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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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30 . September



十五話だぜ!…よう続いてるな。
バイト君に名前がつきました。



羊羹戦争
うさぎさんが羊羹にハマった話。ネタは日本びいきな外国人を見て和むスレから。










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 羊羹戦争とは、うさぎさんとハンバーガー君の間で勃発したどうしようもない羊羹を巡る争いのことである。


 さて、この羊羹戦争のことの発端は、うさぎさんが羊羹にハマッてしまったことから始まる。


 その日、夏の暑さが漸くマシになってきた九月も中旬。バイト先に顔を出したうさぎさんが新しいスイーツにチャレンジしたいと言うので、たまたま品出し中で手にしていた50円で売っている小さい羊羹を勧めた。
「…ナニコレ?何て読むんだ?…ひつじ?羊使ってんのか?」
羊の字は簡単で読めるが、画数が多い羹の字は読めなかったらしい。うさぎさんが首を傾けた。
「ヨウカンと読みます」
「ヨーカン?…で、羊が入ってんの?」
「羊は入ってないですよ。簡単に言うと、あんこがバーになった感じ。…硬いあんこゼリーって感じです」
「あんこバーか。それなら、食えそうだ。食ってみる」
うさぎさんは一個だけそれを買っていった。…そして、30分後、再び、店にやってきたうさぎさんはあるだけの羊羹を購入して帰っていた。口にあったらしい。俺は書きかけの発注書に羊羹を記入した。
 その日から、うさぎさんに羊羹ブームが到来し、ありとあらゆる羊羹を、羊羹食べ歩きではないが、本田さんに頼んでお取り寄せまで始めたらしい。

「羊羹はこし餡に限るぜ!」

と、通なことを言い始めるまでになっていた。そんなある日、親父がお得意様から頂いたと杉箱入の虎屋の高級羊羹三本入りを持って帰ってきた。…のだが、我が家の家族はじいちゃん筆頭に洋菓子派。和菓子を好んで食べるのは俺だけという感じなので、扱いに困った。そこで、ピコンと思い浮かんだのがうさぎさんの顔だった。
「親父、この羊羹、ギルベルトさんにあげていい?」
夕飯の席でそう切り出せば、親父は構わないと頷いた。
「構わないが。ギルベルトさんは食べられるのかい?」
「今、空前絶後の羊羹ブームで本田さんに色々、お取り寄せしてもらってるくらい好きみたい」
「外人さんでも羊羹好きな人がいるのねぇ。私はあの甘さが駄目なのよねぇ」
母さんがのんびりと口を開く。そして、高級羊羹は満場一致でうさぎさんに贈呈されることになった。

「これ、頂き物なんですが、良かったらどうぞ」

バイト先に羊羹を買いに来たうさぎさんに差し出す。虎屋の黒い紙袋を見たうさぎさんは顔色を変えた。
「コレ、と、虎屋の羊羹か?」
「そうです。親父がお得意様からもらってきたんですけど、ウチじゃ食べる人がいなくて」
「ほ、本当にいいのか?」
「いいですよ」
「本当にいいんんだな。返せって言っても、返さないからな?」
「そんなこと言いませんよ」
後から知ったのだが、その羊羹は一棹五千円以上もする大棹羊羹だった。その羊羹をうさぎさんは大事にちょっとづつ本田さんと楽しみながら食べていたらしい。そして、最後の一棹をおやつの時間に食べようと、戸棚を開けたらなくなっていて、その残りの大事な一棹をハンバーガー君がむしゃむしゃとチョコバーを貪るが如く、食べているのを見たうさぎさんは大激怒。

「貴様、俺様の羊羹、誰の許可得て勝手に食ってんだよ!」
「許可なんて必要なのかい?名前、書いてなかったじゃないか?」
「イチイチ、名前なんて書かなくても解るだろうが!この羊羹、一棹、五千円以上するんだぞ!それを味わいもせずにむしゃむしゃと…」
「ふーん。値段の割にはあんまり美味しくないんだぞ」
「なんだと?!このクソッタレ味音痴が!」
「そっちの方こそ味音痴なんじゃないかい?美味しくないよ、コレ」
「…この繊細な味も解らねぇ味音痴の分際でひとのものを勝手に食った挙句、謝りもしねぇとは、いい根性してんじゃねぇか!許さねぇ!表に出ろ!このメタボ野郎!!その卑しい性根、俺様が叩きなおしてやるぜ!!」
「直して貰う必要なんてないんだぞ!!」

