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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
19 . May
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16 . October


スリーピングビューティーな兄さん。

…最近の更新速度と話のテンションの上がり下がりは何かがぶっ壊れたとしか思えんな。
…ってか、本家の猫たりあのプー猫の傷にごっつ滾った!スー猫の背中で語るぷりにも撃沈しそうだったよ。…ってな訳で、次は猫だ。…多分。







拍手[17回]





一枚の絵画のようだった。

花盛りの庭、ライラックの白い小さな花が風に吹かれて、地に落ちる。白い頬を花が滑り、濃紺の軍服の上には白い花がいくつも落ちている。甘い花の香りに鼻をスンと鳴らして、死人のように眠る青年を見つめ、子どもは暫し息をするのも忘れて、その光景に見入る。名も知らぬ小さな色とりどりの草花が終端を迎えるに至る甘美でいて切ない色を纏う青年に手向けられたように風に揺れる。落ちる花は銀糸に絡み、薄い唇を零れて落ちる。それをどれだけの間、子どもは見つめていただろう。そっと、手を伸ばし、青年の白い頬に落ちた小さな花を払う。手にしていた白詰草で編んだ花冠を銀糸へと飾る。子どもは暫し、それを見つめ、立ち上がるとどこかへと駆けてゆく。青年はただ昏々と深い眠りにあるのか、身じろぎもしない。そこに小さな紫色の菫の花を咥えた小鳥が舞い降りた。小鳥は青年の胸へと飛び、眠る青年の顔を小首を傾げ見入る。そして、その花を落として、またどこかに飛び立った。また、どこからともなくまた、花を咥えて、それを青年の上に落として飛び立っていく。

デイジー、矢車菊、野ばら、タンポポ、桜草、ハルジオン、れんげ、マーガレット、…小さな小さな春の花。

子どもが広げたハンカチに薄いピンク色をしたエリカの小さな花を摘んで戻れば、青年は色とりどりの花に埋もれていた。その上に子どもは手にしていたハンカチを広げる。青年の上に落ちるピンク色の花が雨が降るように青年の髪に、頬に、服に落ちていく。それはとても幻想的で美しかったのだ。

 

 


摘んだエリカの花を包んだハンカチを頭上高くに掲げ、ドイツはそれを広げる。淡い色をしたピンク色の花の雨が降る。庭のライラックの下、プロイセンの伏せた目蓋の上、薄く開いた唇の上に花は落ちる。それに暫し、ドイツは見入る。甘いライラックの香りがして、プロイセンの周りには色とりどりのこの庭には咲かない春の草花が落ちている。ふっと頭上から、ひらりと桜草が一輪落ちてきて、プロイセンの胸の上、伏せられた本の上に落ちる。顔を上げれば、黄色い小鳥が小さく鳴いて、ドイツの肩へと止まった。

「…眠っていれば、兄さんは眠れる森の美女だな」

小鳥が頷くように小さく鳴いた。ドイツはくすりと笑うと小鳥の顎を擽った。それに小鳥は喉を鳴らす。ドイツは庭であの日と同じように無防備な顔を晒して眠るプロイセンを見下ろした。花に埋もれたプロイセンは日頃の喧騒が嘘のように静かで、頬に落ちる睫毛の影や、薄く色づいた唇、僅かに肌蹴た首筋。緑の芝に落ちた銀糸はまるで映画のワンシーンを切り抜いたかのようだ。

 眠れる庭。庭の形をした棺。

百年前と同じ景色を留めた庭。眠るプロイセンの容色にあの日の翳りは無い。寝息すら押し殺すように深く眠ったまま、目を開けないのではないかと、子どもだった自分は思ったのだ。その庭でプロイセンはあの時と同じように眠っている。まるで、童話の深い森、茨の棘に覆われた城で王子を待ち続けたか弱く美しい姫君のように。でもプロイセンは姫君ではない。待つのを嫌う性分だ。眠るのにも直ぐに飽きて、起きて来て、茨など気にすることも無く、自分で棘だらけの蔓を剣で裂いて下界へと降りて来て、「腹が減った。何か食わせろ」と大声で喚きそうだ。

 あなたが目を開けてしまう前に、自分の口付けで目を覚ましてはくれないだろうか。

 あなたに息吹を俺が吹き込みたいのだ。そして、開いた赤い瞳で真っ先に俺を見つめて欲しい。

 ドイツは膝を着く。小鳥が羽ばたき、小さな翼が柔らかな日差しを一瞬遮る。ドイツはプロイセンの花の落ちた唇に触れ、そっと口付けた。

 

 

 


おわり






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