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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
19 . May
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31 . January


普洪に目覚めた。…まあ、前から好きなんですが。

攻臭い姉さんと受臭い普が好きです。尻に敷かれとけばいいんじゃないかな。ガリ男だったら、確実に普は掘られてるに一票を投じたいと思う。






拍手[18回]



 

 こいつは、俺のことを男だと意識してない。
こいつは、私のことを女だと意識してない。


それに、随分と救われてきたのだけれど。

 

 

「何で、お前、俺の膝の間に座る?」
「寒いから。後、微妙に座り心地、悪い」

必要最低限なものしか置いてないアパート。寒さしのぎに蚤市で買った少し古いがペルシャ織りのカーペットを敷いて、尻にはクッション、背にはベッド、体には毛布を巻きつけ、唯一ある暖房器具の前で面白くも無いペーパーバックをプロイセンは広げていた。そのペーパーバックを取り上げ、バスルームから戻ってきたハンガリーがプロイセンの閉じた脚を広げ、腰を下ろす。それに、プロイセンは眉を寄せた。
「座り心地悪いんだったら、隣に座れよ」
「えー、ヤダ。寒い。…頭、拭いて」
「あー、面倒臭ぇ。自分でやれよ」
そう文句を言いつつも、プロイセンはハンガリーの肩に掛かったタオルを手に取り、髪を拭いていく。亜麻色の髪からは柔らかなシャンプーの甘い香りがする。何とも居心地の悪い匂いに尻の穴がむず痒くなり、プロイセンは身じろぎした。
「…ウチも寒いけど、アンタんとこも寒いわね」
「…ま、今夜は今年一番の冷え込みになるらしいし、雪降るって言ってたぜ」
「そう」
丹念に毛先の水分を拭う。程々に湿り気を取って、濡れたタオルを干す為にプロイセンは立ち上がる。天気が悪く室内に干した洗濯物が下がる一画にはハンガリーの下着まで干してあって、それから慌ててプロイセンは目を逸らす。
(いい加減、慣れなさいよ)
十本の指では数え切れないほどに、ベッドの中であれやこれやしてきたと言うのに、今だ変なところでプロイセンは狼狽する。ハンガリーが「女」だと言うことを思い出して、ひとりで焦る。傍から見てかなり滑稽だ。狼狽を隠すようにわざとらしい咳払いをひとつして、プロイセンはハンガリーに視線を投げた。
「…コーヒー淹れるけど、飲むか?」
「いらない。アンタんとこのコーヒー不味いもん」
「うっせ!」
キッチンに入って行くプロイセンを見やり、ハンガリーは膝を立てる。
(…馬鹿よね、ホント)
狡賢いのが売りの俺様のクセにお人好しだ。寂しくて仕方がなくて、その寂しさを埋めるために幼馴染みだと言うことをこちらの都合のいいように利用しているのに、あいつはそれを非難したりはしない。好きにしたらいいと気付かないフリをしてくれる。そのやさしさが今は心地が良かった。…オーストリアと引き裂かれたとき、傍にいてくれたのはあいつだった。ロシアに対して苛立ちを隠せず、攻撃的だった私を何かとフォローしてくれたし、八つ当たりも「仕方がねぇな」とその言葉で許された。昔はそれこそ「相棒」みたいな感じで、本当に背中合わせてずっと一緒にいるんだなんんて思ってた。年頃も近くてずっと一緒にいたからか、気を使わなくても良かったし、言わずとも通じ合えた。喧嘩もよくしたけれど、気がつくとあの負けず嫌いで絶対に折れなかったあいつが折れるようになっていた。私が気付くよりも早く、「女」だとあいつは知っていたのだ。喧嘩して譲らなかったのは、継承戦争のときだけ。「大事なところを返せ!」と城に乗り込んだ私に、あいつは最初は驚いていたが、言い募る私に「何で、オーストリアじゃなく、てめぇがそれを言うんだ?帰れ!!」と怒鳴ったあいつの目は悲しそうで、怒気を孕んでいて、初めて、あいつを私は怖いと思ったのだ。腕を掴まれ、そのまま引きずられるように馬に乗せられ、国境近くで放り出された。その間、あいつは一度も視線を合わせず、言葉も発しなかった。
「二度とこんな馬鹿なマネはすんな。お前はマジャルだろ。オーストリアじゃねぇだろうが」