取っ組み合いの喧嘩になるところをどうにかこうにか押しとどめ、サバイバルゲームで思う存分暴れて決着をつければいいじゃないですかと、本田さんがオタク仲間に掛け合い、場所と装備を揃えてくれたのだ。……ってか、この言い争いがこの戦争の火蓋を切って落とした訳で。その戦争に俺も巻き込まれ、何でか山の中。迷彩服にゴーグル。玩具のマシンガン手にサバイバルゲーム。俺の他に巻き込まれたのはその場に居た本田さん、ムキムキさん、眉毛さん、髭さん。そして、陣営分けはうさぎさん陣営、ムキムキさん、俺。ハンバーガー君陣営眉毛さん、髭さんになった。髭さんは最後まで「嫌だ!ギルベルトとルートヴィッヒ相手とかマジで嫌!!お兄さん、死んじゃう!」とゴネていたが、無理矢理の参加になった。気の毒としか言いようがない。俺も巻き込まれたくなかったのだが、成り行きで参加せざる得なくなった。本田さんは巧いこと逃げて、中立でこのサバゲーの審判兼救護班になっていた。そして、準備期間として間に一週間時間を置くことになったのだが、その間が俺にとって地獄だった

「…何でこんな事になったんだけ?」

マシンガンの撃ち方、匍匐前進の仕方、その他諸々を一週間で出来るわけ無いだろ。運動は嫌いじゃないが、これはキツイ。訓練と称して、扱かれまくり、体はもう悲鳴を上げている。食欲も失せてグロッキーな有様で筋肉痛でゾンビカクカクロボット化しつつ、仕事するハメになった。常連客からは、「どうしたの?」って有難い心配をされまくった。羊羹でこんな迷惑を被ることになると解っていたら、俺が全部食ってしまえば良かった。…と言うか、食べ物の恨みマジ、怖い。

『それでは、羊羹戦争を始めます。制限時間は日没まで。陣営内のフラッグを奪取で終了、チーム員が全てアウトになった時点で終了、日没で即終了とします。それでは、始めます』

拡声器から本田さんの声。運動会の徒競走の始まりよろしく、ピストルの発砲音。…そんな感じで、この羊羹戦争は始まった。

「ま、相手がメタボとアーサーと髭なら、ちょろいもんだぜ」

始まりの合図を耳にし、ニヤリとうさぎさんが笑う。心なしかすげぇいつも以上にテンション高く、ウキウキしている。
「…兄さん、そんなことを言ってると足を掬われるぞ」
そんなうさぎさんとは反対にムキムキさんは沈着冷静。…しかし、むっちゃ、自前の軍服似合ってて、気合は入ってるし洒落にならない。
「ハッ、俺様を誰だと思ってやがる?あいつらに負けるほど、耄碌してねぇぜ!」
…そういや、うさぎさんって軍国だったけと長い間平和主義にどっぷりと頭の先まで浸かってきた俺は思い出す。
「…それで、作戦はどうするんですか?俺、こういうの初めてなんで、全く、役に立たないと思いますけど」
二人の会話に口を挟む。
「前線には俺らが出る。ま、慣れてるしな。お前は陣地でフラグ守ってればいいぜ」
「…はぁ。敵が潜入してきたらどうすればいいんですか?」
「入って来させねぇよ。でもまあ、侵入者があった場合は撃て。一応、遊びだからな、頭は狙うなよ。もし、自分に着弾した場合は「ヒット」って大声で叫んで伏せて、その場で待機だ。後、どんなことがあってもゴーグルは絶対に外すな。枝や粉塵で目を痛めたり、下手して弾が当たったら失明するからな」
玩具のエアガンとは言え、ミリタリーマニアが凝りに凝りまくった本格仕様のマシンガン(ムキムキさんが感心していた)はズシリと重い上に、威力もバカにならないものらしい。一応、始めるにあたり、ゲームの基本的な説明は受けたが、何と恐ろしいところに俺は来てしまったのだ。
「…俺、帰っていいですか?」
「馬鹿言え。今更、帰れると思うのか?」
真顔で返され、俺は言葉も無い。
「…言ってみただけです」
とんでもないことに巻き込まれたもんだ。俺は溜息を吐く。その傍らでムキムキさんは装備の点検に余念がない。
「…兄さん、そろそろ行くか」
準備を終えたらしいムキムキさんがうさぎさんに声をかける。
「おし!じゃあ、行くか。…フハハハ、血が滾るぜ!」
「…滾るのは結構だが、程々に頼む。…なるべく、早く終わらせる。リツ、持ちこたえてくれ」
「ヤー!」
それに敬礼で返すと、二人はザクザクと森の奥へと消えていった。それを見送り、俺は息を吐く。…日没まで俺は持ちこたえられるんだろうか…。





