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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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23 . February



ただの愛情~の、兄さんの解答。
弟の愛が重けりゃ、またその兄の愛も重い。


2/24 加筆したら、半端ないことになった。これはハッピーエンド?…であってるんだろうか?
兄の想いは半端なく、重いものだったようです。




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 ああ、だりぃなぁ。


 七年戦争で追い詰められたときも正直、もう死んだ方がマシだと思うような、人ならばもう既に死んでいるような怪我を負っても、自分は兵を鼓舞するために立ち続けた。そうしなければ、あいつと自分の心が折れてしまいそうだった。 
 初めてと言ってもいいほどに自分と正面から向き合い、俺を理解しようとしたあいつを死なせたくなかった。それだけだった。往生際の悪さを笑われても、泥水啜っても、地を這っても、生き残ってやる。あいつを生かして、強国に伸し上がるんだと…そんな純粋で馬鹿みたいに単純な想いだけが、あの長い戦争を生き延びた自分の支えだった。…その支えだったあいつはもう既にない。

 なんで、俺、生きてんだろうな。
 あいつのところに逝く機会は二度あったってのに。

 一度目は、ドイツ帝国成立。
 二度目は、大戦で敗し、プロイセン王国解体宣言が出されてとき。

 出来れば、一度目の華々しい栄光と誇りと、ドイツを祝福する声の中、表舞台から、この世界から立ち去りたかったと今でも思う。…でも、どうしてか自分は消えなかった。そして、二度目は自ら、回避したのだ。

 我が身可愛さ故ではない。慈しんで育てた子が、その身を引き裂かれようとするのをどうして黙って見ていられる?

 北の大地の吹き荒ぶ冷たい風が、既に死に掛けたこの身を削る。愛した子がこの風に晒されることはない。冷たさに凍えることもない。それでいい。こんな、痛みも寒さも暗い絶望も知らなくていい。

 望むは統一。

 また、ひとつの国へ。

 それだけを望み、夢見ながら、弱っていく身体を叱咤し、生を繋ぐ。

 プロイセンは死んだ。
 そして、生まれた東ドイツは、正に模造の国だ。

 ああ、尽く、まがいもの。
 まがいものの国に、まがいものの俺。

 民も領土もこの身に馴染むことはない。誰もまがいものを愛さない。手を伸ばせばみんなが逃げていく。…でも、それでいいんだ。

 それで、いいんだ。
 皆が残らず、俺の中から逃げていって、空っぽになれば俺は鳥になって、あいつがいる空へと高く飛んでいけるのだから。

 

 

 


 漸く、俺の望みが叶う日がやって来て、弱った目に、ドイツの青はひどく眩しく映った。

 東側が西側へ、吸収される形で、統一は何かを急ぐように進み、その日がやってきた。…弟は、一世紀は無理だろうと思われていたことを成し遂げた。俺はそれがとても誇らしかった。ああ、俺が育てたドイツは本当に素晴らしい国になってくれた。


「もう、ひとりで大丈夫だよな?」


ああ、この言葉は愚問だな。お前はもう立派な大人で、国で、俺がそばに居なくても、ひとりでやってこれたのだから。俺なんか居なくたって、平気だろ?…何で、そんな顔するんだよ?笑えよ。

「…兄さん」

凄く、いい気分だ。こんな気分は…そうだな、ヴェルサイユでお前の頭上に王冠を授けてやったとき以来だ。…俺はとても幸せだ。

「俺の手を取ったことを、兄さんは後悔していないのか?」

お前の手を取ったことを、俺は後悔してねぇよ。寧ろ、お前が俺を選んでくれたことを感謝してるんだぜ。お前といた時間は俺に忘れていたものを思い出させてくれたしな。

「してねぇよ。お前が振り払ったって、俺はお前の手を掴むぜ」

だから、謝罪なんていらない。俺はお前を王と仰ぎ、お前の身が危機に晒されたときには、この身を持って守ると。未来永劫、お前が俺の王である限り、俺はお前に尽くすと忠誠を誓うと言っただろ。忘れたのか?…俺はお前をちゃんと守ってやれただろう?…それに、俺はお前に全部やったんだ。もう俺のものではないのだから、俺にお前が謝ることは何一つないし、何も返さなくていいんだ。何かを返して欲しくて、お前を国にしてやった訳じゃないんだからさ。

「何、言ってんだ。お前ほど良く出来た弟はいねぇよ。ルッツ」

俺には勿体無いくらいいい弟だよ。お前は。…だから、俺はすべてをお前に託せるって、全部やってもいいって思ったんだから。そして、ずっとあの壁の向こう側で願ってた。

「…やっと、ひとつになれるんだぜ。…俺は壁の向こうでずっと、それを待ってた」

…待って、待って…、心が折れそうになるときもその望みが俺を生かしてきた。まさか、こんなに早く実現するなんて思ってもいなかったけどな。…やっぱ、お前はすげぇよ。ルッツ。…でもまあ、色々あって、こうなっちまったけど、またひとつに戻れる…、お前から預かったものを返せて、俺はほっとしてる。…ちょっと、しくじって経済最悪だけど、お前なら何とかしてくれるって信じてるぜ。俺も国民も…。負担かけることになるけど、でもこの喜びに勝るものはねぇと思ってる。これで、安心して、あいつのところに…。

