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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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04 . January


「帰らんといて!もう、ここに住めばええやん!!」
「…無茶、言うな」

久方ぶりに西普。
相変わらずな感じに進展してない。








拍手[22回]



 
 
「…ほんまに帰ってしまうん?」
 
シャツを掴んで離さないスペインにプロイセンは何度目になるか解らない溜息を吐いた。
 
 
 
 滞在もずるずると延びに延びて、一週間が二週間、二週間が三週間、…気がつけば一ヶ月。後三日で帰ってこなければ、無理矢理に「迎えに行く!」とプロイセンの煮え切らない言葉に流石に業を煮やしたドイツが剣呑な気配を受話器越しにも滲ませて言うので、外交問題になっても困るしと帰り支度を始めたのだが、先からこの調子でスペインが邪魔をするので帰り支度が一向に進まない。
「帰る」
「えー、もっとおったらええやん」
「帰る」
「帰らんといて!お前、いなくなったら寂しなるやんか」
シャツをぎゅうっと掴んで上目遣いに俺を見るな。絆されそうになるだろうが。…プロイセンはふいっと顔を背ける。
「帰る。トマトの収穫も終わったしな。それに俺の仕事も溜まってきたみたいだしよ」
「そんなん、ドイツに任せればええやん!」
「何言ってんだ。ドイツの手が回らない部分を俺がフォローしてんだよ。話を聞かない連中と自己主張の激しい連中相手の外交で忙しくて、内政には手が回せねぇみたいだしな。遊んでた分、楽させてやらねぇと」
弟は口には出さなかったが、端々に疲れが見えた。今まで半分は遊んでいたのだから弟に楽をさせるべく、帰宅後はデスクワークに励まねばなるまい。
「…そっか。なら、しゃあないな。…また、遊びに来てくれる?」
「ああ」
「約束やで」
「ああ」
じりじりと距離を詰めて、スペインはぺたりとプロイセンの背中に張り付く。それに一瞬びくりと肩が竦むが、すぐに力が抜けて行くのをスペインは確認し、腰に手を回した。
「何だよ?」
「帰ってしまう前に、プーちゃん堪能しとこう思て」
「は?」
それに視線をくれるも構えば構うだけ、帰り支度に支障を来すので、プロイセンはスペインをほっとくことにして、ベッドの上に広げた下着やら着替えやらをバックに詰め込んでいく。たったそれだけのことなのに二時間も時間を要してしまった。
 
「よし」
 
バックのジッパーを上げて、立ち上がろうとするもスペインの腕が腰に回っていることに気づき、プロイセンは眉を上げた。
「…ほら、離せ」
「いやや」
「嫌じゃねぇよ。お前は子どもか」
無理矢理解こうにもぎゅうっと回った腕は解けない。意固地になって解こうと指先に力を込めれば、視界が回転する。
「うお!?」
ベッドにダイブさせられたのだと気づくのに数秒時間を要し、プロイセンは赤を瞬く。見下ろすように緑が落ちた。
「…帰したくあらへん」
真顔でそう見つめてくるスペインにプロイセンは困って息を吐いた。
「…んなコト、言われてもよ…。帰らないと、ヴェストも心配してるしだな…」
「…解ってるよ。でもな、帰って欲しくないねん。お前を俺のもんにしたい」
頬を撫でた指先が髪を撫でる。荒れた手のひらが頬を撫でて、じっと緑が赤を見下ろす。赤は居心地悪げに視線を伏せた。
「…気長にやるんじゃなかったのかよ?」
「悠長にやってたら、他の奴に持ってかれるやろ」
「…真顔で俺を口説いてくる馬鹿はお前ぐらいだろ」
「解らへんやん」
スペインは口を曲げた。
 
「…離れたくない。お前を自分のもんにしたい」
 
本当にどうかしてると思う。好きなものはいつまでも手元に置いて置きたいし、そばにいて、ずっと可愛がりたいと思う。独占欲と執着を露わに「愛してる」とか「好き」だとか、「守ってやる」とか言葉を尽くしても、檻で囲っても無駄なことだと、引き留められはしないのだ。独りよがりなそれにうんざりして、皆、逃げていってしまった。それ以外の愛を得る方法など、他に自分は知りはしないのだ。
 
「…お前って、あっさりしてるようで、人一倍執着心強いよな」
 
組み敷かれた赤は思いのほか冷静で、色を変えた緑を見つめた。
 
「…もう、何も奪われたくないからや」
 
得たものは指の隙間からするすると抜け落ちて、周りに居た者はいつの間にか、ひとりが去り、ふたりが去り、誰も居なくなっていた。苦労して遠方で手に入れた財も横から奪われ、失った。そうなる前にこの手に掴まなければ、誰にも奪われないように失くさないように。強迫される。
「…なあ、俺のもんになって?」
手首を掴んだ指先に力が籠もる。それにプロイセンは息を吐く。
「お前のものになるのは嫌だ」
その言葉に一層、拘束がきつくなる。プロイセンは表情を変えることなく、スペインを見つめた。
「お前が俺に好きになって欲しい、俺と一緒にいたいって言うんだったら、お前のことは嫌いじゃねぇし、寧ろ、好きかも…しれねぇし…、お前が思ってるように俺がそう思えるかは解らねぇけど、お前のことをそう思うように努力する。でも、お前が俺をモノか何かと勘違いしてんだったら俺はモノじゃねぇぞ。お前の所有物になんかならねぇ」
淡々と真っ直ぐに見つめて来る赤に、スペインははっと息を吐く。それと同時に拘束が緩む。指の痕がくっきりと残るその手をプロイセンは持ち上げ、スペインの頬を撫でた。
「…好きになりたいのに、嫌いになるようなこと言うなよ」
その言葉にスペインは口元を覆った。
「…っ、ごめん、俺…」
自分のことしか、自分の都合しか考えていなかった。プロイセンの言葉に我に返り、スペインは気まずげにプロイセンを見やる。プロイセンは気にするでもなく、ふにっとスペインの頬を摘んだ。
「…お前のほっぺた、坊ちゃんより伸びねぇな。…それより、お前の作ったパエリア、暫く食えなくなるから食っときたいんだけどよ」
うにっと引っ張られ、その頬をもう一度撫でられ、スペインはほっとしたように表情を変えた。
 
「作る!作ったる、何でも言ったって!!」
 
がばっと身を起こしたスペインはいつも通りのスペインで。それにプロイセンはほっと息を吐く。長いこと生きていれば、やはり色々とあるのだろう。言葉の端にスペインが今まで自分に見せなかった部分を見てしまった。…知らないことばかりだ。お互いに。上辺だけは解ったつもりになっていて、それでもまだ、深い部分まで知るのは怖いと思う。大事にしたい続いていきたい相手だから尚更。
 
「じゃあ、海老のトマト煮も食いたい」
「まかしとき!市場に買出しに行こか!」
「おう」
 
ベッドを降り、差し出された手を掴む。
 
「他に食いたいものある?ぷーちゃん」
「じゃがいものトルティージャ」
「芋、ホントに好きやんなぁ」
「うっせ!」
 
悪態を返して、プロイセンはスペインの髪を乱暴に撫でるとドアを閉めた。









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