「……………」
「…あー…、落ち込むなよ。ヴェスト」
試合終了のホイッスルがブブゼラの喧騒の中、高らかに鳴り響く。それにがっくりとドイツは項垂れ、プロイセンはどう慰めようかと口を開く。落ち込むドイツの横で、スペインはにこにこと上機嫌な顔をしている。
「お前んとこのタコすごいなぁ。俺が勝つの当てよったで!」
「…あー、ホントにな」
百発百中。…恐るべし、パウル。プロイセンはぼやくようにそう言い、溜息を吐く。
(…ドイツが勝つって思ってたんだけどな)
そうなったらどうにかこうにか、例のお約束を逃げてなかったことにしようと思っていたのだが、…何故、こうなった?予想外過ぎる。
「…兄さん、」
「何だ?」
「…不甲斐ない俺を許してくれ、兄さんの貞操を俺は守れ……ううっ」
大きな図体を丸め、泣くな。貞操って、何だよ。そんなもん、賭けた覚えはねぇぞ。俺は。…プロイセンは再び溜息を吐いた。
「貞操は賭けてねぇよ。俺からキスして、ちょっと身体撫で回されるだけのことだろ」
「俺は兄さんが、俺以外の男にキスするのも、身体を撫で回されるのも耐えられん!!」
「でも、約束は約束や。…ってか、俺が何百年、プロイセンに片思いしとると思うとのや。お前が生まれる前からや。こんな千載一遇のチャンス、逃がしてたまるかい。有効に使わせてもらうで」
ぐいっとスペインに腕を掴まれ、立ち上がらされたプロイセンの反対側の腕をドイツは反射的に掴んだ。
「…離せや」
「嫌だ!」
「聞き分けの悪い子やなぁ。賭けに乗ったのはお前、負けたのはお前や。潔悪ないか?」
「……っ」
「…スペインの言う通りだ」
それにプロイセンは口を開く。それにドイツは悲しげに眉を寄せた。
「…ってか、先も言った通り、キスしてやるだけ、お触りもハグ程度だから、安心しろ」
言い聞かせるようにドイツにそう言うプロイセンにスペインは口を尖らせた。
「えー?俺、ハグですます気、あれへんよ?」
「俺は触ってもいいとか、キスしてもいいとか、言っとくが一言も約束してねぇ」
「え?そんなん、今更やない?」
「今更じゃねぇよ。そして、俺がアンケート結果、一位だからな。試合には負けたが勝負には勝ったんだよ」
「なんなん、それ!?なかったことにされるん?そんなん、あんまりや~!!ぷーちゃん、殺生過ぎやで!!」
「兄さん」
ほっとしたようにドイツが顔を上げる。スペインは不満げに頬を膨らませた。
「俺、頑張ったんよ?」
「それは認めてやるよ。だから、」
プロイセンはぐいっとスペインのシャツの襟ぐりを掴み引き寄せると、派手な音を立てて、頬にキスをし、耳元に唇を寄せた。
「優勝しろ。…そしたら、ちょっとだけ俺も考慮してやる」
ごにょりと小声で伝えられた言葉にスペインの顔はへにゃりと緩んだ。それを訝しげな顔をして、ドイツは睨む。
「…んで、ヴェスト、お前は三位決定戦絶対勝て。もし負けたら、一ヶ月、ハグとキスお預けな」
「な!?」
目を見開き、固まったドイツにプロイセンはにやりと笑った。
「それが嫌なら、頑張れよ」
「俺、絶対、勝つで!!」
「今度こそ、俺は負けない!!」
新たに闘志を燃やすふたりにプロイセンは「どうにか逃げ切ったぜ」と、胸を撫で下ろすのだった。
続かない!