その言葉で目が覚めた。自分はなんて馬鹿なことをしたのかと。自分が「国」だと言うことを忘れてしまっていたのだ。
(…何で、こんな昔のことを思い出すかなぁ)
きっと寒いからだ。羽織っていた薄いショールを手繰り寄せると、プロイセンがマグを手に戻ってきて、ハンガリーの隣にもうひとつのクッションを置いて、腰を下ろした。それに何だかむっとして、ハンガリーはプロイセンを睨んだ。
「…アンタがいないと、背中寒いんだけど?」
「は?」
マグカップを手にプロイセンは赤い目を瞬く。睨まれる理由が解らない。
「寒い」
それに、プロイセンは溜息を吐いて立ち上がると、ハンガリーの背後にすとんと腰を下ろした。
「…寒いなら毛布でも被ればいいだろ」
ぶつぶつ言いつつ、プロイセンは左手のカップに口を付ける。そのカップからはコーヒーの匂いはしない。
「何、飲んでるの?」
「あ?、ホットミルク。牛乳の賞味期限が今日までだった。…飲むか?」
「…飲む」
「熱いから気をつけろよ」
差し出されたカップを受け取って、啜る。蜂蜜が入ってるのか甘い。じんと温かさと甘さにハンガリーが息を吐けば、プロイセンは毛布を引き寄せ羽織る。すっぽりとハンガリーの体を覆うと小さく息を吐いた。
「…俺とお前の今の関係って、何だろう?」
「は?」
「敵じゃねぇし、味方でもねぇし」
「そんなこと考えてんの?」
「あ?…何か、立ち位置決まってねぇと居心地悪いだろうが、…大体、お前、オーストリアが好きなんだろ?」
今更、それを言うか。…ハンガリーは溜息を吐いた。
「好きよ」
「だったら、何で、」
「何でって、会えないから。アンタだって、会えないから、私で埋めてんでしょ?」
それにプロイセンが押し黙る。ハンガリーはカップを置くと、身を捩った。
「何だかんだ言いつつ、アンタが私を許すから、付け上がるのよ」
「…俺の所為かよ」
「だって、そういうことにしておけば、気が楽じゃない。アンタもあたしの所為にしときなさいよ。お互いが悪いってことにしとけばさ、良心だって痛まないじゃない?アンタ以外に私を慰められる奴もいないし、私以外にアンタを慰められる奴もいないでしょ?」
秘密を共有してきた長い付き合いだから。オーストリアには知られたくないことをプロイセンは知っている。それを決して、一度たりとも誰にも話さないのは自分に対して、プロイセンが罪悪感を感じているから。その罪悪感を巧みに自分は利用している。まるで、人類最初の悪女のようだ。
「…お前だから痛むっての」
ああ、まったく、この幼馴染みは馬鹿だ。利用できるものは何だって利用して、伸し上がってきたクセに詰めが甘いと言うか、一度、心を許した者にはとことん甘く、弱い。何度、こちらが手痛く裏切ったとしても簡単に許してしまうのだろう。
「…アンタって、救いようのない馬鹿だわ」
「な?!」
開いた口に噛み付くようにキスをすれば、甘いミルクの味。初恋でも何でもない、子どもだった時代が終わる前の甘ったるい感傷はこんな味がするのかもしれない。

「アンタのことは好きじゃないけど、嫌いじゃないわ」
「…何だよ、それ」
「アンタだって、私のこと好きでもなければ嫌いでもないでしょう?」

頬を撫でる。…アンタの一番は昔は私だった。でも、今は違う。私だって、昔はアンタが一番だったけれど、今は違う。それでもと、私は我儘だからそれに嫉妬してるのだと言ったら、どんな顔をするのだろう?…ってか、キスぐらいで狼狽してんじゃないわよ!この馬鹿っ!!

「…お前が男だったら良かったのに」

そうだったら、きっとこんな関係にはならなかっただろうけれど、私は「女」だったことをもう後悔したりはしない。アンタが私の前だけ素になるように、アンタの前では私は飾らない自分に戻れる。

「男だったら、アンタ、私に掘られてるわよ?」
「…それは、勘弁しろよ」

でもまあ、アンタがこんなだから、私は「私」でいられるのかもしれない。


プロイセンの体を抱いてきた腕は慣れることなどなくぎこちなく緊張していて、あの頃と何一つ変わらず、ありのままの「マジャル」の傍にいた「マリア」のままだった。

 

 

 






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