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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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29 . December


※国名・人名使用
※史実よりでほぼ捏造。

ウィーン会議
ナポレオン戦争終結
ドイツ連邦成立前

戦場にてイギリスとプロイセン
戻ったベルリンにて子どもとプロイセン。

某所投稿にかなり、加筆。







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王妃ルイーゼの必死の働きにより、大敗でボロボロになったプロイセン国内の崩壊は寸前で止まり、国としての形を保ったプロイセンが漸く、床を払ったのはティルジット和約から半年後のことだった。王妃はプロイセンの病床を王宮から見舞いに度々、訪れた。

「あんま、気、使うなよ。前より、大分、いいんだぜ?」

「そうは見えないわ。プロイセン。…あの手この手を使って、私、頑張ったんだけど、あの男…」
思い出しただけで腹が立つのか、ルイーゼの眉が寄るのをプロイセンがまあまあと宥めていると、控えめなノックの音がした。それに「入れ」とプロイセンが声を掛ける。コーヒーカップを載せたトレーを手にした子どもがサイドテーブルの上に、そろりとコーヒーカップと菓子の乗った皿を下ろした。
「お!アプフェルシュトゥルデールじゃねぇか」
コーヒーに添えられたクレープ状に焼いたアップルパイに目を輝かせるプロイセンに子どもはプロイセンの前にも同じものを下ろす。それに嬉々として目の色を輝かせるプロイセンに子どもは僅かにはにかんだ。
「王妃様がとても美味しい林檎をくれたんだ。それをクーヘンにしてみた」
「そうか。ルイーゼ、ダンケ!」
「どういたしまして。ルートヴィッヒ、あなたも一緒にお茶にしましょう」
「いいのか?」
「ああ。構わない。一緒に食おうぜ」
こくりと頷いた子どもが嬉しさを堪え切れない顔をして、自分のものを取りに部屋を出て行く。それを見送ったルイーゼはプロイセンに向き直った。
「…本当にルートヴィッヒはあなたが好きなのね」
「好かれ過ぎて、擽ったいぜ」
実際、寝てばかりいて何もしてやれていないのだが子どもは何かと熱心にプロイセンの身の回りの世話を焼いた。それが少々擽ったくも嬉しくもあり、家族と言うものから縁遠いプロイセンに身にその子どもは温かさを与えていた。

「…だからよ。頑張らねぇとな」

柔らかな木漏れ日の落ちる部屋。プロイセンは自分に言い聞かせるように言葉を口にする。それにルイーゼは目を細めた。

 

 

ルイーゼ・フォン・メクレンブルク=シュトレーリッツ

プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世の王妃。
1810年7月19日 肺炎で死去。彼女の死を、プロイセン国民は大いに嘆いたという。

 

 


1813年3月17日、ナポレオンのロシアでの大敗を目にして、プロイセンはフランスへ宣戦した。

「兄さん…」
「行ってくる。いい子にしてるんだぜ。ブランデンブルク、後は頼んだ」

自分の失われた身体を取り戻さなければならない。まずはそこからだ。プルシャンブルーの軍服を身に纏い、颯爽と黒馬に跨ったプロイセンを見やり、子どもは眩しげに眼を細めた。

「無事で」

「おう。留守番、よろしくな」
手綱を取り、待たせていた騎兵隊の先陣に立ち、凱旋門をプロイセンは駆けてゆく。それを子どもは見送った。

 

 

 


第六次対仏同盟軍はナポレン率いるフランス軍を破り、パリに入城。

ナポレオンは捕らえられ、エルデ島追放される…。戦争終結後のヨーロッパの秩序再建と領土分割を目的とした会議は各国の利害が衝突して数ヶ月を経ても遅々として進行せず、「会議は踊る、されど進まず」と後に評されたウイーン会議最中、エルバ島に流されたナポレオンがパリに舞い戻り、帝位に着いた。危機感を抱いた各国は速やかに妥協し、イギリス・ロシア・オーストリア・スウェーデン・オランダ・ライン同盟・プロイセンで第七次対仏同盟を結成した。

 同盟結成後、プロイセンは軍を、リニーへと率いた。

「…往生際の悪い」

プロイセンは煙る戦場に目を眇める。しかし、勢いづいたナポレオン軍に戦況は劣勢に立たされ、已む無くプロイセンは軍を引き、ナポレオンの別働隊の追撃を交わしつつ、ラ・ベル・アリアンスでナポレオン率いる軍と開戦しているイギリス・オランダ軍の来援へ急ぐ。別働隊とやり合うよりはナポレオン本隊を叩いた方が打撃を与えられるし、別働隊を潰すことに浪費する兵力はない。横槍が入らなければ合流する予定だったのだ。降りしきる雨の中、プロイセンは兵を叱咤し休む間もなく行軍を続け、戦場に到着する。