 さて、この戦争の場となった場所なのだが、ひょうたんを半分に切って水平にし、横から見たような形を思い浮かべて欲しい。小高い山が2つ。西と東に分けて、ひょうたんの小さい東側がうさぎさん陣営、広い西側がハンバーガー君陣営だ。地理的に範囲の狭い東側が攻められると不利なんだが、うさぎさんに言わせるとハンバーガー君に対するハンデなんだそうな。…ってか、負ける気がまったくないらしい。

 そういや、独軍って陸軍強かったけ…。ハンバーガー君とこも相当強いんじゃないですかと訊いたら、本当の戦争じゃ物量で負けるが、同条件なら負けないとうさぎさん返事が返って来た。
「凄い自信ですね」
そう言えば、フンっとうさぎさんは鼻で笑った。
「伊達に長いこと軍国、やってきてねぇよ。親父は戦略立てるのも巧かったしな」
実にうさぎさんは生き生きとしていた。そして、そんなうさぎさんを見て、ムキムキさんも口では窘めるようなことを言いつつ、楽しそうだった。

 そんなことを思い出しつつ、即席でムキムキさんが作ってくれた塹壕に俺は腹ばいになり身を潜め、形だけにマシンガンを構えているうちに日が徐々に登ってきた。二人が出ていって、随分と時間が経った気がする。
(…正午くらいかな?…腹減った)
そんなことをぼんやり思っていると、パパパパっと銃声が響いた。それと同時に、鳥がギャアギャア叫びつつ飛び立つのに身を竦める。…敵が近くにいるのか?銃声の聞こえた方向へ視線を向けるが、気配はない。
(…大丈夫かな?)
まあ、あの二人じゃヤラれそうにもないけど。気を引き締めつつ、ジリジリしていると二度目の銃声が響いた。

「ケッセセセセッ!!」

今度は鳥の声ではなく、けたたましいうさぎさんの哄笑が聞こえる。そんな笑ってたら、敵に見つかるんじゃ…気を揉んでいると、携帯していた無線にノイズが入った。

『…律君、聞こえますか?応答願います』

本田さんの声が入る。俺は無線を手に取った。
「律です。どうかしましたか?」
『アルフレッドさん側の陣営が戦闘不能になった為、ゲーム終了です。中間地点まで戻ってきてください』
「え?…もう終わったんですか?」
『あのふたりにこういうゲリラ戦が通用する訳ないのに、乗るほうが悪いんですよ』
苦笑混じりに本田さんが言う。俺は通信を切って、中間地点に戻るべく、山を下った。





 中間地点に戻るとぐったりと疲れた顔をした髭さんと苛立たしげに太い眉を寄せた眉毛さん、不貞腐れた顔をしたハンバーガー君が居た。
「ケセセセセ!!羊羹の恨み、思い知ったか!!」
「…うーっ!」
哄笑するうさぎさんをハンバーガー君は睨むが、ぐうの音も出ないようだ。その横で髭さんが文句を垂れる。
「だから、嫌だって言ったじゃない!もう、泥だらけになるわ、痛いわ、最悪よ!!」
…髭さんの口調が被害妄想入ったオカ…、……オネェ口調だ。相当、お疲れらしい。
「…馬鹿が。先走るからいいように狙撃されんだ。その頭は飾りか?少しは考えて行動しろよな」
「うるさいんだぞ!君こそ、俺の命令無視して勝手に行動するからこんなことになったんじゃないか!!」
眉毛さんの悪態にカチンと来たハンバーガー君が反論する。…ハンバーガー君陣営の敗因が読めてきた気がするな。
「…どんな作戦を取ったんですか?」
眉毛さんとハンバーガ君の言い争いに眉間に皺を寄せて溜息を吐いたムキムキさんに俺は訊ねた。
「兄さんを囮にまずはフランシスを迎撃。それに飛び出してきた、アルフレッドを兄さんが狙撃。陣営に残っていたアーサーを挟み撃ちで確保した」
簡潔な応えが返って来た。なんつーか、コンビネーションがモノを言う的な展開だったのだろう。ハンバーガー君にそれを求めるのは無理な気がする。

「ハイハイ、皆さん、撤収しますよ!忘れ物はないですね?」

本田さんの撤収の掛け声で実にあっさりとサバイバルゲームは波乱の「は」の字もなく終了した。うさぎさんはハンバーガー君に羊羹を弁償してもらいご機嫌だった。その後、負けたのが余程悔しかったらしいハンバーガー君はうさぎさんに再戦を挑んでは返り討ちにされているらしい。




 食い物の恨みは怖いというお話。











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