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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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06 . July




 そのはちの後日談的な。
…ピアノの調律やら何やらはネットで拾ってきたので、くれぐれも真に受けないように。
捏造妄想200%ですよ。突っ込んではいけないぜ。



トルテとじいちゃんとピアニスト。Ⅱ
演奏会が近づいてきました。








拍手[48回]





ご無沙汰してます。コンビニ店員のバイトしている者です。俺の報告待ってる奴なんかいないと思うが、漸く大学生活にも慣れ、時間が出来たので、前に話したじいちゃんと貴族さんの後日談を書かせてくれ。

 

 貴族さんは知る人ぞ知る凄い有名なピアニストなんだそうだ。親父が言ってた。そんなひとがじいちゃんの知り合いで生で演奏が聴けたことに親父は感動して泣いてて、俺は吃驚したよ。兄貴も何やら感銘を受けたらしいが、こっちは母ちゃんじゃないと表情が読めないくらいの無表情なのだが、母ちゃんが言うには凄い興奮してたそうだ。…貴族さんは殆ど国外の演奏会には出ない、国内のコンサートホールにたまに出演するくらいらしいで本当に知ってる人しか知らないピアニストらしい。そんな貴族さんがわざわざ、日本で開かれる演奏会に参加しようと思ったのは、じいちゃんの生まれた国だってことと、日本のピアノメーカーとベーゼンドルファー社のエピソードが強く心に残ったからなんだそうだ。

 ばあちゃんが所有するピアノ、ベーゼンドルファーはオーストリアにある老舗のピアノメーカーでかのリストの激しいタッチにも耐え抜いた製造元として名高く、有名なピアニストはこぞってこのメーカーのピアノを重用し、世界各国のピアニストに今も愛されている年間の製造台数が三百五十台程のピアノメーカーだ。(現在まで同社が製造したピアノは48,000台。世界規模で知られているピアノメーカー・スタインウェイの10分の1程度、そして日本の大手楽器メーカー・ヤマハの100分の1程度。一日製造台数が一台にも及ばないのは全工程が職人による手作業で行われている)そのベーゼンドルファー社が長らくの経営難で売却されることになり、貴族さんも最悪、会社が無くなるのではないかと気が気ではなかったらしい。何せ、貴族さんにとってベーゼンドルファーとはピアノの製造販売を始めた頃からの上得意様と長い付き合いだ。気が気ではなかっただろうなと思う。そのベーゼンドルファー社の買収には国内ピアノメーカーの他、日本の企業ヤマハが名乗りを上げた。後はスレにあったコピペが一番しっくりくるので、貼らせて頂く。

 

オーストリアの名門、ベーゼンドルファーが経営苦の末に身売りすることになった際、
ヤマハがその身請け先として名乗りを上げた。
今でこそピアノ界でそれなりの地位を手に入れたヤマハだが、かつて東洋の片隅で
学校向けの足踏みオルガンを作っていた頃から、ベーゼンは憧れの人と見上げてきた存在だった。
そんな存在が身売りをする。
身売りをするということは、たとえ同じ名前でも、違う存在になってしまうかもしれないことを
意味する。タタに買われたジャガーのように。そのことを誰もが覚悟していた。

当のベーゼンですらも。

そんなベーゼンに、ヤマハは驚くような破格のプロポーズをした。
「あなたがオーストリアでピアノを作り、その伝統と音を守り続けることに価値があるのです。
わたしのプロポーズを受ければ、あなたは私の養子という立場にはなりますが、
出来うる限りあなたがあなたのままでいられるように取り計らいます」
住む場所も名前も変えなくていい。あなたの家族(職人たち)とも別れなくていい。
そのまま受け入れる―――
その言葉に、ベーゼンはヤマハの手を取った。

2008年1月 ベーゼンドルファー社、YAMAHAの子会社となる。

 