前夜からの雨でフランス軍は進軍を止めている。ウーグモンの城館に籠もったイギリスはまだ何とか持ちこたえているようだ。プロイセンはナポレオン軍右翼を撃破すべく、丘を下る。

 イギリスの持ち堪えていた中央の前哨拠点ラ・エイ・サントが陥落。イギリス軍にとどめを刺すべくナポレオンは、最後の切り札とも言うべき老親衛隊の投入を命じる。しかし、この老親衛隊の攻撃は、イギリス近衛部隊の激しい射撃の前に撃退される。無敵を謳われた老親衛隊の敗北を目の当たりにしたフランス軍部隊の士気は著しく低下。プロイセン軍が右翼を撃破し、ナポレオン軍の側面へ猛攻をかけた。これに呼応してイギリス軍も反撃し、フランス軍は全面的な潰走に移る。最後まで戦場に残った老親衛隊は味方の退却を勇敢に援護したが、最終的には包囲され、降伏勧告を蹴ったために多くが壮絶な戦死を遂げた。プロイセン軍参謀長は強行軍と会戦で疲弊した部隊を叱咤して夜通しの追撃を行い、フランス軍を完全に崩壊させた。

「…終わったな」

「…あぁ。…疲れたぜ」
戦場となった平野を見渡し、プロイセンとイギリスは息を吐く。まだ逃げたナポレオンを追い、追撃に出ている隊を除き、他の兵は負傷した者の救助や死者の遺体の収容にと忙しく、動いていた。
「…俺もだ」
ぽつりと呟き、イギリスは気の張り詰めた戦況より開放され、疲れの残る澱んだ目を向け、壁へと凭れた。
「…お前、来んの遅ぇんだよ。後少し遅かったら思い切り、ヤバかったじゃねぇか」
「うるせー。ナポ公が別働隊用意してるなんて思わなかったんだよ。お陰で追撃振り切るのに時間掛かったんだ。…ったく、やり方があのヘタレフランスの上司だとはマジで思えないぜ」
「あー、それは言えるな。あそこの上司は今まであんなに軍略に長けた奴はいなかったかんな」
長いことフランスとは海を挟み対立してきたイギリスは吐き捨てるようにそう言い、溜息を吐いた。
「…酒が飲みたい」
「だな。浴びるほど、ビール飲みてー」
「俺は浴びるほど、スコッチが飲みたい。…っーか、飲む。フランスのクソ野郎をやっつけた祝杯を上げるぞ。お前も付き合えよ。プロイセン」

ニヤリと笑った現役ヤンキー海賊紳士にプロイセンは溜息を返す。

「気が向いたらな」

 こうして、ラ・ベル・アリアンスの戦いで、フランス革命戦争から二十年に及ぶ戦争は終結を迎えた。

ナポレオンは再び、流罪となり、フランスはルイ18世が国王に復位。第二次パリ条約の締結。その際、イギリス・オーストリア・ロシア・プロイセンの間で四国同盟(神聖同盟)が結成された。

 

 

 

 漸くの平和を手に入れ、プロイセンはベルリンへと戻った。…が、休む暇もなく忙しい。

「あー、嫌だ嫌だ!」

プロイセンの目の下に出来た隈は黒々とし、充血した目は更に赤い。身体に縦横に巻かれた包帯に血が滲むことが無くなって来ただけマシかと思うことにし、未だ痛む身体を酷使し、終わりの見えない仕事に励む。

 正統主義を基に、フランス革命以前の状態を復活させ、大国の勢力均衡を図る。神聖同盟、四国同盟らの列強を中心に、体制を維持するために自由主義・国民主義運動を抑圧し、各国の協調、国家間の諸問題の解決に外交努力する。

 ウィーン議定書に基づき、ナポレオン主体のライン同盟の解体やら、組まれた四国同盟の調印やら、議定書に基づきオーストリアと協調体制をとるべく、オーストリアを盟主としたドイツ連邦発足に向け、プロイセンは奔走する日々が続いていた。

 しかし、あの腐れ坊ちゃんと連邦だ?…ハン、冗談じゃねぇ!!

