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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
19 . May
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14 . December


踊る兄さんと弟。

社交ダンスには詳しくないので描写はいい加減だ。…突っ込まないでくれると有難い。






拍手[41回]




夜会の席から抜け出して、プロイセンは溜息をひとつ零し、タイを緩める。どうにもこうにもこうも畏まった場所は苦手だ。上辺だけはにこやかに笑みを浮かべ談笑しつつ、水面下は腹の探りあいと来た。これだから、上流階級とか何とかいうヤツはいけ好かねぇんだ。…文句を盛大に垂れ流しつつ、庭のベンチに腰を下ろす。周りに人影はなく、月明かりだけが辺りを照らす。庭は静かで、休むことなくオーケストラの奏でる曲が聴こえるばかり。…かっぱらって来たワインの中身をグラスに注ぎ、丸く円を描いた月を肴に摘みもかっぱらってくればよかったとちびりちびりとこの日ばかりは大盤振る舞いに出された上物のワインを楽しんでいれば、人気のないテラスに誰かが出てきた。人影は誰かを探すように、周囲を見渡し、ベンチで晩酌を洒落こんでいるプロイセンに気付くと、軽々と手すりを飛び越え、こちらに向かって来た。

「兄さん!」

長身の、筋骨逞しい男。月明かりに柔らかく輝く金の髪を撫でつけ、慣れぬ礼服に身を包んだドイツはグラスに口を付けたプロイセンを見下ろし睨む。それにプロイセンは視線を上げた。
「どうしたよ?」
「どうしたもこうしたもない!!挨拶もなしに、パーティーを抜け出さないでくれ!…俺がどれだけ、大変だったか」
抜け出す間際、ちらりと見やったドイツは沢山の令嬢に囲まれ、しどろもどろになっていた。それを上手くあしらえる様になってもらわなければ困ると助け舟も出さずに、放り出してプロイセンは逃げてきた。にわかに説教を垂れ始めたドイツにプロイセンは溜息を返す。それにむすりとドイツは口を曲げた。
「上司主催でお前メインなんだから、俺が居たって仕方ねぇだろ。これから、こういうことも多くなってくるんだからよ。いい加減、慣れろ」
「…っ、慣れるか!…俺はこういうのは苦手なんだ。軍の演習に参加して扱かれるほうが万倍マシだ!」
「まあ、俺もそっちの方がお好みだけどな。一応、社交なんだ。女ひとりぐらい口説いて、ベッドに誘うぐらいのことが出来ねぇとお前、周りに馬鹿にされるぞ?」
「馬鹿にされて結構だ。…苦手なんだ。どうしたらいいのか解らん」
ぶすりと言ったドイツが溜息を吐く。それをプロイセンは片眉を上げて、大げさに腕を広げた。
「簡単だろ。美しいお嬢さん、俺と踊って頂けませんか…って、膝折って、手の甲に口付けてよ。頷いてくれたらその手を取って、踊るだけじゃねぇか。その後はタイミング見計らって、場を抜け出して、空いた部屋に連れ込んで朝まで過ごす。…お前みたいなイイ男に誘われて断る女もいないだろ。少しはそう言うのも勉強して来いよ」
ドイツの手を取り、口付けて見せ、諭すようにそう言えば、ひくりとドイツの眉が上がった。
「…恋人を前にして、よくもまあ、兄さんはそんな軽薄なことが言えるな」
「今の俺はお前の恋人じゃなくて、お兄様だからな。…ってか、付き合いってのはそんなもんなんだよ。好みの女ぐらいいただろ?」
兄と弟、男同士、昔も今も変わらない世界の禁忌を二つ破って、恋人同士。それを今更、悔いたりもしないが兄としても愛しているが故に、この世界では常識な当り前のことを弟に望む。自分以外の者を愛せと。…プロイセンはドイツを見やる。ドイツは眉間に深く皺を刻み、プロイセンを見つめた。
「兄さんは本気でそう、俺に言ってるのか?」
