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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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19 . June


爺が普のところに勉強に来てた頃のお話。世間話でその時の世界情勢の話とか出てきます。
色々、ツッコミどころもあるでしょうが、フィクションとスルーして頂ければ幸い。







拍手[16回]




「お前、酒、飲めるんだよな?」
 
そろそろ、就寝しようかと日本はテーブルの上を片付け、着替えを済ませたところでドアを叩く音が響いた。ドアを開ければ簡素な寝巻きにガウンを羽織ったプロイセンがワインのボトルとグラスを手にニカリと笑う。部屋に招き入れれば、片付けられたテーブルの上にグラスとワインのボトルを置いて、ごそりと懐から皿と紙に包まれた何かを取り出した。
「厨房からくすねてきたぜ。摘みがねぇとな」
サラミをナイフで薄く切って、チーズを盛ると慣れた手つきでワインのボトルを開け、グラスに注ぐ。濃い色をした赤がグラスに満ちるのを日本は目を細めた。
「飲め」
「いただきます」
誘いを断ると言う選択肢は日本にはない。グラスを手に取れば、縁を合わせてくる。グラスの縁が重なるその音にプロイセンは上機嫌に笑って、グラスを口元に運んだ。
「…赤はやっぱ、フランスんとこの方が美味いな。白は断然、ウチだけどな」
「そうですね。師匠のところの白ワインは甘くて口当たりが良いので飲みすぎてしまいます」
「だろ。つまみも食えよ」
「はい。頂きます」
チーズを一切れ摘んで、グラスの赤を日本は味わう。視線を上げて、プロイセンを伺えば、赤が日本の黒を捕らえ、濡れた唇を僅かに引き上げた。
「何でって思ってるだろ?」
見透かすような言葉に頷けば、プロイセンは笑みを深めた。
「ここには俺とそう簡単に酒を飲めるって言うか、気軽に相手してくれるヤツがいねぇんだよ。ルッツはまだ酒飲める年じゃねぇし、酒場まで行けばいいんだけど、そこまでして飲みたい訳でもねぇしな。かと言って、ひとりで飲むのも寂しいしよ」
「…そうでしたか」
「…うん。…ってか、俺の話ばっかだから、たまにはお前の話も訊きてぇなと思ってな」
「…私の?」
「お前の。…俺、また聞きにしかお前のこと知らねぇし」
「私のことなんか知ったって、きっとつまらないですよ」
「つまらねぇか、そうでないかは俺が決める。さあ、お前のことを話せ」
脅すような顔をして、プロイセンが笑う。日本は溜息をひとつ落とした。
「師匠は私の何が知りたいのですか?」
「…そうだな。フランスから訊いたけどよ。アメリカが来るまで、国鎖してたんだってな。よくそんなこと出来たな。ってか、鎖国した状態で良く国民賄えてたな」
「鎖国はしていましたが、流石に他の国の情報が入ってこないのは不味いので、一部は解放してましたよ。鎖国の前はスペインさんと、オランダさんと後、ポルトガルさんと。…スペインさんとはちょっと色々あって、断交してしまいましたけどね。後、ポルトガルさんも」
「何で断交したんだ?」
「キリスト教の布教が原因です。入った来た途端、大名や庶民の間にじわりじわりと広がり始めて…。キリスト教は幕府の体制を揺るがしかねない。急速な広がり方に上司は危機感を抱いて。…人身売買が行われていることも解り、そして、切支丹の一揆が遭った所為か、余計に上司も神経質になって。禁止になりました。…キリスト教布教を伴わない貿易も可能と条件を提示してくれたのがオランダさんでしたので、後は中国さんですか…。まあ、平和な時代でしたよ」
「…まあ、宣教師ってのは軍隊で言うとこの斥候みたいなもんだからな。新大陸なんか酷ぇもんだ。まずは先に宣教師を送り込み、ある程度根付いたところで反乱を起こすように煽り、そこを支配していた王を排し、自分たちがその支配者の座に着く。…まあ、俺も人のことは言えねぇけど、神の名を語り、やりたい放題だ。スペインはそれで黄金期を築いたが、その座から転がり落ちるのも早かったな」
「…そうなんですか。…そのときはやっと統一されたばかりで、これ以上、戦はゴメンだと皆、ピリピリしてましたからね。外のことより、内のことで精一杯。余計なものが外から入ってくるならば、いっそ、国を鎖せばいい。他国と交易はなくとも、内需で食べれましたし。それに元々、私は中国さんくらいとしか交流もなかったですしね」