開戦しては、降伏し和約を結び、殆ど対仏同盟においてお世辞にも役に立ったとは言えない、寧ろ足を引っ張ったと言ってもいいオーストリアを連邦の盟主とすることになったのだが、オーストリアが大きな顔をするのが目に見えて、プロイセンの気に食わない。しかし、上司が決めることに口出し出きるはずもない。
「…まあ、いいさ。俺んところにはルッツがいるしな。坊ちゃんが大きな顔出来んのも。今のウチだぜ。ケセセ!」
そう思わなければ国などやっていけない。プロイセンは空疎に笑い、書斎のテーブルに山積みとなった書類の束を引き寄せ、目を通していく。文句を言おうにもどうにもならないし、仕事は増えるばかりだ。なら、無心に目の前のものを片付けるに限る。書類に次から次へと目を通し、サインを書き殴る作業を繰り返していると、控えめにドアがノックされる。その音にまた書類かと赤い目を向け、入れと怒鳴るとドアがそろりと伺うように開いた。

「…兄さん?」

ドアを開いたのは、ベルリンで出会った国の子ども。相変わらず天使のように可愛い。プロイセンは尖っていた心が緩むのを感じ、羽根ペンを投げると、両腕を広げた。
「ルッツ、久しぶりだな。こっちに来い」
そう言ってやれば、迷うことなく子どもはたたっとプロイセンの元まで駆け寄って来ると、遠慮を見せつつも嬉しそうにプロイセンに抱きついてきた。
「お帰りなさい。兄さん」
「おう。ただいま」
柔らかくどこか甘くやさしい匂いのする頬に口付ける。それに子どもは擽ったそうに首を竦め、同じようにプロイセンの頬に口付けた。
「…お前、ポツダムにいたんじゃないのか?」
「ブランデンブルグが兄さんがベルリンに戻ったって教えてくれたんだ。行っても立ってもいられなくって無理を言って、馬を出してもらったんだ」
「そ…、そうか」

何、これ、めちゃくちゃ可愛いこと言ってくれんじゃねーか!!

思わずぎゅうっとしたくなるのを何とか堪え、プロイセンは平静を装うとするが、口元が勝手にによりと緩むので失敗してしまう。注げば注ぐだけ返って来るものがある喜びにひととしての本能が奮える。プロイセンはこの無条件に自分に懐き、慕ってくる子どもが可愛くて仕方がない。
「兄さん、疲れてるんじゃないのか?顔色が悪い」
子どもの柔らかい手のひらがプロイセンの乾いた頬を撫でる。その手が気持ちよくて、プロイセンは目を閉じた。
「大丈夫だ。…まあ、後ちょっとしたら、休めるようになるし」
取り敢えず連邦が成立すれば、束の間でも平穏が訪れるだろう。その平穏な時間の間にこの子どもを王として育て、他の領邦に認めさせなければならない。それには時間が必要だ。
「今、ちゃんと休めないのか?」
「今はな。オーストリアとドイツ連邦発足の最終調整に入ったからな。それが終わるまでは気は抜けないな」
「…そうか」
「…でも、まあ。流石に疲れたから、もう寝る。サインすんのも飽きたし」
子どもを抱き上げ、立ち上がる。ふわりと浮いた身体に子どもは慌ててプロイセンの肩へと腕を回した。
「…そうか。では、兄さん、あの…その、だな…」
「ん?何だ?」
もじりと言いよどんだ子どもの顔を覗き込む。子どもはかかっと頬を赤くし視線を伏せる。
「何だ?お兄様にお願い事か?」
子どもらしい我儘も言わず、大人しく部屋で本を読んでいるルートヴィッヒは手のかからない子どもだ。自分が子どもの頃は当に昔々のお話だが、随分な悪ガキで親代わりにも等しい団長からは我儘を言って悪戯をしては説教をくらっていたが、子どもってそんなもんじゃないのか?…と言うか、子どもと言うのは我儘を言って多少の悪戯も許される存在だ。その我儘が自分に叶えられるものなら、プロイセンはこの子どもの為に何だってしてやりたいと思う。
「そうだ」
子どもの青が意を決したように上がる。それをプロイセンの赤い目は穏やかに見つめる。
「何だ?言ってみろ」
「…一緒に…寝ても…いいだろうか?」
「え?」
「だ、駄目ならいいんだ!!ひとりでもちゃんと寝られる。…でも…、兄さんが忙しいのは解っているけど、一緒にいたいんだ」

何、この可愛い生きものは!

今までにない衝撃を受け、プロイセンは目が眩むほどの愛おしさを覚える。
「…駄目じゃねぇよ」
柔らかい金糸を梳くと子どもは顔を上げた。
「本当か?」
「本当。俺がいない間、お前が何を学んだのかを俺に話してくれ」
「ja!おれにも兄さんの話をして」
「おう。長話になるぜ」
「望むところだ」
満面の笑みで嬉しそうに笑った子どもと一緒にベッドに入る。話は尽きることがなく、プロイセンと子どもが漸く眠りに落ちたのは夜明け前のことだった。

 

 


オワリ





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