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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
19 . May
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11 . January


…完結しそうにないので、取りあえず先に前編。

後編はテキストが遭難した為、今週末に…今月中には更新予定だ。申し訳!









拍手[23回]





「…………」
「プロイセン君、大丈夫?」
「…………」
「ねぇ、プロイセン君ってば、」

ぐいっと抱き起こされ、プロイセンはうっすらと目を開き辺りを見回す。視界一面、真っ白。ここは天国か、地獄か…クソ寒いからきっと、地獄だ。…ってか、ロシアが出てくる時点で地獄だ。夢に違いない。プロイセンは目を閉じる。ロシアは困ったようにぺちぺちとプロイセンの頬を叩いた。
「プロイセン君、寝たらダメだってば」
「…寝させろ。目が覚めたらベッドん中なんだからよ」
「馬鹿なこと言ってないで、現実に目を向けようよ!」
「…現実?」
「飛行機、墜落したんだよ。覚えてる?」
ベラルーシにガス代の取立てに無理矢理連行され、脅えるロシアに首根っこ捕まれ、おっかないロシア妹が突きつけるナイフにびびりつつ、

「この泥棒猫!兄さんから離れろ!!」
「お前、どこでそんな言葉覚えて来るんだよ?盗ってねぇから!!コイツが離れないんだよ!俺様は関係ねぇ!!」
「何、言ってるのかな。プロイセン君、僕と君とは一心同体じゃない」
「は?」
「そんな男のどこがいんですか、…兄さん!!…邪魔だっ、死ねプロイセン!!」
飛んできたナイフを危ういところでプロイセンは躱した。
「知るか!ナイフ投げんな!」
(もー、ヤだ!この兄妹、ってか、俺様を巻き込むな!!)
「帰るよ。じゃあね、ベラルーシ、ガス代、早く払ってね!」
「待って、兄さん、兄さん!!」

迫るベラルーシから逃げるようにして飛行機に乗ったことを徐々に思い出して来た。

「…やっぱ、夢だろ。俺、寝る…」

思い出したくないことを思い出してしまった。髪を振り乱し、血走った目をしたベラルーシのあの顔、暫く忘れられそうにない。追いかけてくるベラルーシを振り切るのにあっこっち飛び回った結果、燃料切れで墜落したのだ。
「寝ないでよ~。プロイセン君!!」
夢だ夢。寝れば覚める。意固地になって目を硬く閉じるが、ロシアはそれを許さない。ぐらぐらと揺すぶられ、気分が悪くなった来た。

