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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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28 . December


ろっ様に持っていかれた某所について。







拍手[23回]





何で、こうなった?
 
いくら考えても、この事態に至った理由が解らない。後ろから羽交い絞めに抱きしめられては、身動きすら出来ず、背後が気になって日本が貸してくれた漫画を読みも耽ることも出来ずに、プロイセンは眉間に皺を寄せた。
(…いつもは甘えてきやがらねークセに、何なんだ?)
朝食後、溜まりに溜まった日記を流石に整理しようと地下の書庫にいたのだが、自分を探し回って人相の悪くなった弟にむんずと有無を言わさず引きずり出され、リビングのソファの上。どこかに移動しようものなら、「どこに行くんだ?」と声が飛んでくる。目の付くところにいないと落ち着かないらしく朝食の後片付けにキッチンに立つドイツからも見えるように仕方無しに漫画を読み始めたのだが、いつの間にかドイツに後ろから抱きしめられて、身動きも取れない。
「…ヴェスト、何かあったのか?」
漫画を読むのを諦めてそう問えば、ドイツは何もないと首を振る。…何もない訳ねぇだろうが。いつもは掃除を手伝えだの、ぐーうたらするなと口煩い癖によ。…プロイセンは溜息を吐いた。
「身動き取れねぇんだけど?」
「取らなくてもいい」
「トイレ行きたくても、行けねぇだろ?」
「行きたいのか?」
「いや。別に行きたくないけどな」
「…なら、いいじゃないか」
「…いや。良くないだろ」
ムキムキに羽交い絞めって、どうなのよ?…まあ、温かいけど。どうせなら、小さかった頃のヴェストをぎゅうっとしたかったぜ。ヴェストの可愛いさかりは、ヴェストを国にしてやるんだと俺も忙しくて、全然、構ってやれなかったしな。…今思うと残念なことをしたとプロイセンは思いつつ、肩口に額を押し当てたドイツの前髪をくしゃくしゃと乱した。
「何だよ。俺様に構って欲しいのか?ん?」
「…そうではない」
くぐもったドイツの返事にプロイセンは眉を寄せた。
「じゃ、何だよ?」
トントンと腰に回された腕を突く。ドイツは答える気はないらしく、口を噤んでいる。ドイツがこうなる思い当たる節なら、一つだけある。プロイセンは再び溜息を吐いた。
「…そろそろ、明日の準備しねぇとな。ヴェスト、離せ」
明日は三月に一回、ロシアの一部になってしまった実家に戻る日だ。もう既にかの地は自分のものではないが、紛れもなく未だに自身を形成する身体の一部であることには変わりない。三月に一回、来訪し、滞在すること。それがロシアが出したプロイセンがドイツの元へ戻る唯一の条件だった。自分のものではなくなった実家の様子も気になったし、自分の自分たる由縁はやはりかの地だ。昔の美しい町並みは戦争によって破壊され、見る影もなく変わり、冷戦崩壊後は経済の破綻の煽りを受け、治安は悪化し死に体だった街も今は景気も治安も回復しつつある。かつて、王を迎えた城は跡形もなく、城があった場所には味気のない建物が立っているが、自分が祈りを捧げた大聖堂は再建され、当時を偲ぶことが出来た。二度とその地を踏むことが出来ないと思っていたからこそ、出されたその条件をプロイセンは喜んで飲んだ。だがそれを良しとドイツは思ってはいない。
「嫌だ」
即座に返ってきた言葉に、プロイセンはどうしたもんかと眉を寄せる。…この弟は兄離れしているようで、出来ていない。それを困ったとも思うし、嬉しくも思う。
「嫌だって言われてもな、約束だし」
「兄さんの家はここだろう。何故、今更、ロシアのところに行く必要があるんだ」
「そうだけど。あそこはもと俺ん家だもん」
「………」
「気になるだろ。一応、俺の身体の一部だし」
「…解っている。だが、嫌なものは嫌だ」
ぎゅうっと腰に回った腕の力が強くなり、それにプロイセンは溜息を吐く。
「何が嫌なんだよ?」
プロイセンの溜息にドイツは肩に額をぐりぐりと押し当てた。
「…兄さんが帰って…来ないんじゃないかと思うから、嫌だ…だから、行くな」
未だにあの別離を引きずっているのか。…馬鹿だな。
「帰る場所はお前のところしかない。あそこはもう他人の家みたいなもんだし。でも、そうだと割り切るにはあそこには思い出が有りすぎる」
首筋を擽る蜂蜜色をした金髪に頬を摺り寄せる。くしゃくしゃとその髪をプロイセンは撫でる。
「いつだって、俺はちゃんとお前のところに帰って来てるだろ?」
「…だが、」
「あんまり駄々捏ねるなよ。…ホットケーキ、作らせるぞ?」
「…何だ?…それは…」
呆れたように顔を上げたドイツにプロイセンは口を尖らせた。
「ムキムキに抱きつかれて腹減ったぜー。もうお昼だしな。ホットケーキ焼けよ。異議は認めねぇぞ。三段重ねでバターとメイプルシロップをたっぷりだ。…あ、アイスも忘れんなよ?」
「…ムキムキ……。……そんなに、腹に入るのか?」
「お前が作るんならな」
腕の拘束が緩む。立ち上がったドイツをプロイセンは見上げた。
「なあ、解ってると思うけど念のため言っとくぜ。お前がいるとこが、俺の家だからな」
「なら、兄さんがいるところが俺の家だ。……だからなるべく、早く戻ってきてくれ」
「…おう」
ふいと背を向けたドイツの耳は仄かに赤い。それを見やり、プロイセンは口元を緩ませた。
 
 
 



おわり





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