一週間、目隠ししたプロイセンが、お部屋でひとりきり。
「一人、楽しすぎるぜー」
な、不憫…プロイセンの為のゲーム。
そのプロイセンが過ごすお部屋に訪問してきた誰かを、プロイセンが当てたなら、プロイセンの勝ち。
当てられなければ、訪問者の勝ち。
勝った方の言うことをひとつだけ、どちらかが訊くと言うルールのお話。
[31回]
師匠に一週間、目隠しで、とある一室でひとりで過ごしていただきました。
師匠は寂しがり屋さんで…「一人楽しすぎるぜー!!」…な方なので、一日一回、部屋に誰かが訪問することになりました。
制限時間は、一時間。
訪問してきた私を当てることが出来たなら、師匠の勝ち。
当てられなければ、私の勝ち。
勝った方の言うことをひとつだけ、どちらかが訊くと言うルールです。
さて、今日は始まりの月曜日。初日の月曜日は私です。
忍ぶのは得意中の得意です。…さて、お願い事は何を聞いていただきましょうかね。
日本は部屋の前に立つと、部屋の鍵を開けた。この部屋は外側からしか開けられない。ドアを開けると黒い布で目を覆われたプロイセンがこちらを振り返った。日本は言葉を発せず、その場を動かず、プロイセンを見やる。
「…………」
「…………」
お互い無言のまま、見つめあう。…見つめあう…と言う表現はおかしいのかもしれないが、日本にはそう感じられた。視線を先に逸らしたのはプロイセンで、プロイセンは空に手のひらを彷徨わせ、椅子の背もたれに手を触れさせる。形を確かめるように触れていく指に日本は暫し、見惚れた。
「…椅子…だな。…ほら、突っ立ってないで座れよ」
そう言って、プロイセンは壁伝いに歩き、部屋の片隅にあるベッドに辿り着くと、それを確かめて腰を下ろす。そして、そのままごろりと横になってしまった。それを日本は見やり、プロイセンに勧められた椅子に腰を下ろした。
「何にもすることねぇのな。暇過ぎて死ねるぜー」
寝返りを打って、背中を向けてしまったプロイセンはそれきり微動だにしない。そのうち、すーすーと寝入ってしまったらしく寝息が聴こえてきた。
(…寝てしまわれたんでしょうか?)
壁に掛けられた時計は残り時間15分。このままでいれば、間違いなく自分が勝つだろう。…それでは余りにも詰まらない。
日本は立ち上がると、すっとベッドの脇に立った。その瞬間、ぐいっと手首を掴まれ、日本は咄嗟に受身を取った。
「日本、だろ」
真上に陣取ったプロイセンがそう言う。日本は小さく息を吐く。
「よく、お解りになりましたね」
「鍵外れる音がしたのに、気配がしねぇ。そんな芸当、出来るのお前だけだろう?」
しまった…と、日本は思う。プロイセンを見くびっていた。プロイセンは長い間戦場に身を置いてきた。それを忘れていた。…平和ボケしましたかね。日本は溜息を吐いた。
「参りました」
「俺様を謀ろうなんざ、数百年早いぜ!ケセセ!!」
ベッドから身体を起したプロイセンはそう言うと、ぺたぺたと身体を触り、日本の腕を掴む。それをぐっと引き上げた。
「…っと、」
見えないことで力加減が上手くいかないのか仰け反ったプロイセンの身体を慌てて、日本は抱き寄せた。
「大丈夫ですか?」
「おう。大丈夫。…んで、俺が勝ったんだよな」
「はい。そうです」
頷くのと同時に鳴り始めるアラーム。それを日本は止めると、プロイセンを見やった。
「師匠、お願い事をどうぞ」
「お前ん家で食った肉じゃ…じゃけ?いや、じゃこ…だっけ?…が、食いたい」
「……肉じゃが、でしょうか」
「ん。それだ。それ」
「解りました。腕によりをかけて作りましょう」
ああ、やっぱり師匠には敵いませんねぇ。
火曜日に続く。
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