「…揺するな。吐く」

重い目蓋を嫌々、開けて溜息を吐く。ロシアはほっとしたような顔する。ロシアの腕の中からよこっらせと体を起こし、冷える体を抱き寄せる。直ぐに帰るつもりだったので必要最小限の防寒しかしていない。体は既に凍るように冷たく、指先の感覚が曖昧だ。
「…寒ぃ」
思わず呟けば、ロシアは首を傾けた。
「そう?僕は平気だけど?」
「お前、着てるじゃねぇか。…ってか、お前らと関わると本当にロクな目にしか遭わないな」
本来なら、今頃、ケーニヒス…カリーニングラードの別宅での仕事を終え、ベルリンへと帰る筈だった。そこを来襲して来たロシアにベラルーシまで連行され、挙句の果て、小型機が墜落。雪原で遭難とかマジで有り得ねぇぜ。…プロイセンは思い切り眉を寄せ、自分の不憫さを呪うとくしゃみをひとつした。
「僕の所為じゃないもん。寒いんだったら、マフラー貸すよ?」
ロシアの首元を隠す。マフラーに目をやり、プロイセンは首を振った。
「いい。それ、お前の一部なんだろ。巻いとけ。…ってか、無線、生きてっかな?」
そんなもの巻かれた日にはベラルーシに八つ裂きにされかねない。それは御免被りたい。嘆いてもどうにもならいことはさっさと諦め、次の手段を講じるに限る。プロイセンは墜落した小型飛行機の半壊したドアを蹴る。中に潜り込んでいくプロイセンにロシアは続いた。
「どう?」
「…あー、死んでるな。配線切れてる。道具ねぇかな」
がさごそと機内を漁るプロイセンの邪魔をしないようにロシアは避ける。こういうときのプロイセンは逞しく頼もしい。コックピットを漁り工具箱を見つけたプロイセンが無線の箱を開け、配線を弄り始めるのをロシアは見やる。まだ、プロイセンが自分のところにいた頃、思い出せば、工業用の油の臭いがして、暇さえあればやっと手に入れたというトラバントを弄繰り回していた。それはもう何と言うか、凄い可愛がり様で、ドイツに向けられなくなった愛情をそのまま車に注いでいるようにロシアには思えた。…その車は今はどうなったのだろう?ふと思い、ロシアは口を開いた。
「君が大切にしてた車があったよね?」
「ん?俺のトラビちゃんがなんだって?」
配線を器用に繋ぎながらプロイセンは顔を少しだけ上げた。
「あの車、どうしたのかなって思って。ドイツ君とこいい車いっぱい作ってるでしょ?」
「ああ。流石、俺の弟だけあって、いい車を作ってる。家にはワーゲンとベンツがあるな。後、フランスに買わされたシトロエンがある。俺のトラビちゃんももちろんいるぜ」
「車、四台も持ってるの?」
「ベンツはドイツが通勤に使ってる。シトロエンは何か、馬が合わなくて、ガレージに放置だな。手入れはしてるけどよ。ワーゲンは俺用」
「トラビちゃんは?」
「…ドイツが乗るなって言うんだよ。排気がどうとか、環境にやさしくねぇとかいちゃもんつけるし。仕方ねぇから、年一回あるトラビちゃんの集いのときにしか乗ってやれねぇんだ」
トラビちゃんの集いって、何?…ロシアは突っ込みそうになったが自重する。プロイセンのトラバントラブっぷりは半端ない。申請して二十年、漸く手に入れたその日はプロイセンは違う話題を話していたはずなのに、いつの間にかトラバントの話に摩り替わってしまうと言う酷い有様だった。…懐かしいなぁと思いながら、深い入りしないうちにロシアは話を摩り替えた。
「無線、直りそう?」
「…ん、解らねぇ。…でもまぁ、今日は野宿決定なのは確かだな」
闇が辺りを覆い始める。工具と一緒に装備されていたらしいランプをプロイセンは灯す。幸いなことに雪がクッションになったのか羽は折れたが内部は損傷していない。小型機を運転したのはプロイセンだ。ロシアがパイロットを無理矢理頼んだのだ。ベラルーシを振り切ることに意識がいってしまい、気がついたときには満杯だった燃料は底を尽いていた。燃料切れと解るや否やプロイセンは自分の持つ最大限の技能を駆使し、大破させずに小型機を雪原に着陸させた。ただ、着陸の際、羽を雪に覆われた木に引っ掛けた衝撃で機体が揺らぎ、外へと投げ出されたが幸いなことに、プロイセンも自分も怪我もなく無事で良かったとロシアは思う。
「…あった。おい、ロシア」
小型機に備え付けられたコンパートメントを漁り、毛布を引っ張り出してきたプロイセンがロシアを呼ぶ。
「他のとこのオイルとか漏れてたらやばいから、火は炊けねぇ。でもまあ、有難い事に中は無事何で雪は凌げそうだな」
毛布を一枚投げて来た。それをロシアは受け取る。もう一枚あったらしい毛布を手に後部座席の隅っこに移動したプロイセンは鼻先まで毛布に包まった。
「一枚で大丈夫?」
「大丈夫じゃねぇけど、何年、お前のとこで極寒生活送ってきたと思ってんだ。舐めんなよ」
虚勢にも思えたが、プロイセンは寒さには意外に強い。ロシアは息を吐くと、懐からウォッカのボトルを取り出した。それに、露骨にプロイセンが眉を寄せた。
「飲む?」
「工業用のアルコールなんか飲まねぇよ」
「工業用じゃないよー、飲用だよ?」
「飲用でも飲まない。飲みすぎると体冷やすぞ」
「大丈夫だよ。僕なんかこの寒さに慣れちゃったしさ。飲まないと、眠れないし」
「眠れないからって、そんな度数の高いアルコールばっか飲んでるな。本当に体壊すぞ」
「プロイセン君、心配してくれるの?」
一緒にいる間、何だかんだ文句を言いつつも、プロイセンは世話を焼いてくれた。素で自分を怒り、ボトルを取り上げ、外に投げ捨てられ禁酒を命じられた日々が懐かしい。隠れて飲んでいたのがばれる度にガミガミと説教を食らったのは今はいい思い出だ。
「お前にガタきたら、俺にもとばっちりがくるんだよ。少しは自重しろ」
住む場所をベルリンに移しただけで、実質、ロシアとすっぱりさっぱり関係が切れた訳ではない。心臓部であった場所は復興して来てはいるはまだ問題は山積みだ。そして、ドイツと一緒に抱えている格差の問題もあって、体調は常に不調で体も随分と弱った。そこに追い討ちを食らうような問題が雪崩れ込めば、今度こそ存亡の危機に自分は立たされるだろう。…プロイセンはロシアを睨む。ロシアはその視線に押されたように開けたキャップを閉めた。
「…飲まないよ。そんな顔で睨まないでよ。…それより、外、ちょっと吹雪いてきたね」
ガタガタと機体が揺れ、風が叩く音に半壊した扉が音を立てる。
「…あんまり、酷くならねぇといいんだけど。…まあ、お前が一緒だし、捜索出てるだろうけど」
「うん。…多分、ドイツ君とこからも捜索隊出てるんじゃない?」
「…どうだろうな?…お前ん家だし、色々、難しいんじゃね?」
「何が遭ったて、ドイツ君は君を探しに来るでしょ」
「…別に、来なくたって大丈夫だけどな」
プロイセンは嘯くように呟いて、すんと鼻を啜った。ロシアは何も言わず、プロイセンが寄越した毛布を体に巻きつけた。
「ランプ、電池がもったいないから切るぜ」
「うん」
薄暗い闇が視界を覆う。風がびゅうびゅうと叫ぶ音しか聞こえなくなる。温度がしんしんと下がっていくのを肌で感じながら、ロシアはプロイセンが居ると思う場所に視線を向ける。呼吸すら押し殺しているのか、気配すら感じられない。それが怖くなって、ロシアはプロイセンを呼んだ。