「あなたを、失いたくないんだ!」

何、言ってるんだ?ルッツ。…俺は負の遺産だ。もうこの国に、まがいものは必要ない。お前がいるからな。俺がいなくったってお前、一人でもやってこれたじゃないか。この先、問題は山積みだろうが、お前ならきっと解決していけるだろ。…時間はそりゃ、かかるだろうけどな。…もう、お前に俺は必要ない。手を引かれなくたって、自分で歩いて行けるだろう?もう、俺には国たる名前すらないしな。

「…聖マリア修道会、ドイツ騎士団、プロイセン、オストドイツ…あなたは、名前を変えて生きてきた。もう新しい名前は必要ないだろう。あなたもそれを望んではいない。…そして、あなたが俺の兄であることに揺るぎはない。俺があなたを忘れることもないし、あなたの存在を必要としない日は永遠に来ない。…だから、諦めて欲しい」

ああ、もう新しい名前は俺には必要ない。消えてゆくだけの役目を終えた国の成れの果てに何を望む?…もう、お前に俺は必要ない。なのに、何をお前は俺に諦めろと言うんだ。

「……何をだ?」
「あのひとのところに逝こうと思うことを」

…何、言ってんだよ。…お前、

「……ああ、やっぱり望んでいたのか。それを。…俺が気付かないとでも?…ずっと、あなたがあのひとを慕っているように、俺はあなたを見てきた。あなたがあのひと未だに忘れられずにいるのは解っている。でも、あのひとがあなたに何をしてあげられる?…辛いときや悲しいとき、あのひとはあなたのそばにいてやることは出来ないだろう?…俺なら、傍にいてやれる。あなたの涙を拭うことも、抱き締めてやることも出来る。だから、俺を見てくれ。…あのひとを想うことをやめろとは言わない。ただ、辛いときは俺が傍にいるから。…今はそれで、いいから」

お前の言ってること、全然、解らねぇよ。何、言ってるんだ?…解ってるんだったら…、もう、いいじゃないか。あいつのところに俺を逝かせてくれ。それを想いながら、俺は今まで生きてきた。…もう、楽になりたいんだ。

「…あなたを愛しているんだ」
 
向かい合ったソファ。切羽詰った真摯な目をして、ドイツはプロイセンを見つめる。…プロイセンは目を見開き、ドイツを見つめる。穏やかだった表情はみっとも無く崩れ、今にも泣き出しそうに表情はくしゃりと歪んだ。

「…何だよ。ソレ…」
「愛してる」

アイシテル?…何だ、それは?…その言葉は違う奴にでも、言ってやれよ。俺に言ったって仕方ないだろう?…なあ?…何で、そんな目で俺を見るんだよ。

「…俺は」

プロイセンはぐしゃりと自分の髪を掴み、目を閉じる。…ドイツが何を考えているのか解らない。…何故、逝こうとする自分を引きとめようとしているのか。 ただ、胸が締め付けられるように痛い。そっと吐き出すように、プロイセンは小さく息を吐いた。

「…お前にもう何もしてやれない。…あの頃みたいに強くないし弱くなった。お前を守ってやることも出来ないし、…今じゃ、お前を頼らなきゃ、存在さえ危うい。…お前の負担にだけはなりたくねぇんだよ」
「…では、訊くが、国でもなかった俺はあなたにとって負担そのものだったはずだ。あなたが居なければ俺の存在は危ういものだった。そして、俺の存在はあなたにとって、その身を脅かすものだったはずだ。…俺を負担に思ったことは?」
「お前を負担になんて、思う筈ないだろ!」
「俺もだ。今のあなたが負担だと俺は思ってない。…なあ、兄さん、その負担はあなたが本来なら背負うべきものではなかったんだ。それは俺のものだ」

壁が壊れ統一が実現した今、今の自分に微塵の存在価値など残っていないことは、自分自身が一番に承知している。もう、オストは、プロイセンと同じく過去の遺物になるのだ。そして、ドイツの中で美しかった思い出の一部に自分はなりたいと思っている。ずるずると無様に生きながらえることなど、望んでいないし、望む者もいない。

 ああ、なのに何故、ドイツは自分を引き止めるんだ。

 弱くなった。この40年で、酷く脆く、そして愚かになった。もう、何かに縋らなければ、自分は心さえ保てない。過酷な冬の冷たさは色んなものを自分から奪っていた。そして、最後に残ったのは、消失という希望。この世のすべてから解き放たれ、土に還る。…それをどれだけ、切望してきたか。その希望すら抱くことを許さないのか。…目の前が真っ暗になり、プロイセンはドイツを呆然と見つめる。

