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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
19 . May
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07 . February


 まったく、一体、何を考えているんだ。兄さんは!目隠しで一週間、過ごし、その間、やってきた訪問者を全て当てることが出来たら、何でも願い事がひとつ叶うなどそんなことある訳ないだろう。直ぐに飽きて、帰ってくるかと思っていたが、もう日曜日だ。この一週間、俺がどれだけ心配し、仕事が手につかなかったことか!…ヴルストは兄さんの分まで茹でてしまうし、ホットケーキは余分に焼いてしまうし、クーヘンは作りすぎるし、本当に散々だ。このままでは、胃に穴が空いてしまうではないか!胃が痛いのは国際会議だけで充分だ!

「今すぐに帰ってきてもらうぞ!兄さん」

離れ離れなど、もう耐えられない。あんな思いは二度としたくない。

ドイツは立ち上がると、プロイセンを迎えに行く準備を慌しく始めた。
 
 


 
 兄さんに一週間、目隠しで、とある一室でひとりで過ごしてもらうことになった。

兄さんは寂しがり屋だ。構わないでいると拗ねて、「一人楽しすぎるぜー!!」とか言い始めるどうしようもないひとだが、この世で俺にとっては一番かけがえのない大切なひとだ。そんな兄さんが過ごす部屋に一日一回、誰かが訪問することになった。
 
制限時間は、一時間。

訪問してきた俺を当てることが出来たなら、兄さんの勝ち。
当てられなければ、俺の勝ち。

勝った方の言うことをひとつだけ、どちらかが訊くと言うルールだ。
 

今日は週の終わりの日曜日。最後の曜日は、俺、ドイツだ。

行くからには勝つつもりで行くが…、俺は何をしても、あの兄にゲームと名の付くもので勝てたことがないのだが…、どうしたら勝てるだろうか…。
 




拍手[40回]




 
 

ドイツは部屋の前に立つと、深呼吸をひとつし、手のひらを開く。その手の中には、小さな鍵と大きな鍵がふたつ。ドイツは小さな鍵をポケットになおし、大きな鍵を使って部屋の鍵を開けた。この部屋は外側からしか開けられない。
慎重に中の気配を伺い、ドアノブを捻る。そろっと押した瞬間、凄い勢いでドアが内側引かれ、思わずドイツはつんのめった。

「ヴェスト~!!」

物凄い勢いで何かに突進され抱きつかれ、ドイツは慌てて足を踏ん張る。…そして、深い溜息を吐いた。
「…兄さん、何で解るんだ」
自分はまだ一言も発していないではないか。気配だって殺していた。なのに何故、解ってしまうのだ。…ドイツは腑に落ちない。
「解るに決まってるだろ!お兄様を舐めんなよ!!」
コアラのように全身でしがみ付いたプロイセンが偉そうにそう言い、顔を上げる。プロイセンの特徴的な赤い目は黒い目隠しで覆われいる。見えていないはずなのに、どうしてこうも兄のやることは的確…自分の居場所を捕捉し、抱きつけるのか。訓練によるものなのか、はたまた野生の勘だろうか…。…他分後者だ。…ドイツは諦めの溜息を吐いた。
「兄さん」
「ん?」
「身動きが取れない。離れてくれないか?」
「何だよ!久しぶりのムキムキを堪能させやがれ!!」
「何だ、それは…。それよりもいつまでも目隠ししたまでは不自由だろう。鍵を外そう」
宥めるように肩を叩き、ドイツがそう言うと

「いいっ!しなくていい!!」

伸びて来た手にばっとプロイセンは後ずさる。
「兄さん?」
それにドイツは眉を寄せた。
「しなくていいとはどういう意味だ?」
「意味も何にもねぇよ!このままでも不自由してないし、このままで…、おえ!?」
ばっと伸びて来た腕に、反射的にプロイセンは身を引く。ずいっと迫ってきたドイツに押されるようにプロイセンは後退った。

「…っ、あ!」

どんっと肩に当たった何かが壁だと解り、プロイセンは左へと逃げる。それをドイツの腕が遮る。ならば、右へと動くがだんっと動きを遮った腕にプロイセンは息を呑んだ。
「…何か、俺には言えない疚しいことでもあるのか?」
「な、ねぇよ!!」
「なら、何故、嫌がる」
「べ、別に嫌がってなんか、うわ!!触るな!!」
プロイセンの目を覆う目隠しに触れる。それは湿っていて、触れれば解る程に濡れている。
「…何で、濡れてるんだ?」
「先、顔、うっかり洗っちまったんだよ!!アハハ」
「…ほう。髪は湿っているような気はしないが」
プロイセンの短い前髪をドイツは指先で弄る。ぱさついた乾いた髪は指の間にぱらぱらと落ちる。
「…あー、それはだな…」
どう言い訳しようかとプロイセンが逡巡している間にドイツはポケットを探り、鍵を取り出す。プロイセンの耳の脇、小さな金具で止められた鍵を外す。

「…あ、馬鹿ッ…!」

鍵の外れる小さな音と一緒に床に落ちた黒い布切れ。すぐさま顔を覆った、プロイセンの手首をドイツは掴んだ。
「兄さん」
「…見んな」
覗き込んだ目は真っ赤で、目の周りは酷く腫れぼったく、熱を持っている。周囲をそっと撫でるとプロイセンは唇を曲げ、ドイツを睨んだ。

「見んな!」

「兄さん、泣いて……。何があった?誰が兄さんを…」
不意にトーンが低くなり、物騒な気配を纏い始めたドイツにプロイセンは慌てて口を開いた。
「な、別にいじめられたとかそんなじゃねぇぞ!!昨日、親父が…」
「…親父?…フリードリヒ大王がどうしたんだ?」
プロイセンが親父と呼び、未だに慕っているのはかの上司だ。他国ではないと解り、気配を和らげたドイツにほっとしつつも、口を滑らせてしまったとプロイセンは思う。
「…別に信じなくてもいいけど、昨日、来てくれたんだ」
仕方なしにそう言えば、ドイツは何かを言いたげな顔をしてプロイセンを見つめた。
「…兄さん」
肩に置かれた手にプロイセンは眉を上げた。
「…嘘じゃねぇもん。…ま、別に信じてもらわなくても、俺は別に構わないけどよ」
ふっと視線を背け、そう言ったプロイセンの表情は言葉とは裏腹に穏やかで、ドイツの心はちくりと軋む。
(…兄さんのすべてをどうやったら、俺が独占出来るんだろう…。俺のことだけ考えてくれたらいいのに)
…ずっと前から、叶いもしないことを思っているとドイツは思う。だから、勝てないのだろうとも。

「…それはさて置き、俺様の勝ちだな。ヴェスト」

によりと笑みを浮かべた兄に、ドイツは仕方なしに頷いた。
「よし!じゃあ、帰ろうぜ。んで、ホットケーキ焼け!メープルシロップ、たっぷりだ!!アイスも忘れんなよ!!」
「ああ、解った。解ったから、そんなに引っ張らないでくれ、セーターが伸びるだろう」
一週間、プロイセンが過ごした部屋を二人は後にする。



 

 
…さて、一週間、プロイセン、あなたが全て訪問者を当ててきました。
あなたの願い事は何はなんですか?
 





 
「ん?もう叶ったから、いらねぇよ。おい、ヴェスト、ホットケーキ、まだかよ!?」



 
 





オワリ
≫長々とお付き合い頂き、有難うございました!





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