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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
19 . May
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10 . February


予定にまったくなかったメリカの話が思い浮かんだので、兄さんにメリカと遭難してもらった。
続きは今月中には、更新したい(希望)。




拍手[7回]





「…オイ、ココ、どこだよ?」
「よく、解かんないだぞ!」

元気に返事を返してくる脳天気なアメリカにプロイセンは眉間に皺を寄せ、深い溜息を吐いた。




 弟ドイツにお使いを頼まれ、渡米し、用事も無事に済み、さて帰るかと帰り支度を始めたところで、アメリカが、

「プロイセン、俺、新しく自家用ジェットを購入したんだぞ!テスト飛行ついでに、ドイツに送っていくんだぞ!」

と、言い出した。
(…帰りの飛行機代が浮くな。浮いた金でヴェストとビールでも飲みに行くか)
交通費が浮くと打算の元、アメリカの提案を受け入れたプロイセンはアメリカご自慢のジェット機に機上した…が、そのジェット機、飛行中、エンジントラブルを起こした。「パニック映画みたいな展開なんだぞ!」と、何故かはしゃぐアメリカから無理矢理操縦桿を奪って、目視出来た小さな島に何とか、不時着させたは良かったが、四方を青い海が囲み、まさに絶海の孤島。ビジネスバックから取り出した携帯は、無論圏外。
「……衛星電話にしときゃ、良かったぜ」
弟にGPS装備の衛星電話を持たされそうになったのを監視されているようで嫌だと拒否したツケがこんな形で来るとは…。プロイセンは溜息を吐く。そんな、プロイセンの心情を知ってか知らずか、アメリカは呑気なもので、墜落の衝撃でぶっ壊れた扉をご自慢の馬鹿力で勢い良く引き剥がすと、機内からパンパンに膨らんだリュックを取り出した。
「…何だ、そのリュック?」
「あ、これは非常食なんだぞ!遭難するのも三度目だしね!」
遭難するのが、三度目って何だ?…ってか、遭難してるんだぞ?もうちょっと危機感とか、何とか切羽詰まったモンがあるだろーが!何で、お前はそんなに楽しそうなんだYO!!…と、思わず、喚き散らしたくなるのをぐっと飲み込んで、プロイセンは何度目になるか解らない溜息を吐いた。
「ジェット機に無線とか、衛星電話積んでねぇのか?」
「積んでたけど、今見たら、バッテリーの液が漏れて、使えなくなってたんだぞ」
「…バッテリーが死んでンのか…。絶望的だな」
信頼と安心、我が国誇るルフトハンザで交通費ケチらず帰れば良かった…。…そう思っても、後の祭りだ。もう溜息しか出てこない。
「心配しなくて、いいんだぞ!二、三日中には、迎えが来ると思うし」
プロイセンの溜息にアメリカが言う。それにプロイセンは眉間の皺を深めた。
「随分、楽観的だが根拠はあんのか?」
「俺を誰だと思ってるんだい!エンジントラブルになったのと同時に、エマージェンシーコールが自動で作動済みだよ。衛星レーダーは墜落直前までは生きてたし、国防省が捜索に着手したと思うよ」
「お前にしちゃ、手回しいいじゃねえか」
「それに、万が一、コールが作動していなくても、君の過保護な弟が君が帰って来ないって大騒ぎして、遅くても一週間以内には捜索隊が出ると思うね!」
「ありえるな…」
物凄い形相でアメリカに突撃してきて、アメリカの上司相手に喧嘩を売る勢いで捜索隊の指揮を取りそうな弟の姿が想像できて、プロイセンは乾いた笑みを浮かべた。
「ま、救助については心配しなくていいよ!サバイバルなバカンスだと思って、楽しもうじゃないか!」
HAHAHAHA!…と、ご機嫌かつ、楽観的なアメリカに真面目に事態を憂うのも馬鹿らしくなってくる。取り敢えず、食料はあるようなので、何日かは凌げるだろう。問題は雨風とこの凶暴な日差しを遮ってくれる場所と、水か。…プロイセンはアメリカを見やる。
「…取り敢えず、島を散策すっか。水とか湧いてればいいんだけどな」
「水なら、5ガロン、ジェットに積んであるんだぞ」
「…水も、二、三日は心配しなくていい量あるな。でも、いつ救助が来るか解らないしな」
「そうだね」
「島を取り敢えず、散策しよう。俺は左を行く。お前は右な」
「解ったんだぞ」
取り敢えず、プロイセンとアメリカは二手に分かれ、島を散策することにした。





