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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
19 . May
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24 . October

「飴と鞭は使い分けて、何ぼだろ?」
お兄様は語る。


暴力表現有り…まあ、いつもの描写だ。そんなに痛くは無いはずだ…。







拍手[24回]



 
「ルッツ、ここ座れよ」
 
信じられないほどに甘やかな声音で、ふかふかのラグの上、ショールに包まり寝転がっていたプロイセンはドイツを手招く。…いつもなら、だらしが無い。床に寝るなと怒鳴りたいのを飲み込み、ドイツは無言で従い、ぽんぽんと指し示された場所へとソファを背凭れに腰を下ろした。それに、プロイセンは起き上がり、徐に閉じていたドイツの足を開き、足の間に自分の体をすっぽりと収まると停めていたDVDの再生を開始すべくリモコンのスイッチを押し、遠慮もなしにドイツの胸へと凭れ、手すり代わりとドイツの膝に手のひらを置く。まだ湿り気を残した髪からはシャンプーの香りと露出した首元、首筋から鎖骨に掛けてのラインが何とも悩ましい。そして、ボクサーパンツから伸びる何とも魅力的な脚から、ドイツはそっと視線を外した。
 
(…拷問だ。こんな酷い拷問はない)
 
プロイセンを本気で怒らせ、許してやるからと三つの選択肢を突きつけられた。1番目は仕事に支障を来す、周りに何事かと勘繰られたくないため却下、2番目は勿論、論外である。そうなると一番理不尽とも思える3番目の選択肢以外、選択の余地が無かった。一ヶ月の間、プロイセンの理不尽な命令と言う我儘に振り回されるのかと、我が身の失敗を今更、悔いたところで仕方がないのだが、日本式の謝罪方法を取り、謝ったところでプロイセンが無条件にドイツを許すはずも無い。
 
 昔から、粗相を仕出かした時には容赦がなかった。小さい頃こそ、反省を見せれば、プロイセンは安易にドイツを許していたが、長じてからは容赦なく厳しくなった。昔、うっかり、捕虜として捕らえた敵方の要人に尋問の際、行き過ぎて暴行を加えてしまったことがあった。それを知ったプロイセンの怒りは凄まじく、顔を合わせた瞬間にドイツの頬に拳が飛んできた。防御する間もなく飛んできたそれを避けられるはずもなく、ドイツが床に膝を着いたときには鉛入りのブーツの足先が容赦なく鳩尾を蹴っていた。何が何だか解らず、プロイセンを見上げれば、胸倉を掴まれ、二度三度と平手が飛んでくる。物も言わず、ひたすら、殴る蹴るを繰り返すプロイセンの無言の威圧感に圧されて、行動に出れなかったものの、体を張ってプロイセンを制止してくれたのは、その場に居合わせたプロイセンの部下だった。制止されたことで漸く我に返ったプロイセンの赤は相変わらず冷たく凍え、自分を見つめるいつものやさしい色はなく、汚いものを見るように歪んだ視線は突き刺すように痛い。…自分の知っているプロイセンではなく、そこに居たのは自分が知る前の、隣国の言う粗暴で野蛮な軍国を体現したプロイセンだった。そのとき、心の底から、怖いと、プロイセンに対して今まで抱いたことのなかった畏怖をドイツは覚えたのだ。有り余る愛情を注がれ、厳しく接されようとそこにはちゃんとプロイセンの愛情を確認できるものがあった。それ故、疑うこともなく、プロイセンから危害を加えられる事などドイツには考えられないことだった。そしてその出来事は暗く根深く、自分の中に瑕として残った。
 
 肋骨を折り、危うく内臓までやられるところだった暴行にも等しい体罰を受けたのは、今のところは一回だけだ。いつもは甘ったれでヘラヘラとどこか能天気な顔をしているプロイセンが軍国たる所以故の加虐者の顔を見せただけで、ドイツは身が竦む。抵抗が出来なくなる。あの一件さえなければ、自分の中でプロイセンに対して過剰なまでの支配欲も加虐的嗜好も抱かなかった。きっと兄弟の一線も越えることはなかった。プロイセンに対する加虐的嗜好はドイツを統べる者として、プロイセンを支配し、プロイセンに対する畏怖を払拭しようと躍起になっているからだ。
 
(…しかし、兄さんもどこまで本気だったのか、解らないな…)
 
