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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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27 . December



アレで終わるには余りもあんまりだったので、最終話。

最終夜 199x年冬編






拍手[17回]





 199x年冬…。

 

「…今日は本当、賑やかだったな」
「…ああ」

 しんと静まり返った室内は空になった大皿とワインとビールの空き瓶に短くなったキャンドルの炎がゆらゆらと揺れている。

先までこの場にはイベリコ豚の生ハムの塊ひとつと手製のパエリアを土産にしたスペインと手製のブッシュ・ド・ノエルにワインを手にしたフランスと、手作りのザッハトルテとワインを手にしたオーストリアとスープ鍋を手にしたハンガリーにピザとパスタを手にしたイタリア、ちらし寿司を重箱に詰めて持って来た日本と、各国の特色ある料理とデザート、そしてドイツが腕を振るった料理と多国籍なメニューが並び、ワインを飲み、ビールを飲んでこの日を祝った。このときばかりは国同士の問題だとか、軋轢だとか全て棚上げして大騒ぎし、脱ぎ始めたフランスを罵りながらピアノを気持ちよく掻き鳴らし始めたオーストリアの曲に合わせるようにスペインが持ち込んだギターを鳴らし、イタリアとハンガリーが歌い始める。それにプロイセンは拍手喝采を送り、それを当時最新鋭の8ミリカメラでビデオ撮影を始めた日本にドイツが色々と質問をしたりと、それは賑やかな夜だった。そんな客たちも先にオーストリアが酔いつぶれ、それをドイツが客室のベッドに送って、まだ騒ぎ足りなさそうなフランスとスペインを客室に押し込んで、近くにホテルを取ったっからと慎ましやかな日本が辞して、イタリアは素っ裸になるとドイツのベッドへダイブしてしまった。それにドイツが溜息交じりに眉を寄せたのを見やり、プロイセンはハンガリーを駅まで送った。

「泊まっていけばいいのによ」
「野郎ばっかの家に泊まれる訳ないでしょ」
「お前を襲う物好きはいねぇと思うが」
「…アンタ、フライパンで殴られたい?」
「それは勘弁してくれ!!」
すっと身構えたハンガリーにプロイセンは顔色を変え、後退さる。それにハンガリーは笑うとひらりとコートの裾を踊らせた。
「…元気そうで、ほっとっしたわ」
「…まあ、お陰様で。…お前のとこはどうなんだ?」
「ぼちぼちってとこかしら。…まあ、凄く自由になった気がするわ。…アンタはどうなのよ?暫く、入院してたって訊いたけど?」
「…ま、流石にしんどくってな。壊れかけだったからな。まあ、今はドイツのお陰で何とか息が出来てるって感じだな」
「…そう。でもまあ、最後に会ったときより顔色良くなっててほっとしたわ。弱ってるアンタなんて殴り甲斐ないし」
「殴り甲斐って、何だ?俺はお前のサンドバックか何かかよ…」
溜息混じりに呟いて、プロイセンはハンガリーを見やった。
「…ありがとな」
「何が?」
「…まあ、色々。お前のお陰で思ってたよりも早く、ドイツに返せた」
夏のピクニックが壁の崩壊を早めた。その所為で自分の体は弱りガタがきたが、いっそ、それも本望だった。望んできた願いが叶うならば。
「…返せたとか過去形で言わないで。これから、アンタも一緒にこの国を支えていくのよ。ドイツはそのつもりでしょ?…アンタは早く楽になりたいのかもしれないけど、私はアンタがいなくなったりしたら、一生許さないわよ」
「……楽になりてぇなんて、思ってねぇよ。ドイツに必要とされなくなればいいって思ってるだけだ」
「…アンタって、本当にバカよね。そんな日が来る訳ないじゃない。アンタが帰ってきたから今日、皆、集まって来たのよ。アンタ、今日のドイツの顔を見た?凄く、幸せだって顔してたわ」
「…………」
「あの子の幸せの中心はいつもプロイセン、アンタだったわ。それは、アンタも同じでしょ。大体、いつまで後ろ向きにモノ考えてんのよ。らしくないわよ」
「…俺、後ろ向きか?」
「気付いてない辺りが重症よね。猪突猛進がアンタでしょうが」
「ひでぇ言われようだな」
「その通りでしょ。先はまだまだこれからも長いんだから、今を楽しまないと損するわよ」
「…そう、だな」
まったく、この幼馴染みには敵いそうにない。ホームまで見送ると言ったが、改札で断られ、ハンガリーと別れ、プロイセンは帰途に着く。家に戻れば、ドイツがソファに凭れ、小さな箱からカードを取り出して、眺めていた。プロイセンに気付くと、ドイツは箱の蓋を閉めた。

