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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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28 . December


ねこたりあ

シュヴァルツ 独猫
ヴァイス 普猫

捏造名前設定。

主人に嫉妬する猫と、猫に嫉妬する主人と。







拍手[21回]




兄さんは、ギルベルトと言う主人をとっても気に入っている。…と、言うか似ているから気が合うのだと思う。俺もこの主人のことが嫌いではないし、寧ろ、好きな部類に入る。

 兄さんはギルベルトが帰ってくると真っ先に駆け寄って、その腕の中に納まる。ギルベルトは撫でる触る、そして甘えられるのが大好きな人間だ。嬉しそうに兄さんの腹やら背中を撫で回しては「触り心地が俺好み」とうっとりとした表情で兄さんの顎を掻く。撫で回される兄さんはと言うと滅多に上げない甘えた可愛い声を出して、ギルベルトの行為を許している。…かつて、俺と兄さんはこの主人に助けられるまで野良猫だった。兄さんはこの地域一帯を仕切るボス猫で、誰にも懐かなかったし、俺以外の猫は寄せつけないところがあった。それが、今ではこの変わりようだ。それにがっかりしたとか、幻滅した訳ではない。そんなことある筈がない。飼い猫になろうが兄さんは相変わらず強いし、美しい。この一帯を荒らす余所者が入ってくることは絶対に許さなかったし、縄張りのパトロールは毎日欠かしたことがない。相変わらず主人以外の人間にはいい顔はしないが、困っている他の猫達にも優しくなり、相談事に乗ってやったりするようになった。それに、どういう訳か子猫達には懐かれて、一緒になって遊びまわっていることがあるほど、兄さんは面倒見がいい。前よりずっと、いいボスになった。兄さんを良く思わない猫もいるが、大半の猫達は兄さんに好意的だ。…つまり、俺が何を言いたいのかと言うと、この状況が面白くないのだ。俺の前では兄さんは決してあんな甘い声は上げてはくれないし、行き過ぎれば長く美しい尾で叩かれる。それなのに、容易くあの主人の前は甘い声で「もっと撫でろ!」と、鳴くのだ。

「…また、兄さんはヴァイスを弄り回して…」

頭上から溜息が降ってくる。ルートヴィッヒはギルベルトの弟で、俺達の主人のひとりでもある。ルートヴィッヒはギルベルトが兄さんを構い始めると、放置されるのでそれを少し苦々しく思っているらしい。…俺とこの主人は立場が認めたくはないが似ていると思う。もうひとりの主人を差し置いて、ギルベルトを独占占領した兄さんはちらりと俺とルートヴィッヒに視線をくれた。

「にゃあ?(何、見てんだよ?)」
「にゃあ(別に、見てない)」
「にゃ(嘘つけ)にゃにゃ(お前もギルに甘えたいんだろ?甘えりゃいいじゃん)」
「にゃ!(違う!)」

本当に鈍いひとだ。頭にくる。苦々しい思いで睨みつけてやると兄さんはニヤニヤと性質の悪い笑みを浮かべ、上機嫌に長い尾を振った。その兄さんの頭から背中、尻を撫で、尾をするりとギルベルトの手のひらが撫でる。それに兄さんは赤い目を細め、喉を鳴らした。…っ、兄さんの馬鹿!!そこを触ってもいいのは俺だけのはずだろう!!

「シュヴァルツ、こっちに来いよ。撫でてやるぜ?」

憤慨してる俺に気付いたのか、にっこりと笑んだギルベルトが俺を手招く。一瞬、どうしようかと逡巡するが、俺はこの主人が嫌いではないし、寧ろ、好きだ。誘うように招かれる指先にふらふらと脚が勝手に動いて、ソファに飛び乗り、ギルベルトの膝に前足を掛ければ、ふわりと体が浮いた。何事だと背後を見上げれば、怖い顔をしたルートヴィッヒ。俺を抱き上げ、ルートヴィッヒはギルベルトの隣に腰を下ろした。それを兄さんは面白そうに見上げ、ギルベルトを見やった。

「何だよ?」
「…別に」

仕事から帰って来て、いつもの出迎えもキスもなく、それをルートヴィッヒは不満に思っているらしい。ギルベルトは兄さんを構うのに夢中なようだから、日課を忘れてしまったのだろう。それを不満に思いつつも口に出せないらしいルートヴィッヒの指が俺の背中をぎこちなく撫でる。それに甘んじる。同類のよしみだ。俺はギルベルト同様、もうひとりの主人であるルートヴィッヒが嫌いではない。俺と同じで不器用なところが似ていると思うし、何となく応援してやりたいような気持ちになるのだ。

「…別にねぇ。…ま、いいけど」

ギルベルトは赤い目を細め、口元を僅かに緩ませた。ギルベルトがこういう表情をするとき、それは袋小路に鼠を追い詰めたときの高揚感を抑えるような顔だ。捕食者の顔とでも言えばいいのか。俺は今、傍観者なのでそれが解るが、ルートヴィッヒはまったく気付いていない。時折、ギルベルトはこうやって、ルートヴィッヒを遠まわしに揶揄ったりする。ちょっと屈折した愛情表現らしい。そういうところが怖いほどに、兄さんに似ている。…ルートヴィッヒは視線を上げ、ギルベルトを見やった。

「お前も、撫でてやろうか?それとも…」

ギルベルトは赤を細めたまま、兄さんの顎を擽っていた指先でルートヴィッヒの顎を撫でた。ルートヴィッヒはその指先から逃げるように視線を伏せた。それでも、僅かに期待を込めたように動く青に赤が笑う。爪を掛けられた鼠はもはや逃げ出すことも出来ない。指先がルートヴィッヒの頬に添えられる。

 視界が翳り、一瞬、何も見えなくなった俺の鼻先を柔らかい何かが掠める。

それに気を取られる。ゆらりと目の前で揺れた純白の尾。ギルベルトの膝を降り、長い尾を揺らし兄さんは庭へと出て行く。一瞬だけ、こちらを振り返り、ギルベルト同様、性質の悪い笑みを浮かべた兄さんの後を俺は躊躇うことなく追った。









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