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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
19 . May
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05 . May


ログ格納につき、加筆。
お題はこちらよりお借りしました。ありがとうございます。拍手版と順番が入れ替わっています。






拍手[11回]






ずっと思っていたことがある。兄さんには好きなものがいっぱいある。おれはその中で何番目なんだろう。

 出来ることなら、一番がいいけれど、兄さんの一番はあのひと…なんだろうな。

 子どもはプロイセンのテーブルの上に飾られた小さなポートレイトを見やり、視線を伏せて、そっと伺うようにソファに座り書類に目を通しているプロイセンを見やる。ふっと書類から顔を上げたプロイセンは子どもの視線に気づいて瞬き、微笑んだ。

「どうした?ルッツ」

書類を置いて広げられた腕の中に飛び込めば、そこは自分の知る世界で一番やさしく安全で幸せを与えてくれる場所だった。その場所に子どもは頬を摺り寄せて思う。
(おれの一番は、兄さんだ。兄さんの一番は?)
プロイセンの中でも一番になりたい。欲張りなことを思う。子どもは大きく青い目を上げる。赤い瞳は穏やかにその瞳を見つめ返す。

「…ずっと聞こうと思ってた。でも怖くて聞けなかった。でも今聞きたい。―――おれは兄さんの何番目なんだろう?」

子どもは真剣な目をしている。それにプロイセンはぱちくりと目を開く。
「…何番って、お前は俺にとっては特別だから、順番はつけられねぇなぁ」
順番など考えたこともない。子どもの存在はプロイセンにとって何ものにも替えがたい大切なものだ。プロイセンは眉を寄せた。
「特別?」
「特別。小鳥みたいにふわふわしてて触り心地最高だし、親父みたいに賢くて可愛いし。ルッツは俺の特別だ」
ぎゅうっと抱きしめられ、頬にキスを落とされ、くすぐったくなって子どもはぎゅうっと目を瞑った。

「お前を誰よりも、愛してるよ」

額に落とされるキスは特別なものだ。子どもははにかむように笑った。

 


お題「ずっと聞こうと思って聞けなかったけど、今聞くよ。―――俺はアンタの何番目? 」



 


好きだの何だの、言葉で語られてもどこか空々しく思えて、プロイセンは欠伸を噛み殺す。それにドイツは眉間に皺を寄せ、プロイセンを睨んだ。

「訊いているのか?」
「訊いてるぜ。俺のことが好きなんだろ?」
「そうだ」

ドイツは答えて、プロイセンを見つめる。何よりもその目が雄弁に愛を語っている。言われなくてもちゃんと伝わってる。態度で解る。でも、それじゃ、駄目だ。それだけでは足りない。

「お前、愛を語るのには向いてねぇよ。フランスじゃあるまいし、浮いた言葉は空々しくて、嘘にしか聞こえねぇ」

愛し方には色々あるだろう?俺はお前にこの身の全てを食わせてやった。それを拒んだことなどあったか?足りなければ、もっとと言えばいい。もっと欲しいと。いくらでも単純で解り易い言葉と態度があるだろう?

一人掛けのソファに深く腰を下ろし、足を組んだプロイセンはドイツを見やり、口角を引き上げる。それをドイツは見つめる。

「愛を語るな。態度で示せ」

単純だろう? 笑ったプロイセンが伸ばしてきた手を掴み、ドイツは物言わずその手のひらに口付けた。

 

 

お題「愛を語るな。態度で示せ」

 




「お前って、本当に真面目だな」

その言葉に日本は顔を上げ、プロイセンを見やる。プロイセンは日本が色々とメモを取っていたノートに視線を落としていた。
「…書かないと忘れてしまいます」
「忘れてしまうもんは、大したことじゃないだろ。俺はすぐに忘れるぜ」
その言葉に日本は何故か、泣きたくなって俯いた。

大したことじゃなければ、忘れてしまう。…今、自分とこうして過ごしていることもいつか、師匠は忘れてしまうのでしょうか…?

それは何て悲しいことだろう。すんっと小さく鼻を啜った日本には気づかず、プロイセンは言葉を続ける。

「お前のことは好きだからな。お前が真面目で勤勉だって、今日の日記に書いとくぜ。ケセセ」

その言葉に日本は顔を上げる。勢いよく上がった日本の顔はぐちゃぐちゃで、プロイセンは慌てたようにわたわたと手を動かし、視線を泳がせ、上げた手を日本の肩へと置いた。
「ど、どうしたよ?」
「…いえ。ちょっと、目に埃が入ったみたいで」
「…何だ。びっくりさせんなよ。見てやるよ」
頬を撫でる指にどきどきするのを押さえられない。


ああ、恋してしまった。


「好き」と単純にそう言った貴方の言葉が何よりも嬉しかったことは、誰にも絶対に言えない、私だけの秘密だ。 

 


お題「貴方の言葉が何よりも嬉しかったことは―――絶対に言えない秘密。」


 

 