「女のひとりやふたり、抱けなくてどうする?より取り見取りだろうが、一回、遊んでもらえ」
真っ直ぐ過ぎて痛い青から視線を逸らし、プロイセンはグラスにワインを注ぐ。そのグラスを奪われる。それを抗議するように睨めば、ドイツはそのグラスのワインを一気に飲み干した。
「…あなたは今夜、そうするつもりなのか?」
叩きつけるようにベンチにグラスを置いたドイツにプロイセンは小さく息を吐いた。
「…悪くねぇかもな」
それに青が怒気を帯びるのを承知で零せば、案の定、青はカッと血を昇らせた。
「俺は例えそれが付き合いでも何でも好きでもない奴なんか、抱きたくもない。ましてや、あなたがその気なら、俺は全力で阻止させてもらう!」
本気で言っているのだから、若いとは恐ろしい。ドイツには何れは適当な女を宛がって、女の良さを勉強させるつもりでいたが、どうにもこうにも手遅れなようだ。元より、ひとつのことに集中するとドイツは周りが見えなくなる。若干潔癖症なきらいがあるのは知ってはいたが…。世間は狭くはない。寧ろ、広い。自分に固執する必要などないのだ。
「女も悪くねぇぞ。柔らかいし、気持ちいいし、知れば、お前の考え方も変わると思うぜ?」
「知りたくもないな。俺はあなたの硬い体に十分満足している」
ドイツの言葉にプロイセンは鼻白む。…ああ、何を間違ったのか。この弟は自分を好きだと言う。繰り返される言葉に絆されたこちらも悪いが、まさか、こうまで好かれているとは思いもしなかった。惚れた腫れたも一時的なものだと、放っておいたツケが回った。
「知らねぇから、比較出来ねぇんだよ。俺の体なんか、そこらへんの娼婦以下だぜ。触るところもなければ、濡れる穴もねぇ。そんな身体弄って、何が楽しい?若い女を抱けよ。柔らかくて気持ちがいいし、愛撫してやれば可愛い声と顔でねだって来る。そして、気持ち良い。言うことねぇぞ」
冷めた視線で青を見上げれば、青は憤ることもなく赤を見下ろした。
「俺はあなたの苦痛を堪え、俺を受け入れて喘ぐ顔が好きなんだ。俺に貫かれて達したあなたがどんな顔をしているのか、あなたは知らないだろう?あなたの体が俺の体に与える快楽に勝るものがあるとは思えないな」
ドイツの言葉にプロイセンはどんな顔をすればいいのか解らず、手にしていたワインの瓶を煽る。ふーっと息を吐き、口元を拭おうと腕を持ち上げれば、その腕を掴まれ、口付けられる。熱い舌が唇を舐め、顎を落ちていく赤を舐めて離れた。
「…お兄様はお前みたいな変態を弟に持った覚えはねぇぞ」
見上げればすっかり情欲の灯った色をして、青はどう言えばこちらが落ちてくるか間合いを計るように見つめている。…こういうことばかりが上手くなる。それを本日ご来場の令嬢にかましてくれりゃ一発で陥落するだろうに、プロイセンは思う。
「そうか。でも、仕方がないな。これが、俺だ。諦めて、今夜は俺に付き合ってもらえないだろうか?」
昔は人の顔色ばかり伺っていたくせに、プロイセンから自分に色んなものが与えられるものは当然で、プロイセン自身も自分に与えられて当然だと、ドイツはいつの間にか開き直ってしまった。甘やかしてきたツケは大きく、自分から離れることが出来ない程には溺愛しているだけに本当に性質が悪い。プロイセンはドイツを睨む。睨まれたドイツは涼しい顔でプロイセンを見下ろした。…全然、全く、可愛くない。最近は生意気な口ばかり叩くようになってきた。…プロイセンはぐいっと口元を拭うと僅かに視線を上げ、純潔を捨て修羅場を潜り抜けてきた娼婦のような顔をして微笑した。当の昔に純真さは失った。利用出来るものは利用して伸し上がってきた。だが、プライドを捨てたつもりはない。それは身内であろうが、同じこと。欲しいと言うならば相応の見返りを。自分でも持て余すほどのこの高慢なプライドを満足させる言葉のひとつやふたつ寄越せと文句を言ったって、罰は当たるまい。