このコピペを読んで、俺はじんと来たよ。なんつーか、ヤマハ、かっけー!!…って、まあ、内情はどうだったのかは詳しくは知らないけれど、何一つ変わることなく、働いていたひとたちがいつも通り、大好きなピアノを作り、素晴らしいピアノを後世に繋いでいけるのは素晴らしいことだと思う。他にも買収に名乗りを上げていたメーカーを蹴って、日本のメーカーを選んでくれたってことは何か嬉しいし、誇らしい。…まあ、そんなことがあって、日本って国に貴族さんは興味を持ってくれたみたいだ。でも、出不精らしく、中々、重い腰が上がらずにいたところに日本での演奏会のオファーが来て、うさぎさんとムキムキさんからじいちゃんが健在だって話を訊いて、居ても立っても居られなくなったらしい。

「最近の調律はまったく、なあなあでなっていません。あんな調律ではピアノが可哀想です!」

宴会の席でビールで顔を真っ赤にした貴族さんがじいちゃん相手に熱弁を奮っていた。ピアノがいくら良くても、やはり調律が悪ければ、音の響きがバイオリンに例えるなら、そのへんの安い量産品のバイオリンとストラディバリくらいに音が違う。…ど素人の俺には音の違いはさっぱり解らない。ピアノのいいところは量産品のピアノでも調律さえちゃんとしてあれば、いい音を出すところだそうだ。物もちゃんと愛情掛けて手入れしてやれば、必ず応えてくれる。応えてくれるようになったとき、魂が宿って美しい音色を聴かせてくれるのかもしれない。

 

 


貴族さんが演奏会の準備の為に名残惜しげに帰国して、それから二週間経った頃だっただろうか。うさぎさんが俺のバイト先にやって来た。
「よう!元気にしてたか?」
「はい、お陰様で」
「そりゃ、良かったぜ。これ、坊ちゃんから預かってきた」
うさぎさんが手にしていたのはホールケーキと思わしき大きさの箱。中からは濃厚なチョコレートの香りがする。貴族さんお手製のザッハトルテに違いない。そう思うと涎が口の中に溜まってきた。
「こっちのザッハトルテはキュウゾーとお前らの家族にってさ。んで、俺からはこれな」
レジのカウンターにケーキの箱を置いて、胸ポケットからうさぎさんは上等そうな白い封筒を取り出した。
「…何ですか?」
「こっちでやるウチの楽団演奏で坊ちゃんが客演するコンサートのチケットだ。一応家族分、準備したからな。絶対、聴きに来いよ」
「え、本当にいいんですか?チケット、取ろうって思ってたんですけど、既に売り切れだったんですよ」
「お前んとこじゃ、カラヤンが指揮執ってたころから、人気らしいしな。しかも、今回、お前んとこの奴が指揮棒振るしな。それに、今年はお前んとこっていうか、菊んとことウチの国が修好通商条約締結150周年でこのコンサートもイベントの一環だからな」
「…そうなんすか。知らなかった」
「150年前の条約締結日は一月二十四日でよ。何か、その日付も俺には感慨深くてな」
「何の日だったんですか?」
「親父の誕生日なんだ」
「親父?…ギルさんのお父さん?」
国家に親がいるのかと不思議に思って訊けば、うさぎさんは口を尖らせた。
「お前、解ってねぇな。俺が親父って言ったら、フリッツのことに決まってんだろうが!」
「…フリッツさん?」
「?…お前、フリードリヒ大王のこと知らねぇのか?」
「…えーっと…、世界史でちょっとだけ習ったような…?ローデさんとこの肝っ玉母ちゃんと戦争したひとでしたけ?」
「…………」
「…すみません。間違ってましたか?」
「いや、間違ってねぇけど。…あの女狐を肝っ玉母ちゃんって、いや、間違ってねぇけど…。…まあいい。今度、みっちり、暇があるときに親父の功績を語ってやるぜ!」
びしりと鼻先に指を突きつけられた。…後日、それは耳にタコが出来るほど、うさぎさんの親父自慢を聞かされることになるのだが、それはまた別の話だ。

 

 


コンサート前々日、じいちゃんがピアノを調律に行くと言うので付いて行った。コンサートホールには貴族さんの希望でベーゼンドルファーが鎮座している。ばあちゃんのピアノと同じ、インペリアル「モデル290」。ベーゼンドルファーの代表機種で、標準の88鍵の下にさらに4〜9組の弦が張られ、最低音を通常よりも長6度低いハ音とした完全8オクターブ、97鍵の鍵盤(エクステンドベース)を持つピアノとして有名らしい。