 左手には青い海。右手には鬱蒼と茂ったジャングル。小一時間ほど、白い砂浜を歩いて、アメリカとプロイセンは島の真ん中と思われる場所で遭遇した。
「何か、あったか?」
「海沿いには何もなかったんだぞ。プロイセンは?」
「俺も何も見つけられなかった。…取り敢えず、このジャングルの中に入る以外の選択肢はなさそうだな」
「そーだね。何が出てくるか、楽しみなんだぞ!」
意気揚々と裸足の脚にスニーカーを履き直したアメリカを見やる。アメリカはジーンズに白いシャツ、お気に入りらしい空軍ジャケットと言う軽装。今、そのジャケットは腰に巻かれ、汗で張り付いた白いシャツ一枚だ。
「アメリカ、入る前にそのジャケットを着ろ」
「えー、暑いんだぞ」
「中に何がいるか解らないんだ。変な虫に刺されたくねぇだろ」
「別に、平気なんだぞ」
「平気でも何でも、黙って、着ろ。毒虫に刺されてぇってんだったら、無理には止めねぇけどな」
「…うー」
意地の悪い顔で笑ったプロイセンにアメリカは腰に巻いていたジャケットを羽織る。プロイセンは捲っていたシャツの袖を下ろし、抱えていたスーツの上着を羽織ると砂浜に転がっていた枯れ枝を手に取った。
「…じゃあ、行くか」
「探検に出発なんだぞ!!」
ワクワクとした表情で足を踏み出そうとするアメリカを制し、プロイセンは草むらを手にした枝で払い、先導する。その後ろをアメリカは付いて行く。
「…プロイセンは何をしてるんだい?」
草むらを枝で払いながら進むプロイセンにアメリカは小首を傾げる。さっっぱりとプロイセンの行動が理解できなかった。
「遭難、三回目なのに、スキルゼロかよ。…蛇が出てこないようにやってんだよ」
「へー」
「へーじゃねっての。お前、そんなんで良く、生還できたな」
「うん、その時はイギリスにフランス、ロシアに中国も一緒だったからねぇ。後で、ドイツや日本、イタリアとも合流したし」
「な!?イタリアちゃんも遭難したのかよ?…ヴェストのヤツ、そんなこと一言も俺には言わなかったぞ!」
プロイセンが北イタリアをこよなく愛し、空回りな感じにラブラブ光線を送り、当のイタリアからは華麗にスルーされているのを知っているアメリカはそっと息を吐いた。
(反応するところはそこなのかい?…ってか、イタリアなんかより、君は俺を意識すべきなんだぞ!)
そう思うが、何故か言葉は口から出てこない。目の前の男は昔、自分の師だった。第一印象は「最悪」の一言で、プロイセンは端から、アメリカの弱さと甘えを早々に見抜き、それを笑い、指摘してきた。踏み込まれたくない部分にまで、遠慮なく踏み込んで、徹底的にそこを叩かれ、それはもう地の底まで凹まされた。そこから、また引き上げてくれたのも、プロイセンだった。
 プロイセンの指導のもと、アメリカが徐々に形勢を逆転していくのに、プロイセンは自分のことのように喜び、
「よくやった。やれば出来るじゃねぇか!」
勢い良く頭を撫でくり回されたのには閉口したが、プロイセンが対等に扱ってくれるようになって、認められたのだと解ったときには本当に嬉しかった。最初の嫌悪が敬慕に変わり、それが、いつから恋慕になったのかは解らない。プロイセンが自分以外の誰かを構ってるとイライラするし、日本と仲良さそうだったり、プロイセンがドイツを下にも置かない態度で接しているのをみると、
「プロイセンと知り合ったのは、俺のほうが先なのに!」
と、腹が立つのだ。

「はあ、俺もイタリアちゃんとふたりきりで遭難してぇ」

プロイセンがイタリアに下心のない好意を抱いているのは知っている。でも、今、それを言うか。アメリカはプロイセンとふたりきりで弾んでいた気持ちが萎んでいくのを感じる。それは口数に反映され、黙りこくってしまったアメリカを不審に思ったか、プロイセンは足を止めて振り返った。
「アメリカ、疲れたのか?」
「…ウン」
「しょうがねぇな。ちょっと休むか」
「…別に、大丈夫だよ」
「俺も疲れたんだよ。…はー、ビール飲みてぇ」
雑草の茂った場所から、少しだけ開けた場所に出る。海よりなのか、潮の香りがした。
「草木が茂ってる分、ここはまだ涼しいな」
倒木の上に腰を降ろしたプロイセンは緩めていたネクタイを取ると、無造作にジャケットの胸ポケットに突っ込んだ。イギリスの余計な薫陶のお陰でプロイセンのスーツがかなりの上物、オーダーメイド品だと解る。それは薄汚れ、今や見る影もない程にくたびれかけている。泥や汚れが着くことをプロイセン事態が頓着していないのか、磨かれた革靴も傷だらけで、泥で汚れていた。
「…スーツ、汚れちゃったね」
「あー、ヴェストが作ってくれたヤツなんだけどな。…ま、場合が場合だ。しょうがねぇだろ。仕事着は本来は汚れてなんぼだしな。スーツなんて、自分のステータスを相手に顕示する見栄みたいなもんだ」
あっさりとプロイセンはそう言い、これまた上等なオーダー品だろうと言うシャツの首もとを緩め、パタパタと手団扇で扇ぐ。その胸元の白さに目を奪われる。無意識に喉が鳴るのに気付き、アメリカは頭を振った。
(…俺、今、何を思った?)
上等なシャツを毟り取って、その首筋に消えないような跡を付けてやりたいだなんて、どうかしてるとしか思えない。そんな、肉欲めいた欲望をプロイセンに抱くとか、有り得ない。…ただ、彼のすべてを独占し、一緒にいたいだけなのに。
(ドイツが選んだ服なんて、脱がしてしまいたい)
自分ではない誰かが、彼に関わることさえ嫌だと思い始めている。この、狂おしいまでの独占欲は何なのだろう。そして、それを伝える事も出来ない閉塞感にアメリカは息が詰まりそうになる。
(…ほんの数時間でもいいから、少しでも長く、プロイセンといたかっただけなのに、こんなことになっちゃうし…。俺、どうしたらいいんだい?)
この遭難は予定外過ぎる。自覚しないまま抱えていた独占欲の意味を唐突に理解して、アメリカはこっそりと深い溜息を吐いた。




続く…。





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