「ハン!付き合ってもらいたきゃ口説いてみろよ。上手に出来たらベッドまで一緒に行って、朝まで過ごしてやるぜ?」

上から目線で悪態を吐けば、ドイツはその場に膝を折った。恭しく頭を垂れ、プロイセンの手を取り、その甲に口付け、視線を上げた。

「Meine Liebe 俺と踊って頂けませんか?」
「踊ってやるよ。…でも、足踏んだらその場で蹴飛して、俺は帰るからな」
「そんな粗相はしない」

ぐいっと腕を掴まれ引き寄せられる。密着する腰。絡まる指先。プロイセンはドイツの肩へと手のひらを置いて、視線を上げた。遠くに聴こえるオーケストラの曲はワルツへと変わる。プロイセンは奇襲を掛ける様に足を踏み出す。それに合わせる様にドイツがステップを踏んだ。リードを奪おうとプロイセンが足を踏み出せばそれに合わせてドイツは足を引き、回転する。強引なターンにバランスを崩せば、ぐっと引き寄せられた腰と腕。更に密着する身体。撓る背に大きな手のひらが添えられる。
「大丈夫か?」
「…お前、ムカつく」
「褒め言葉だな」
「褒めてねぇ!」
リードを奪うことが出来ず舌打ちし、プロイセンはドイツのリードでステップを踏む。曲に合わせて、ドイツのリードは意外にも柔らかい。それに合わせて、主導権を奪う機会を狙いながら、プロイセンは口を開いた。
「結構、お前、踊れるじゃねぇかよ」
「オーストリアの所にいるとき、叩き込まれた」
「ふーん。坊ちゃん仕込みか」
「ああ。それよりも、意外だ」
「何が?」
くるりと芝の上を回る。力を抜いて身を任せば、翻る燕尾服の先が美しい弧を描いた。
「あなたが踊れるとは思わなかった」
揶揄を含んだ言葉に、思い切りプロイセンは眉を寄せた。
「坊ちゃんに出来て、俺様に出来ねぇことがある訳ねぇだろ!」
がっと力を込めて、半歩下がった足でターンする。それを読んだか、苦にすることもなくドイツは動きを合わせた。
「…そうだな。あなたは俺と違って器用だからな。そつなく何でもこなしてしまう」
Eins、zwei、drei…リズムに合わせて回る。

「だから、」

ターン。腰を抱かれ、足が大きく開き、体を倒され背が撓る。
「俺の知らないところで、あなたが俺の知らない誰かと踊ったのかと想像しただけで腹が立つ」
覗き込む青。それを赤は見つめ返す。
「腹が立つ?俺が御令嬢相手に最後に踊ったのは、二百年くらい前だぜ?」
「それでも、ダンスの相手はあなたの腕を朝まで独占したのだろう?」
許せないのはそこか。…ったく、この恋人は嫉妬深く、独占欲も強い。束縛し、檻の中に繋いでおきたいと平気でベッドの中でドイツは口にする。その束縛が困ったことにプロイセンは嫌いではない。
「ベッドまでは行ってねぇよ。上司の奥方になる御令嬢だったからな」
ドイツの嫉妬がその独占欲が心地が良い。…知りもしない会ったことのない、ましては遠く彼岸の向こう側の住人となった相手にもこいつは嫉妬するのか。…心の狭い奴だ。そう思いながらも、愉快で仕方がない。プロイセンは口端を引き上げた。


「ベッドの上で、お前しか知らないダンスを踊ってやろうか?」


頬を撫でて、垂らしこむような微笑を浮かべれば、それに一瞬、青が見開くのをプロイセンは笑う。ドイツは青を細め、プロイセンを引き寄せ、耳朶に囁く。

「是非」

夜は長く、朝までは遠い。ワインの香りの残る唇を重ね合わせ、赤は落ちた。

 

 

 


オワレ






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