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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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17 . February

ドイツの愛が重い。

ちょっと間違えたら、ヤンデレまっしぐらだな。オイ。…な、感じ。
…ってか、ウチのドイツはお兄様に夢見すぎかもしれない。(…いや、俺か…)
そして、親父を引っ張り出さずにいられないらしい。





拍手[40回]




 
 
 ただの愛情だと思わないでくれ。
 
 
 これはもう、どうにもならないことなのだ。だから、覚悟をしてくれないだろうか?
 こういう風に俺をしてしまったのは、あなたなのだから。
 
 
 




 
 分断されていた西と東が漸く、ひとつへと戻る日が近づいてきた。国民のボルテージは上がり、その感情の余波がドイツの心を満たしていく。久しぶりに顔を合わせたプロイセンは国の状況が状況だけにやつれてはいたものの、随分と穏やかな顔をしていた。
 
 ああ、やっと、望んでいた事が、当たり前だった日常がこの手へと返ってくる。
 
 北に連れ去られたあなたが漸く、自分の元へと。そして、昔と何一つ変わらないあの日々が戻ってくるのだ。
 あなたの存在しない日々は、自分にとってどれだけ苦痛だったか。当たり前だったその存在が奪われた恐怖と悲しみは、この身をひどく苛んだ。

 あなたなしに、俺は存在できない。

 40年と言う長い間、隔たれた壁の向こう。あなたを取り戻すことばかり考えてきた。…だから、何だろうな…。あなたへの想いは、昔は純粋な愛情だと思っていた。それが、どうして、こんなになってしまったんだろうな。

「…兄さん」

許してくれないだろうか。あなたの想いを裏切ることを。あなたが俺を弟だとしか思っていないことは良く解っているつもりだ。そして、俺もそうあろうとしてきた。…俺はあなたに嫌われることが、この世界でたったひとり孤立することよりも、今でも何よりも怖い。あなたに呆れられること、否定されることの方が怖い。…こんな形でこんなことを言うのはおかしいだろう。小さい、国になる前からずっと、あなたに嫌われるのが怖くて、あなたの手を掴んで振り払われるのが怖くて、あなたのそばに居たいと思いながら、邪険にされたらと思うと近づけなくて……、それは全て俺の杞憂だったけれど。…あなたは俺に惜しみない愛情を与えてくれた。掴めずにいた手をあなたは掴んで、いつも一緒にいてくれた。そして、あなたが俺に言った言葉の通り、俺を守るために自分を犠牲にしてしまった。…嘆いても悔やんでも、俺が犯してしまった罪は贖えない。あなたは謝罪を望まないだろう。…でも、確認しておきたいんだ。

「俺の手を取ったことを、兄さんは後悔していないのか?」
「してねぇよ。お前が振り払ったって、俺はお前の手を掴むぜ」

…あなたはそういうひとだったな。…いつも、前を見てる。俺にはそれが眩しかった。…あなたに早く追いつきたくて、肩を並べたくて…。でも、あなたはずっと俺の前にいる。いつになったら、あなたに俺の手は届くんだろう。…その背中に。国にしてもらって、それなのに俺はあなたに何も返すことすら出来なくて、揚句にはあなたをひどい言葉で傷つけたりもして…。そして、最後にはあなたが俺にくれたものの大半を、俺は自ら失ってしまった。…本当に、酷い弟…だな。俺は。

「何、言ってんだ。お前ほど良く出来た弟はいねぇよ。ルッツ」

…本当にそう思ってくれているのか?…いや、疑ってなんかいない。あなたは俺にそう言う嘘だけは吐かなかったからな。…なあ、兄さん、どうして、そんなに穏やかな顔をして笑ってるんだ。…そんな顔、…俺は見たくはないんだ。
 
「…やっと、ひとつになれるんだぜ。…俺は壁の向こうでずっと、それを待ってた」

兄さん、お願いだから、そんな顔しないでくれ。そんな目をして、俺を見つめないでくれ。俺は、あなたとひとつになんか、なりたくない。あなたが消える統一など、冗談じゃない。それなら、分断していた方がまだマシだ。

「あなたを、失いたくないんだ!」

融合なんて、冗談じゃない。これから先、まだ問題は山積みなんだ。あなたがいないと俺はとてもひとりでこの問題を片付けられそうにない。俺はあなたが消えることを望まない。あなたは俺の手を取ったことを後悔していないと言った。振り払っても、その手を取ると…。あなたが俺の手を振り払うと言うなら、今度は俺がその手を掴んで、絶対に離すものか。
 