「アイシテルなんてこの世で最も醜悪な言葉だね」

唐突にそう言葉を発したロシアにプロイセンは忙しなくタイプを打っていた手を止め、顔を上げた。
「何だ、いきなり?」
「愛してるって言えば、何でも許されると思ってるのかな?…相手は凄く迷惑だと思ってたとしても、回りからみたら、仕方が無いよって笑って許せることなんだよね」
ブツブツと欝っぽく呟いたロシアにプロイセンは溜息を吐く。…どうやら、ベラルーシに追い掛け回され、ロシアは相当なダメージを珍しく負っているらしい。どんよりと澱んだ空気にプロイセンは口を開いた。
「でもよ、愛にも色々あるだろ」
「色々?種類があるの?」
不思議そうな顔をして、解らないのかロシアが訊いてくる。
「あるだろ。例えば、家族を思う愛、恋人に思う愛、友人に思う愛…まあ、色々だ」
この世はありとあらゆる愛が人の数だけ溢れている。愛は至高の幸福を齎すこともあれば、行過ぎれば破滅へと導くこともある。果たして、このロシアを怯えさせ追い詰めるほどまでに重いベラルーシの愛は何を齎すのだろう。プロイセンは思う。
「…じゃあ、君が弟君に思う愛は、何?」
ロシアが尋ねる。
「家族愛だろ。弟だし」
それ以上もそれ以下も無い。それにロシアは眉を寄せる。
「…弟君は違うみたいだけど、気がついてないのかな?」
小さな呟きは聞き取れず、プロイセンは眉を寄せた。それにロシアは顔を上げ、満面の笑みを浮かべ、プロイセンを見つめた。それにプロイセンは椅子ごと後退った。
「な、何だよ?」
ロシアの満面の笑みなど、不吉以外のなんだというのか。悪い予感しかしない。
「じゃあ、プロイセン君が僕に思う愛は何?」
悪い予感的中。プロイセンは頭を抱えたくなった。どうしたら、この難問から逃れることが出来るのだ。
「…解んねぇよ」
支配するものとされるもの。友情はもちろんなく、血の繋がりも無いので家族愛ではない。果たして自分がこの男を憎めずにいる理由は何なのか。…多分、ちょっぴりの愛はそこにあるのだろうが。それに意味をつけるとしたら、何なのか。
「えー?ちゃんと答えてよ!」
立ち上がってきたロシアにプロイセンは焦る。その瞬間、ぎぎぎっと嫌な音を立てて、ドアが軋んだ。ドアの隙間から長い髪を振り乱した少女がきぃっと爪先でドアを引っ掻いた。

「…兄さぁん、結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚…ッ!!」
「ぎゃあ!!こっちに来ないでぇぇぇぇっ!!」

悲鳴を上げ、ロシアが窓をぶち壊して、逃げていく。その後を鬼女の如き美少女が追いかけていく。それを呆然とプロイセンは見送って、ぶち壊れた窓から吹き荒ぶ寒風にくしゃみをひとつ。

「…窓の修理代、ロシアに請求してもいいよな?」

難題は解かれることなく、くしゃみとともに飛んでいった。


 


お題「アイシテルなんてこの世で最も醜悪な言葉だね。 」

 

 

「…この触り心地、まさに俺好みだぜ!」

あなたが私に気付いてから、毎日、あなたはわたしを愛でてくれる。でも、気づいてもらえなくても一向に構わなかった。だって、わたしはあなたの近くにいることが出来れば何でも良かったの。

 ずっと昔、あなたは覚えていないでしょう。巣から落ちてしまったわたしを助けてくれた。

だから、わたしはあなたにその恩を返したいと思う。あなたがわたしを助けてくれなければ、わたしは今頃、きつねのおなかの中だったかもしれないもの。

 大きくなって、わたしは巣立った。わたしはあなたの役にたちたかった。でも、あなたはわたしの遠くを見渡せる眼も、鋭い爪も大きな翼ももう必要としていない。どうしたら、わたしはあなたの役にたてるかしら?

『どうしたら、わたしはあなたの近くにいることができるのかしら?』

 あなたの近くにいたいと神様にお願いしたら、わたしはこんなにちいさくか弱い小鳥になってしまった。大きな翼も、遠くを見渡せる眼も、鋭い爪も失ってしまった。それでも、あなたを恋しいと思う。あなたのそばにいたいと思う。

『どうして、こんなにもあなたが恋しいのかしら?』

きっとこれが、恋なのかもしれない。かなわない恋。でも、いいの。あなたに一番近いのは、わたし。あなたが一番、無防備な顔で愛でてくれるのは、わたし。あなたが弱音をはいてくれるのはわたしだけ。

 

 こんな幸せなことはないわ。ねぇ、そうでしょう?

 

お題「どうして、こんなにもアナタが恋しいのカシラ? 」


 


「…人間って、死ぬときはいつも呆気ないよな」

プロイセンは呟いて、王が特別に拵えた椅子の上に腰を下ろし、マントに包まり膝を抱える。外は夏が去り行くのを待たず、秋の気配が忍び寄る。

 記憶はいつも、秋の色をしている。

もうこうして、何人もの上司や部下をプロイセンは見送って来た。そして、これから自分を愛してくれた人が先立つのをずっと見送っていかねばならないのかと思うと胸に穿たれた穴が広がってゆく。それを初めて辛いと思う。

 プロイセンは鼻を啜り、目を細め、窓の外を見やる。白い花が風に揺れている。あの花の名前を王は知っていただろうか?……いや、きっと知らなかっただろう。プロイセンも知らないのだから。

「…さようなら。大好きで堪らない俺の最愛の人。……俺を愛してくれて、ありがとう。…ずっと、言いたかったけど、言えなかった。…親父…」

言えば良かった。あの手を握り締めて。でも、怖くて言えなかった。泣いてしまいそうで。泣いてしまえば、感情に任せてきっと、自分も連れて行ってくれと見苦しく泣いて縋っていただろう。

「…フリッツ…」

プロイセンはマントの裾を引き寄せ、顔を伏せた。でも、王が自分に与え残してくれたものを大事にして、後に繋げていかなければならない。…でも、今だけは、

「…明日からは笑うから、今日だけは泣いてもいいよな…?」

マントに染みが広がってゆく。

 

 愛しき我が子よ、お前を私は見守り続けよう。
これからもずっと、お前を愛している。…さようなら。私のプロイセン。

 

風が囁き、頬を撫でる。その囁きに、プロイセンの頬を一滴、涙が伝って落ちた。

 


お題「さようなら。大好きで堪らない私の最愛の人。」






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