忍者ブログ
「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
19 . May
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

07 . October


大人になった弟にちょっとどきりとする兄さんのお話。

髭剃ってやるのって萌くないですかね?私は萌るんだがだが。










拍手[16回]



 
 気がつけば、まだまだ子どもだと思っていた弟は、暫く、自分が留守をしている間に色気づいていたようだ。
 
 ムキムキから40年前には嗅いだこともなかったムスクの香りがする。それがまあ、嫌味にならないほど似合っていると言うか、しっくりきすぎて驚くよりも納得してしまった。その匂いを初めて嗅いだのは二十年以上も前。未だに鼻腔の奥深く記憶に残ってる。…そして、相変わらず、弟の体からはムスクの香りがする。そして、そのムスクのトワレの瓶が洗面所の一隅に置いてある。
 
「…フランスあたりだろな」
 
留守にしている間、随分と仲良くなったようだし、こういうことに疎い弟が自ら進んでこんなものを付け始めるとは思えなかった。トワレの瓶に銘やブランド名はなく、どうやらオーダー品らしい。そんな凝った事を仕出かしそうなのは隣国のニヤけた顔をした髭野郎しか思い浮かばない。そのトワレの瓶を眺めながら、プロイセンは雫滴る顎を拭い、カップに粉石鹸を一匙、少量のお湯を加えてシェービングブラシで泡立てる。今では便利な電気シェーバーなどもあるが、一週間に一度、剃るか剃らないかの髭の生え具合にアナログとは思いつつも、慣れたシェービングレザーの方が手に馴染む。プロイセンは手際よく顎に泡立てた石鹸をブラシで顔に塗りたくり、刃を当てる。
「…ん。こんなもんか」
顎と口周りがすっきりしたのを確認して、再度、顔を洗って顔を上げれば、ふっと鼻腔に届くムスク。鏡越しにこちらを見つめるドイツにプロイセンは気付いた。
「おはよ」
「おはよう」
こちらに近づいてきたドイツからは身に染み付いたのかムスクが香る。…その香りに平和になったものだと思う。そんな香りをさせていたら、直ぐに敵に居場所を察知されてしまう。プロイセンは目を細め、泡だらけのレザーを水で流す。それを横目で見やり、ドイツはシャツの裾に手を掛ける。
「兄さんは昔から、そのレザーを使ってるな」
「まあな。昔は電気シェーバー何かなかったし、…ってか、俺、髭自体がそんなに濃くないしな。こっちの方が髭剃ったって感じがして好きなんだよ」
「…ふぅん」
気のない返事を返すドイツを見やる。顎を見やればぼつぽつと硬い髭が目立つ。プロイセンはざらりとしたドイツの顎を撫でた。
「風呂入る前に、髭、俺が当たってやろうか?」
「…は?」
「髭、風呂出たら剃るつもりなんだろ?今、俺がやってやるよ」
「…いや」
「遠慮すんなって。大事な弟の顔をざっくりやったりなんかしねぇよ」
手にしたブラシでシュッと顎に泡を塗り付ければ、諦めたような溜息を一つ零して、ドイツは大人しくプロイセンに従う。場所を入れ替わり、ボウルに寄りかかったドイツの片膝を跨ぎ、プロイセンは鼻歌交じりにドイツの顎に継ぎ足した泡を塗りたくる。満遍なく白く染まった顎を見やり、レザーを手に取る。距離が詰まれば、ムスクの香りとドイツの体臭も混ざって酷く蠱惑的な匂いに一瞬、くらりと眩暈がする。プロイセンは頭を振り、すっと息を詰める。ドイツの頬、泡を掬うように刃を当て、肌の上を滑らせる。刃の冷たさに身を竦めるでもなく、肩の力を抜いたリラックスした状態でドイツは目を閉じた。
「リラックスしてんのな。万が一、俺がざっくり、やっちまったらどうするんだよ?」
「兄さんがそんな粗相をするとは思えない」
返事が返って来る。それにプロイセンは口元を緩める。絶対にプロイセンが自分を傷つけることはないとドイツは信用しているのだ。それに気分が良くなる。自分のとき以上に丹念に、プロイセンはドイツの顎と頬を当たる。濡れタオルでさっと顎を拭い、顎を上向けて剃り残しがないか確認する。
「よし。綺麗になったぜ」
「有難う。電気シェービングより、当りが柔らかいな」
「だろ。こっちの方が手間かかるけど、後の手入れがそんなにいらないからな」
なだらかになった表面を撫で、ドイツが目を細めるのを見やり、プロイセンは後片付けを始める。レザーの泡を流し、乾いた布で拭い、ケースに仕舞う。カップの泡を流し、ブラシを洗って専用の掛け具に引っ掛けると、未だに自分の背後に立つドイツをプロイセンは振り返った。
「…お前さ、何時から付けてんだ?」
「何を?」
「トワレ。昔はそんなもん付けてなかったよな?」
「…ああ。戦場でこんな匂いをさせていたら、すぐに敵に見つかるからな」
ドイツの口から、自分と同じ回答が返って来る。
「…でも今は、もうそんな時代ではないし、フランスにもう少し身なりに気を遣えと言われて、フランスとイタリアが毎年、クリスマスにコレを贈ってくれるので使わないのも申し訳なくてな」
「ふぅん」
あの二国ならば納得だと頷けば、ドイツは緩く首を傾けた。
「…どうして、今頃になって、そんなことを訊くんだ?」
「今まで、訊く機会もなかったから訊かなかっただけだ」
「そうか。…で、どうだろう?」
「何が?」
「兄さんはこの香りは好きか?」
ボウルに手を付いたドイツが訊ねる。顔が近づき、強く香る匂いにプロイセンは視線を伏せた。それをドイツはじっと見つめる。
「…嫌いじゃねぇけど。…まあ、いいんじゃね?」
曖昧な答えをポジティブな肯定に受け取って、ドイツは湿り気の僅かに残るプロイセンの髪を指先で撫でた。
「…そうか。兄さんは香水は付けないのか?」
「趣味じゃねぇな。…でもまあ、付けたい気分になったら、お前に抱きつくさ」
その指先から逃れるように、一歩引いて、プロイセンは意味深にニヤリと笑い、ドイツの頬を撫でる。それにドイツは眉を寄せた。
「? どういう意味だ?」
「まんまの意味だよ。お前にマーキングされるのも悪くないかもなって思っただけだ。…っと、時間ねぇぞ!早く、シャワー浴びて来い。メシの仕度はしとくからよ!」
脱衣所の時計を見やり、慌しく出て行ったプロイセンの背中を見送る。
「…使いたければ使ってくれて構わないんだが、何で俺に抱きつく必要が………。………ッっ!!」
言葉の意味を理解して、ドイツはカッーと頬を赤く染める。
「…マーキングだなんて、どんな殺し文句だ…」
朝っぱらから聞くには強烈な殺し文句に火照った体は冷たいシャワーを浴びただけでは、冷めそうになかった。
 
 




 






PR
NAME
TITLE
TEXT COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Schalter
mail
メールアドレス記載の場合はメールにて、記載が無い場合はサイトにてお返事いたします。
P R
ACT
Powered by NINJA BLOG  Designed by PLP
忍者ブログ / [PR]