「…聖マリア修道会、ドイツ騎士団、プロイセン、オストドイツ…あなたは、名前を変えて生きてきた。もう新しい名前は必要ないだろう。あなたもそれを望んではいない。…そして、あなたが俺の兄であることに揺るぎはない。俺があなたを忘れることもないし、あなたの存在を必要としない日は永遠に来ない。…だから、諦めて欲しい」
「……何をだ?」
「あのひとのところに逝こうと思うことを」

……ああ、やっぱり望んでいたのか。それを。…俺が気付かないとでも?…ずっと、あなたがあのひとを慕っているように、俺はあなたを見てきた。あなたがあのひと未だに忘れられずにいるのは解っている。でも、あのひとがあなたに何をしてあげられる?…辛いときや悲しいとき、あのひとはあなたのそばにいてやることは出来ないだろう?…俺なら、傍にいてやれる。あなたの涙を拭うことも、抱き締めてやることも出来る。だから、俺を見てくれ。…あのひとを想うことをやめろとは言わない。…ただ、辛いときは俺が傍にいるから。…今はそれで、いいから。
 
「…あなたを愛しているんだ」
 
向かい合ったソファ。切羽詰った真摯な目をして、ドイツはプロイセンを見つめる。…プロイセンの穏やかだった表情はみっとも無く崩れ、今にも泣き出しそうに表情はくしゃりと歪んだ。

「…何だよ。ソレ…」
「愛してる」

ずっと、その背中に叫び続けてきた。前ばかりを見てきたプロイセンに漸く、その声は届いた。プロイセンがやっと、振り返り、その目に自分を映した。

「…俺は」

プロイセンはぐしゃりと自分の髪を掴み、目を閉じる。そして、小さく息を吐いた。

「…お前にもう何もしてやれない。…あの頃みたいに強くないし弱くなった。お前を守ってやることも出来ないし、…今じゃ、お前を頼らなきゃ、存在さえ危うい。…お前の負担にだけはなりたくねぇんだよ」
「…では、訊くが、国でもなかった俺はあなたにとって負担そのものだったはずだ。あなたが居なければ俺の存在は危ういものだった。そして、俺の存在はあなたにとって、その身を脅かすものだったはずだ。…俺を負担に思ったことは?」
「お前を負担になんて、思う筈ないだろ!」
「俺もだ。今のあなたが負担だと俺は思ってない。…なあ、兄さん、その負担はあなたが本来なら背負うべきものではなかったんだ。それは俺のものだ」
「何言ってるかわかんねぇよ。……何で、そんなこと言うんだよ…」

赤い目が潤み、目の縁に雫が溜まっていく。ドイツは立ち上がると、プロイセンの傍らに跪いた。

「俺はあなたのお陰でここにいる。あなたに守ってもらわなくても、自分で立てるし、歩いていける」
「…なら、俺なんかいなくたって…」
「それでは駄目なんだ。俺の隣をあなたには一緒に歩いて欲しい。それでは、駄目なのか?」

見上げる青に耐え切れずプロイセンの赤い瞳から雫が落ちる。それを手のひらで撫で、目の縁に口付け、頬を包み、触れるだけのキスをプロイセンの唇にドイツは落とす。驚いたように見開く赤に、ドイツは微笑った。

「兄さん、これはもう、どうにもならないことなのだ。だから、覚悟をしてくれないだろうか?」
「…な、」
「こういう風に俺をしてしまったのは、あなたなのだから」
 
あなたの愛情が、俺を変えてしまった。…その責任を取って、この生が終わるその瞬間まで、俺と一緒にいて欲しい。

「なあ、兄さん俺は本当は知っていた。俺をあなたが愛するのは、あなたのたったひとつの望みのためだということを。…でも、俺はそれを叶えてなんかやらない。…そう言う俺を、許して欲しい。…あなたは、俺を許してくれるだろう?」

…ああ、俺は本当に欲が深いな。あなたのすべてが欲しい。あなたと融け合うのも悪くはないが、それでは、俺はあなたに触れることが出来ない。だから、それは嫌なんだ。


「兄さん、どれだけ、俺があなたに触れたいと望んできたか、あなたはそれをそろそろ思い知るべきだ」


見開いた赤に、自分の青が滲み、広がっていく。ドイツはうっとりとそれを見つめた。
 
 


 
「兄さん、これをただの愛情だと思わないでくれ」
 
 
 
 
 


オワリ
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