「国を鎖すに当たって、他国からの干渉がなかった訳か。まあ、こっちじゃ、まず国鎖すとか出来ねぇな」
「国境を接してますからね。私の国は四方を海が囲んでますから。交流が少なかったことが幸いだったんでしょう。…外の世界を知らないまま…、まあ、少しはオランダさんから入ってくる情報でどうなっているのかくらいは知っていましたけれど、他人事でしたね。…アメリカさんが実際に来るまでは」
日本はグラスに口を付けた。
「それから、止まっていた時間が一気に流れ始めた。…そんな気がしますよ」
「…矢継ぎ早に新しいものが押し寄せたときはどんな気分だった?」
「溺れそう…でしたね。でも、追いつけなければ流される。流されてしまえば、見える末路は目の前に見本がありましたから、焦らずにはいられません。中国さんのようにはなりたくありませんでしたから」
「中国か。あそこも眠れる獅子とか言われてるわりには、イギリスやフランスにいい様にされてるな」
「ええ。本当に。…阿片で国民を壊されたんじゃ、国として成り行きませんからね。戦で死傷者が出るのより、始末が悪い」
「阿片欲しさに、中毒者は盗みに殺人、何でもするようになる。犯罪が増えれば治安が悪化する。愚民は支配しやすい。中国もキリスト教を慌てて禁じていたが、宣教師を送り込むよりももっと楽で簡単な手口に切り替えた」
「…本当に、欧州の皆さんはあくどいことを平気でなさる」
日本は呟いて、口を噤む。伺うように視線を上げればプロイセンは口端を上げた。
「すみません。口が滑りました。お気を悪くされたのなら申し訳ありません」
それに日本は視線を伏せた。
「気なんか悪くしねぇよ。あくどいのは本当だからな。こっちじゃ、俺は国としての歴史は浅い。俺もお前と同じ、周りを大国に囲まれて食うか、食われるかだ。幸い、俺は上司と優秀な国民に恵まれて、今がある。お前んとこもお前筆頭にお前の国を良くしたくって、国民が頑張ってるじゃねぇか」
「…はい」
「まあ、こっちじゃ、国境を接してることもあって、領土を巡ってずっと小競り合いをやってきた。それが漸く落ち着いて、今度は外に目が行くようになった。イギリスなんかはそのいい例だ。あいつの国はお前んとこと同じで島国で、目と鼻の先にあるフランスとは年がら年中、ドンパチやってたぜ。それじゃ、埒が明かないってんで、イギリスはスペイン同様、海に出た」
「私とは全然、違いますね」
「違ってて、当たり前だ。イギリスが二人もいたら、大変だぜ」
手酌でプロイセンは自分と日本のグラスに並々とワインを注ぎ、サラミを口に放り入れた。
「…イギリスさんと同じ様には無理ですけど、同等の立場にはなりたいと思ってます」
「…おう。俺が言うのも変だけど、頑張れよ」
「…はい。……師匠」
「何だよ?」
サラミを摘んだ指先を舐めたプロイセンを日本は見つめる。それをプロイセンは見つめ返した。
「…どうして、師匠は私に親切にして下さるのでしょうか?師匠が私に教えて下さることは、私にとっては利点がありますが、師匠にとって不利になることではないでしょうか?」
「…まあ、あんま今は利点はねぇけど、お前は優秀だ。物覚えが速いし、一つの立場や物事に囚われず、相手の考えや文化を取り入れて応用していく柔軟性がある。その柔軟性はこれから、この世界で生きていくには必要不可欠なものだ。それに将来、お前とは弟が同盟組んだりっすることがあるかもしれねぇし、お前の国と俺の国は離れてるし、面付き合わせてドンパチするようなことはねぇだろ。恩を売って取り損なっても、俺には損はねぇ。それとお前、頭いいし、人当たりも悪くねぇ。今後次第ではお前があの辺の盟主的な存在になりそうな気がするぜ。あの近辺じゃお前だけだしな、今のところ植民地みたくなってねぇの。真っ先にそうなってもおかしくねぇってのにな」
「…過大評価し過ぎですよ。中国さんがいますし」
「…中国はイギリス、フランス、ロシアの相手でそれどころじゃねぇだろ。未だに自分が強いと信じきって、近代化する気配もねぇ。中国が一番強かったのってモンゴル帝国の頃だろ。一時はルーシ辺りまで占領して、皆びびってたぜ」
「ウチにも攻め込んできましたよ。まあ、二度とも台風のお陰で難を逃れましたけど」
「そりゃ、幸運だったな。…何にせよ、外から目を背けていたんじゃ、喉元に噛みつかれて息の根止められても文句は言えねぇってことだ。弱い奴は強い奴に従うしかねぇ」