「プロイセン君」

「…何だよ?」
億劫そうに返って来た返事にほっとする。
「…そっちにいってもいい?」
それに逡巡するような間があって、ごそごそと身動きするような音がした。
「今、明かり点けるから」
手探りで点けたらしいランプの淡い光が灯る。
「足元、気をつけろよ」
「うん」
狭い機内を這うように移動し、ロシアはプロイセンの確保された隙間に身を屈める。それを確認すると、プロイセンはランプの明かりを落とした。
「…冷えるね」
「そうだな。…ってか、お前、今、どうなんだよ?」
「どうって」
「体の具合はいいのか?」
別れたときお互いボロボロだった。体制の崩壊により、抑えていたものが一気に噴出した。暫くしんどかかったが、一次大戦の頃から革命に翻弄され続け、慣れてしまった。痛みにも寒さにも鈍感になった。ロシアはこくりと頷いた。
「うん。今、経済状況も大分、マシだし」
「品物、ひとつ買うのに並んでたのが嘘みたいだよな」
「そうだねぇ。…本当に嘘みたい。でも、一番、楽しかったよ。皆と一緒にわいわい、賑やかでさ」
「…賑やか、ねぇ」
周りは終始、ロシアの機嫌を伺い、脅えていた。にこにこしていたのはウクライナぐらいで、ベラルーシはロシアに近づこうものなら露骨に威嚇してくるは、不機嫌を隠そうともしない。ハンガリーにはロシア絡みで何度、八つ当たりされたか解らない。自分も二次大戦の賠償を支払う為に馬車馬の如く働かされた。あまり、いい思い出らしき思い出もない。
「…ずっと、みんなと一緒にいたかったな」
子どものように無邪気で無垢な裏には残酷さを秘めている。西の大国同様、未だに国として成熟出来ていない。自分の主張を曲げない、押し通す。…それがまかり通る世の中だ。なんて、理不尽な世界なのだろう。何も持たず、与えられず、この世界に放り出された自分が可哀想に思えてくる。…でも、まだ、自分はロシアよりは恵まれているのだろう。帰る場所がある。自分を待っているひとがいる。誰も居ない聳え立つ塔の玉座、ひとりそこから高みを見下ろさねばならない孤独には哀れみを感じるが、その孤独を分かち合うことなど真っ平だ。プロイセンはどんっとロシアに体重を掛けた。突然のことにロシアがわっと驚くのに小さく笑って、プロイセンは寄りかかる。
「…相変わらず、抱き枕にもならないぐらいの冷たさだな。体温あるのかよ?」
「ひどいなぁ。ちゃんとあるよー」
「お前もさ、夏場なら、重宝してやるのによ」
「夏?」
「クーラー代わりに一緒に寝てやるのに」
「夏だけなの?…酷いなぁ」
重なったところからじんわりと熱が伝わって温かくなってくる。ロシアはプロイセンに身を寄せた。






後編






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