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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
19 . May
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09 . February


…こんなふたりがくっつく日がいつか来るのだろうか?

「来ません!」
んな、感じで「その一言が~」の続編みたいなお話。段々、お互いの認識がず・れ・て・い・く…。

ちょっとだけ、普独ぽいよ!前回のしっとり具合は何だったんだ…的ながっかり、ギャグ。







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「…いい加減さ、」

プロイセンは口を開いて、黙り込むとドイツを見やる。ドイツはその兄を見つめ、口を開きかけて、眉を寄せた。…酷く、混乱していた。寝ていると…思った兄が、寝ているのだと思ったからつい、唇にキスを落としてしまった。その兄がただ、音楽を聴いていただけ、目を閉じていただけ…だったなんて、どんな詐欺だ。…キスした瞬間、その兄がどこかのお姫様よろしく目を開けるなんて、そんなことあっていいはずがない。あってたまるか!…しかし、事実は事実。ドイツはどう言い訳しようかと考えを巡らせるが、思考は空回りするばかりだ。この状況を打開する為のマニュアルが欲しいと痛切に思うが、そんなものある筈がない。

「………あー、もういい」

ぐるぐるし始めたドイツにプロイセンは溜息を吐く。

(回り始めると長ぇんだよな。…寝たフリしとけば良かったぜ)

とうの昔に気持ちには気付いてて、眠っている隙を見計らって触れてくる相手に焦らされるのも焦らすのも、飽きた。どうせなら、もうちょっと先に進みたいではないか。両想いなんだから。でも、この「超」が何十個も付きそうに鈍い弟にそんなことを望むのは一世紀経った今でも、この有様なのだから、今世紀が終わる頃になっても進展しないに違いない。…こっちから行くしか方法がない。…だが、それは非常に癪だ。…何だか、負けた気がする。恋愛はゲームだ。惚れた方が負けなのだ。負けなど、このプロイセン様に許されるハズがない!…対ドイツ用に戦略を見直し、対策を練り直さねば。逃げ場などない様に外堀をじわりじわりと埋めていくのだ。…よし、部屋で対策を練るぜ。本部の指揮官は俺。参謀は小鳥と親父だぜ。

「に、兄さんッ!」

部屋に戻ろうとソファから腰を上げたプロイセンの腕をドイツが掴む。
(お!何だよ、期待していいのか?…これは?)
思いも寄らぬドイツの行動にプロイセンの胸は高鳴る。期待を抱きつつ、振り返る。なるべく、素っ気無く、うすらっと抱く甘い期待に気付かれぬように。

「何だよ?」

さあ、言え!早く、言え!!焦らされすぎて、バターになっちまう前に!!
じりじりとプロイセンのテンションは上昇して行き、絶頂へと登りつめた。

「…あ、あ…あのだな…今のは、兄さんの口元に菓子くずがついてて、それを…だな」

上目遣いにプロイセンを伺うドイツ。それに平常時ならば、可愛すぎてぷつん!となってしまうところだが、ひとり勝手に盛り上がってしまっていたプロイセンのテンションは急速に一気に降下していった。

(…あー、一人楽しすぎるぜー。楽しすぎて、泣けるっての…ってか、泣く!)

じわりと目が熱くなる。何故、こんなにウチの弟は鈍感なのでしょうか?国民性?…んなの、俺様が知る訳ねぇだろ!!おいコラ、ヴェスト、てめぇ、最近フランスと仲良くやってんだろ、あの髭野郎を見習って、口説き文句のひとつでも覚えて来いって言うんだ、このすっとこどっこいめ!!

「…それを、その、とって、やろうと、だな」
「ふーん。俺、風呂入って、歯磨いた後、だったんだけど。菓子なんか食ってないぜ?」

いつもなら、おろおろと狼狽するドイツにニヨニヨして、許してやるところだが絶頂まで登りつめた期待とテンションを奈落に叩き落とされ、プロイセンの滅多に弟ドイツには対しては入らないSのスイッチがONになる。それにびくりとドイツの視線が彷徨うように泳いだ。
「…あ、え?」
ぴしゃりと言い訳を封じられ、ドイツは言葉に詰まった。

「…なあ、お前、俺に何したんだ?ん?」

何をされたかなど、承知である。どうせするなら、生っちょろいキスじゃなくて、ハードでぐっちょぐっちょなのを噛ましやがれ!理不尽なやり場のない怒りに押されるがまま、プロイセンはずいっと自分より視線の高いドイツに詰め寄る。殆ど八つ当たりだ。プロイセンにドイツは肩を押され、すとんと先ほどまでプロイセンが寛いでいたソファに腰を落とした。

「なあ、何しようとした?…ん?」

詰問する言葉は真綿で首を絞めるようにドイツを追い詰める。ことのほか優しい手つきで、プロイセンはこめかみから撫で付けられたドイツの金の髪を梳く。わざと頬すれすれに唇を寄せ、犯罪的な距離でちろりと耳を舐める。それにドイツが身体を震わせるのを見やり、手加減して髪を掴み、手馴れた動作で引く。必然的に上向かされる顎。睥睨するような冷たい視線にドイツは小さく息を呑む。プロイセンの蔑むような視線にぞくぞくと柔らかな部分を引っ掻かれたような、どこかもどかしい感覚にずくりと身体が疼く。
「怒らないから、言ってみろよ?」
滅多に見せない柔らかな微笑を浮かべるプロイセンの声はそれでいて低く、目は笑っていない。ドイツは豹変したプロイセンを見つめる。怜悧な刃物を思わせる赤い瞳に自分が映っている。それに恍惚を覚え、ドイツの背筋は震えた。こんな兄の表情は今まで見たことがない。ああ、兄は怒るとこんな顔をするのか。そして、同時にこの目を屈服させたいと心の奥底に閉じ込めたどす黒い何かがもぞりと動いた。それと同時に腕が動く。

「なんてな!!」

見上げるドイツの瞳が俄かに不穏なものを帯びていくのにプロイセンはいち早く気付いて、髪を掴んでいた手を離す。…その判断は(ドイツと誰かにとっては残念ながら)正しかった。ドイツが腕を伸ばすより早く、プロイセンは本能に従うまま、ドイツとの距離を空けていた。

「…お、もうこんな時間か。俺様、もう、お休むぜ!」

いつも通りに瞬時にして通常営業に戻ったプロイセンはそそくさとドイツとの距離を空け、わざとらしく大欠伸をひとつするとリビングを逃げ出した。

「…あ、ああ」

逃げたプロイセンを見送り、ドイツは眉間に皺を寄せる。

(ああ、「兄を口説き落とす100の方法(ドイツ人編)」…とか言う本が、どこかに売ってないものか…)

マニュアル重視の思考故に、最大にして最高のプロイセンをモノにするチャンスを不意にしてしまったことには気付かず、ドイツは深い溜息を吐いた。

 

(…うおー!…、ヴェスト、怖かった!…怖かったぜ…。俺様、ちょっと、やり過ぎたな)

 

最大にして最高の、弟をその気にさせるチャンスを自分の機敏さと危機的管理能力の高さ故に逃してしまったことを知る由もないプロイセンはその日の反省を日記に綴るのであった。

 

ああ、本当に上手く行かない。
ああ、マジで上手くいかねぇ。

 

悶々とする日々は、もう暫く…いや、後軽く、一世紀程は続きそうであった。

 




オワレ…。






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