日本はプロイセンの言葉に頷いて、視線を伏せる。まさか、プロイセンが自分をここまで評価しているとは思わなかった。その評価が気恥ずかしいやら、面映いやらで、全身がムズムズする。自分の評価と百八十度、違う。寧ろ、プラスに評価されていることと、随分と自分に対してプロイセンが好意的なことが嬉しくて仕方がない。それが顔に出てしまいそうになるのを辛うじて、日本は押し殺した。
「…でも、未だに条約は不平等なままですしね。…そうならないように努力はしますが…」
「それは、お前たちの今後の頑張り次第だろ。…ん?…何か、話違う方向にいっちまったな」
プロイセンは首を傾けたものの、どうでも良くなったのか、グラスを開け、ボトルを手に取るが既に中身は空で、残念そうな顔をして、ボトルをテーブルへと戻した。
「…お前んとこの国民は皆、お前みたいに黒目、黒髪なのか?」
不意にプロイセンの指先が伸びてきて、前髪を掬う。それに日本は一瞬驚いて、瞳を瞬いた。スキンシップに慣れてはおらず、欧米特有の接触は嫌悪を感じることが度々だったが、不思議と嫌悪は感じず、されるがままに任せる。プロイセンの指はそのまま輪郭をなぞるように、日本の頬を撫でた。
「そうです。黒髪、黒目は珍しくもないでしょう?」
「珍しくはねぇな」
そうは言いつつ、指先は前髪を弄ぶ。赤が細められるのを日本は見つめる。その赤に下卑た色はない。子どものような好奇心ばかりがその目にはあった。手のひらが頬を撫でるのに目を瞑れば、プロイセンはケセッと小さく笑った。
「…子どもみてぇな、ほっぺたしてんなぁ」
無邪気に笑んだ相手にどう返せばいいのか解らず、頬をふにふにと撫でる無骨な指先にどう反応したらいいのか、日本は曖昧な微笑を浮かべる。
「お前はどうしたらいいのか解らないときとか、そんな顔すんのな。事を荒立てるのが面倒だって思ってんだろ?でも、嫌なら嫌だって主張しねぇとそれをいい様に取られて、好き勝手されるぜ」
むにりと頬を抓って、プロイセンは顔を近づける。それに、日本は固まった。
「キスすんぞ?」
「…え、あ、それは、ちょっと…」
焦りながら口を開くものの、嫌じゃない…そう思い、日本は混乱する。身を乗り出したプロイセンの手のひらが頬に滑る。それに身を竦めれば、日本の額を弾いて、「ケセッ」とプロイセンが笑った。
「冗談だよ。揶揄って悪かったな。でもまあ、こっちに慣れてぇなら、この程度の接触には慣れろ。それと、嫌なら嫌だとハッキリ主張しろ。お前、小さくて可愛いし、そんなんだから、ちょろいと思われて色んな奴から狙われてるぜ。暗がりに引きずりこまれないように気をつけろよ」
ワインの匂いが呼気に混じる。プロイセンは身体を起こすと立ち上がった。
「ボトルも空になったし、俺様はお休むぜ。つき合わせて悪かったな」
「…いえ。色々と為になるお話を聞かせて頂き、有難うございます。……師匠、」
頬が熱いのを自覚しながあら、日本は視線を上げる。その視線をプロイセンは受け止めた。
「何だ?」
「…私はそんなにちょろくないですし、こうみえても武道の心得がありますので、心配はご無用です。寧ろ、油断してくださるので助かってます」
「…ふーん」
プロイセンは赤を細めると、不意に腕を伸ばす。ガタンっと椅子の倒れる音が耳障りに響く。背には硬い床の感触。押し倒されたのだと理解し、抵抗しなければと思うが指一本動かすことすら出来ず、日本は見下ろす赤を見上げた。
「…武道の心得があるんじゃねぇの?」
「…師匠、何がしたいんですか?」
「お前が抜けてるから心配してやってんだろ。お前のことは買ってるんだ。他の奴に食い荒らされたら面白くねぇからな」
「…ご心配、痛み入ります」
日本はプロイセンのガウンの襟元を掴み、重心を入れ替える。視界が反転した赤は一瞬、大きく見開かれたものの、直ぐに細められ、性質の悪い笑みを口元に浮かべ、日本を見上げた。
「…師匠も、あまり油断なさらないほうがいいのではないですか?」
プロイセンの頬に触れる。見た目よりもずっと肌理の細かい質感に手のひらを滑らせる。それに日本は胸の高鳴りを覚える。赴くままに両の手のひらで頬を撫でれば、プロイセンは抗うこともなく、撫でられた猫のように目を細めた。銀色の髪に指を滑らせれば、細く柔らかく、指の間を滑る。そろりと頭部を辿り、耳の後ろを撫でる。
「…くすぐってー」
それにプロイセンが僅かに身を捩り、日本は我に返り、身体を起こした。
 