「お帰り」

「ただいま。何、見てたんだ?」
「ザクセンやブランデンブルクからのクリスマスカードだ。…列車は出てたのか?客室は余ってるし、ハンガリーも泊まって行ってくれて構わなかったんだが…」
「まあ、辛うじて動いてたな。明日は上司んとこの主催のパーティーに呼ばれてるんだとよ。…何か、飲むもんあるか?体が外に出たら冷えてよ」
「今、グリューワインを作ろう。あなたは暖炉に当たっててくれ」
ひざ掛けにしていたショールを巻きつけられ、ソファに座らされる。キッチンに入って行くドイツの背中を見やり、プロイセンは鼻を啜った。
「…そんな俺の都合よく、考えていいのかよ…」
小さく呟く。今や、自分はドイツにとって重荷にしかならないと解っているのに、それでも、ドイツが自分を望んでいるのかプロイセンには自信がなかった。プロイセンは靴を脱いで、ソファーの上、足を引き上げ膝を抱く。踵が小箱に当たり、箱が落ちる。床にカードが散らばるのをプロイセンはしまったという顔をして、カードを掻き集める。その中に見覚えのある一枚のポストカードを目にし、プロイセンは拾い上げた。

 

「liebe Ludwig

Außerdem bete ich ein Tag lang, um einer das Kommen der ganzen Zeit davon weg weit zu werden.

Gutes Weihnachten.」

 

雑貨屋で目に付いた聖母マリアが微笑するステンドグラスのフォトグラフ。書き殴った文字。…ああ、ヤンは届けてくれたのか。これは、ドイツの手に届いたのか。…これを読んで、ドイツはどう思っただろう。裏切り者となった自分が宛てたメッセージを。


「…プロイセン?」


マグカップを手にしたドイツに呼ばれ、プロイセンは振り返る。プロイセンの手にあるポストカードっを見やり、ドイツはマグカップをテーブルへと下ろした。

「…ドイツ、これ…」
「何年前かのクリスマスにヤンと言う老人が俺に届けてくれた。…最高のクリスマスプレゼントだ。…あなたがいない時間が長くなれば長くなるほど、俺は心が折れそうだった。その時に、このカードの言葉は俺をいつだって支えてくれた。…また、あなたとこうやって一緒に暮らせる。…それが、嬉しくて幸せで…、本当はこんな幸せでいいはずがないのに…」
同じことを思っていたのか。幸せになってはいけないと。…俺の幸せはドイツの幸せだ。俺はドイツの望みを叶えてやりたい。

「…ヴェスト、ルッツ、お前が許してくれるなら、昔みたいにお前をそう呼びたいんだ」

金の髪を撫でる。青く潤んだ瞳は幼い頃と変わらず、自分を映す。一粒、涙が頬を伝って落ちる。
「…うん。…また、あなたを兄さんと呼んでも?」
「ああ。…他人行儀じゃ、寂しいからな。ルッツ」
涙を指先で拭って、その頬に昔のように口付ける。ドイツはそれに青を見開いて、照れ臭そうに微笑うと頬をすり寄せ、プロイセンをぎこちなくそっと抱き締めた。


「…どうか、ずっと来年もその次も、ずっと、一緒にいて欲しい」
「…ああ。お前が望むならずっと…」


窓の外には粉雪が舞う。キャンドルの柔らかな明かりがふたりを照らす。プロイセンはこの幸せを噛み締めるようにドイツの背中に腕を回し、目を閉じた。

 

 

 

Fröhliche Weihnachten gab mit Ihnen aus






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