「このピアノはなかなか、気難しくてね。弾く奏者を選ぶ。中低音の響きは豊かだが、高音とのバランスを考えて弾かないと音の高低のバランスに狂いが生じる。奏者の力量が試されるピアノだ。ゆえにそのバランスを上手にとることが出来れば、至福の音色を奏でてくれる」

じいちゃんは作業用の眼鏡を掛け、道具の詰まった鞄を広げ、ピアノを撫でると、天屋根、上前側のパネル屋根(上の大きなふた)を開け、譜面台を外していく。鍵盤押さえ棒、弱音装置のマフラーバーなども外し、全体の音の狂いの程度の判断や、調律以外に必要な調整や修理箇所がないかを確認する為に鍵盤をひとつひとつ叩いていく。
「ちゃんと面倒を見てもらっているようだ。私の仕事は余りないようだね」
ぽろんぽろんと鳴るピアノにじいちゃんは嬉しそうに目を細め、チューニングの道具を手に取る。その手がいつも器用に動くのを魔法使いの手みたいだと子どもの頃の俺は眺めていた。それは今も変わることはない。じいちゃんは中音域の音を合わせ、真ん中の「ラ」の音を音叉の音とぴったり合うようにチューニングハンマーをチューニングピンの差し込んで弦をゆるめたり引っ張ったりして、音を聴く。その音を聴きながら、じいちゃんは思い出すように指先に集中していき、手を止めた。
「ローデさん、この音で良いか、確認してもらえませんかな?」
じいちゃんが視線を上げ、こちらを見てにっこりと笑う、客席に居た俺の隣にはいつの間にか貴族さんが立っていた。じいちゃんの作業を見ていたらしい。貴族さんは壇上へと続く階段を上がり、「ラ」の音を叩く。
「流石です。あの頃と同じ音です」
「体が覚えていたようです。あなたには何度も違うとダメ出しを受けましたからな」
「そのダメ出しに根気強く付き合ってくれた調律師はあなただけでしたよ。…さあ、続きをお願いします」
ピアノの前を貴族さんが譲ってじいちゃんがその前に立つ。中音域の音程を貴族さんのリクエストに応えながら、じいちゃんが調律を終え、低音域の調律に入った。そして、高音域と弦のユニゾンを合わせていく。
「…さてと。弾いてもらえますかな?」
顔を上げたじいちゃんがピアノの前を譲る。貴族さんは鍵盤を撫でる様に短い曲を奏で、眉を寄せた。
「高音域の「ファ」が気になります」
「少し緩かったですかな」
細かいやり取りを何度も繰り返し、…本当にじいちゃんは根気強いと言うか、貴族さんの細かい注文に丁寧に応えていく。気が付くと、昼前だったと言うのに日は沈み、夜になり、ばあちゃんが作ってくれた弁当は座席で広げられることもなくそのままになっていた。

「…ああ、久しぶりです。やはり、この音、この微妙なタッチも音色も、私の好みに叶う、理想そのものです。あなたが生きているうちにもう一度、あなたの調律したピアノを弾ける私は本当に幸せ者ですよ」
「大袈裟ですな。あなたのお陰で今の私がある。感謝しておりますよ、ローデさん。恩を返すことが出来て嬉しく思います」

完璧に仕事をやり遂げたじいちゃんは誇らしげな顔で笑い、じいちゃんの仕事を称えるように差し出された貴族さんの手を握り返した。

 俺にとって、じいちゃんはピアノを歌わせる魔法の指を持った魔法使いだ。その魔法使いが魔法をかけたピアノを貴族さんが奏でる。その音は寸分の狂いもなく美しい音をホールに響かせた。

 

 

 

 