「…す、すいません!」
「何、狼狽してやがる。狼狽するぐらいなら、最初からやるなつーの」
 
腹筋だけで身体を起こして、立ち上がり狼狽えたようにこちらを見つめる日本をプロイセンは頭を掻いて見やった。
「…そろそろ、お開きにすっか。寝坊すんなよ?」
「…大丈夫です。師匠こそ、寝坊しないでくださいね」
「余計なお世話だっての。…Gute Nacht」
顎を掴まれ、頬に軽く触れるだけのキスを落とされ、日本は赤面する。それにプロイセンは満足したように笑い、部屋を出て行った。
 
「…っ、もう、何だって言うんですか!」
 
こういうスキンシップは苦手だと言っているのに。嫌だと思うそれが、プロイセン相手には嫌だと思わない。何と言う矛盾。
 
「…好きになったって、私のものになんかはなってはくれないくせに」
 
振り回されてばかりだ。…それでも、気持ちばかりが募っていくのを抑えられそうにない。グラスに残る赤を見やり、日本は溜息を吐いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
「…あー、びっくりした」
 
まさか、引っ繰り返されるとは思わなかった。見掛けによらず、日本は力があるようだ。頬を撫でた日本のすべらかな手のひらを思い出し、プロイセンは自分の頬を撫でる。自分の手とも、愛した上司の手とも違う手のひら。頬も柔らかく、唇にその感触が僅かに残る。
 
「…少しはこれで、警戒心ってものを覚えてくれりゃいいんだけどな」
 
老婆心からの最後のキスはやり過ぎだったか…と、思いながら、プロイセンは寝床に潜り込んだ。
 
 
 
 
 





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