銃は自分を制止する為の威嚇だったと思う。プロイセンは酷く短気だ。本気だったら既に鳩尾に一発、食らっていただろう。そう思うとぞわりと背筋が震えた。
 
「…どうした、寒いのか?」
 
身震いに視線を上げた赤が訊ねる。それにドイツは返答を暫し、迷って口を開いた。
「…少し、冷えるな。ショールだけでは寒くは無いか?ブランケットを持って来ようか?」
「俺はお前のムキムキで温いけど、お前が寒ぃって言うんだったら、持ってきてやろう」
ドイツの返事も待たずに、プロイセンはプレーヤーを止め、立ち上がった。
「俺が取りに」
「いいから、そこ座っとけ」
プロイセンの肩をショールが滑り落ちる。ドイツはそれを手繰り寄せた。
「…ja」
(命令すればいいのに)
傍若無人に振舞う癖に、稀にやさしくなり、プロイセンは兄ぶる。
 
 無理矢理もいい感じに、上にプロイセンが掛け合って、金融危機のこの忙しい最中、一ヶ月休暇をドイツは得た。プロイセンは初日から良い様にドイツに次々、命令と言う名の我儘を言って来る。難色を示せば直ぐに臍を曲げ、機嫌を悪くし、ドイツの部屋に大人の玩具を無言で取りに行こうとするプロイセンに冗談では無く本気と知ったドイツはプロイセンの言いなりにならざる得なかった。
 
ホットケーキを焼け、メープルシロップはたっぷり、アイスを添えるのも忘れるな!ビールを買って来い。銘柄はヴァルシュタイナーにしろ!肴は角の肉屋のヴァイスヴルストがいい。この前、お前が作ったクーヘンが食いたい。映画に付き合え。新しく出来たパブに行こう。暇だから、バイエルンを揶揄いに行くぞ!次はザクセン、坊ちゃんとこにも遊びに行ってやるか!
 
小旅行だと振り回されるように全州を巡り、他の兄たちからこれでもかと言うほど歓待を受け、ほとほと気を遣いすぎて草臥れ果てた。帰って来てからはプロイセンの好物ばかりな偏ったメニューを作り続け、夜にはアメリカの御推奨だと言うやたら派手な爆破シーンとラストでは必ず若い男女がちゅちゅしているアクションもののDVD鑑賞に付き合わされ、夜は一緒に寝るだけと言う、若さゆえに性欲を持て余すドイツにとって無防備に眠りこける麗しの恋人を目の前に指一本出すことも許されず、抱き枕にされるという、この一ヶ月は休まる暇も無い拷問のような日々だった。…今日で、この長く辛く厳しかった一ヶ月が終わる。…思わず漏れた溜息に、ふわりと背後から起毛の感触。振り返れば、ソファに座ったプロイセンが後ろからぎゅうっとドイツを抱き締めた。
「後、十分か…。一ヶ月って結構、あっと言う間だな」
プロイセンが時計を見やり、ぽつりと残念そうに呟いた。
「…俺には長かったが」
「俺はお前とずっと一緒にいれてこの一ヶ月、楽しかったけどな。お前、ずっと忙しそうだったし、少しはガス抜き出来ただろ?」
上機嫌にプロイセンはそう言い、笑うとドイツの髪をぐしゃりと撫でた。プロイセンの言葉にドイツは眉を寄せた。
「…まさか、わざとか?」
あの条件は。…ドイツがプロイセンを見上げれば、プロイセンは赤い目を細めた。
「何が?」
答える気はないらしい。プロイセンの手のひらで踊らされていたのかとドイツは溜息を落とす。
「お前はさ、一人で溜め込み過ぎなんだよ。小出しに発散しろ。お前、ストレス溜まるとホント、険悪面になるって言うか、ドSスイッチ入るし、怖ぇんだよ!…俺とか、お前に頼られたい連中が一杯いるんだ。少しは頼れ。…後、毎日は無理だけど、お前のことは嫌いじゃねぇし、一週間に一回くらいで、お前が普通にやりたいって言うんだったら、2ラウンド…、まあ、3ラウンドぐらいまでなら、頑張って付き合ってやるぜ!」
ぎゅっと回ったプロイセンの腕。ドイツは溜息を吐く。
「…兄さんには、本当に敵わないな…」
「お前のお兄様だぜ。お前より、強いに決まってるだろうが」
今更だと言葉を返される。それと同時に、長くも短い一ヶ月の拘束の終わりを告げようと時計の秒針が動く。それに、プロイセンが口を開く。
 
「…最後の命令。キスしろ。その気にさせるような甘いのがいい」
「…ja」
 
プロイセンの命令に添えるよう、ドイツは伸び上がり、プロイセンを抱き寄せると、やさしい色をして自分を見つめながら、性質の悪い微笑を浮かべる唇に唇を重ねた。
 
 
 
 
 
 
 
オワレ
 
 
 





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