 コンサート当日、家族揃って、六時開場七時開演の会場に向かう。会場は既に開演を待つ客がロビーに溢れていた。
「すごいひとだね」
「当たり前だろう。幻のピアニストの初の海外公演だからな」
「…そんなにすごいひとなんだ。…ローデさん」
その前評判と約二十五年ぶりにベルリンフィルの指揮を日本人が執るということもあって、聴衆の期待はそれはとても高い。何だか、周りの熱気に当てられて俺も興奮してきた。
(…うわー!何か、すげー緊張する)
何で演奏者でもない俺が緊張すんだと自分に突っ込みを入れつつ、ジタバタしたくなるのを堪えていると、後ろからむぎゅりとやられ、一瞬体が浮いて、思わず悲鳴を上げそうになった。驚いて振り返るとそこには、珍しく正装な細身の黒いスーツを着こなしたニヨニヨ顔のうさぎさんと呆れたような顔でうさぎさんを見るムキムキさんがいた。
「…っ!!」
「よう!ちゃんと聴きに来たか、偉いぞ!」
わしわしと折角セットした頭を乱される。一時間かけてセットしてきたのに酷い。
「ちょっと、やめてください!」
「ケセセ!お前の頭、小鳥の次に触り心地が俺好み!」
わしゃわしゃと更にやられて、元々クセっ毛な俺の頭は大変なことになった。…なんつーか、うさぎさんって本当に子どもだ。
「兄さん、いい加減にしろ。困ってるだろう」
べりっとムキムキさんが俺からうさぎさんを引っぺがしてくれた。
「皆で来てくれたんだな。ローデリッヒも喜ぶだろう。…キュウゾーの姿が見えないが…」
家族の顔を見渡し、ムキムキさんが眉を寄せた。
「じいちゃんは開演の数時間前にローデさんに呼び出されて、ホールに来てる筈ですけど…」
「最終調整か。アイツは本当に完璧主義者だな。キュウゾーも若くねぇんだから、あんまり無理させるようなことすんなよ」
「気合が入っていたし、久しぶりに自分の意に沿ったピアノを弾けるんだ。ローデリッヒも嬉しくって仕方がないんだろう」
開演のブザーがなる。俺たちはロビーから席に移動する。その席がコンサート関係者のみに配られるチケットだったらしく、凄いいい席で(ほぼステージが見渡せるど真ん中の前の方の席)周りから、羨望の視線を浴びてちくちくする。
「…こんないい席のチケット、頂いて良かったんですか?」
まさかこんな良席だとは思ってもいなかったので、隣に座ったうさぎさんに訊ねると、うさぎさんは眉を上げた。
「坊ちゃんが指定してきたんだよ。有り難く座っとけ」
「…そうなんですか。…後でお礼言わないとな」
「礼なんかよりも、演奏ちゃんと聴いて褒めてやったほうが喜ぶぜ」
「…ですね。心して聴きます」
開演の時間が近づき、じいちゃんが俺の隣にやってくる。うさぎさんとムキムキさんに会釈を返して、じいちゃんは座席に腰を下ろした。

 開演のブザーが鳴り、緞帳が開いた。

 

 

 

 コンサートは最初から最後まで、息も出来ないほどに凄かった。オペラ椿姫にピアノのアレンジを加えた三幕からなる構成で、素人の俺には何て表現したらいいのか解らないほどに凄かった。演奏が指揮者の奮う指揮棒がぴたりと止まるのと同時に全ての音が止まり、静寂に包まれる。静まり返ったホールに観客が息をするのを思い出すと同時に割れんばかりの拍手が鳴り響き、掛け値なしのスタンディングオベーションが指揮者にオーケストラに、ピアニストに贈られらた。

「凄い感動しました!」

率直にローデさんに告げれば、ローデさんは嬉しそうに笑ってくれた。
「ヴィオレッタの死に直面し、絶望の中に新しい何かを見出そうとする細やかな心情を表現するには、このピアノしかなかった。キュウゾーの調律で自分が思い描いていた彼女を表現することが出来ました」
貴族さんは満足げに息を吐くと、隣に立っていたうさぎさんを見やった。


 

「…さて、明日はあなたと演奏会の予定ですが練習はしてきたのでしょうね?ギルベルト」
「お前にボロクソ言われない程度にはな」




うさぎさんがフンと鼻を鳴らす。…この演奏会のことは次回、うさぎさんのプロイセン講座のことと一緒に報告したいと思う。

 

 






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