに」
ドイツの頬をプロイセンは両の手のひらで挟む。回りくどいことをせずともいくらでも、強請られれば望むだけ言ってやるのに。


「お前」


解りきったことだろ?言うまでもない。

 

赤を細めて、口付ければ、青は安心したように目を閉じた。

 

 

 

おわり





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