「何言ってるかわかんねぇよ。……何で、そんなこと言うんだよ…」

ドイツが立ち上がり、傍らに膝を付く。プロイセンは今にも崩れそうな表情を見られまいと顔を背けた。…弱くなった自分を見せたくはなかった。いつまでも、ドイツの中で自分は強く勇ましい、昔、読んでやった物語の英雄ようでありたかった。でも、それは崩れようとしていた。

「俺はあなたのお陰でここにいる。あなたに守ってもらわなくても、自分で立てるし、歩いていける」
「…なら、俺なんかいなくたって…」
「それでは駄目なんだ。俺の隣をあなたには一緒に歩いて欲しい。それでは、駄目なのか?」

俯いた頬を撫でる手のひらに、堪えていた涙が落ちる。頬を唇が滑り、目の縁に口付けられ、反射的にプロイセンは目を閉じる。頬を包む手のひらが顎を上向かせ、触れた唇にプロイセンは目を見開いた。一瞬、何をされたのか解らず瞬いた斜陽の赤に、冬の空の青が映る。

「兄さん、これはもう、どうにもならないことなのだ。だから、覚悟をしてくれないだろうか?」
「…な、」
「こういう風に俺をしてしまったのは、あなたなのだから」

…どうしてだ、どうしてだよ?何故、俺を選ぼうとする?俺はずっと、お前が愛したあの子の手をいずれは取るんだと思ってた。だって、お前はあの子の前では良く笑ってたじゃないか。俺はずっとお前の表情を曇らせてばかりだった。…神聖ローマ、お前はずっとあの子を愛してた。その想いがドイツにも残った。だから、俺は、何かをお前に望むのを止めたんだ。俺を愛してくれるのはやっぱり、あいつしかいない。お前を俺が愛したのは、俺が死ぬ為だ。俺があいつのところに逝く為だ。

「なあ、兄さん俺は本当は知っていた。俺をあなたが愛するのは、あなたのたったひとつの望みのためだということを。…でも、俺はそれを叶えてなんかやらない。…そう言う俺を、許して欲しい。…あなたは、俺を許してくれるだろう?」

…知ってた?…何でだ、どうしてだ?解ってるんだったら、俺を楽にしてくれ。殺してくれ。あいつのいない世界は酷く苦しくて、もう息が出来ないんだ。

「兄さん、どれだけ、俺があなたに触れたいと望んできたか、あなたはそれをそろそろ思い知るべきだ」

見開いた赤に、青が滲む。

 絶望は、こんな色をしているのか。

 俺はずっと、誰かに愛されたかった。愛して欲しかった。それが欲しくて仕方がなかった。神の愛は尊すぎて冷たくて、温かいもの、この身を抱き締めて、微笑んでくれるやさしい愛が欲しかった。最初にそれを俺に与えてくれたのは、あいつだった。あいつがいなくなって、俺はそれを失ってしまった。それから、俺はずっと、自分を愛してくれたあいつのところへ逝きたくて、……でも、俺はあいつと約束したから、それを果たせないうちはそれは出来なくて。…積もっていく矛盾した想いの捌け口を探して、もうどうにでもなればいいと無情な時の流れ身を任せるのを覚えた頃、お前に会った。ああ、これで俺はあいつのところに逝ける。だから、俺はお前を愛することが出来た。血肉を分け与え、俺の代わりになるものを愛することは何と簡単で容易かったことか。

 俺は、お前を愛してはいなかった。

 死ねない身体を何度、呪ったか解らない。…国になりたくて、領土を奪い、民を手に入れ、列強に名を連ね…ああ、満足だった。全てが満たされた気がした。…でも、違ったんだ。あいつがいなくなって、俺は知ってしまった。置いていかれるということがどういうことなのか。今まで散々、俺は色んな奴を見送って来たというのに、残される者の寂しさと悲しみを身を持って知ってしまった。

 心に穴が空いて、暫くは立つ事さえ出来なかった。どうして、俺も一緒に連れて行ってくれないんだとあいつを俺は恨んだ。…でも仕方がない。俺は国だから。

 そして、俺は思った。

 国でなくなる為には、どうすればいいか?

 あいつが死んで、暫くして戦争が始まった。フランスに攻め込まれ、国土は荒廃し、このままでいれば死ねると思った。…でも、それをあいつは喜ばない。そんな惨めな最期を遂げて、どの面下げて、あいつに会いに行ける?…そんな時だよ、お前が俺の前に現れたのは。

 俺の祈りに神が天使を遣わせた。俺の望みを叶えてくれるために。

 その喜びはお前には解らないだろうな。すべてをお前に託し、お前を立派な国にしてやれば、俺はあいつのところに胸を張って会いに行ける。…だから、これ以上、俺を惨めにさせないでくれ。もう楽にさせてくれ。お願いだ。これ以上、俺を愛そうなどとしないでくれ。


「兄さん、これをただの愛情だと思わないでくれ」


ああ、お前はまだ俺に生きろと言うのか。俺をその言葉で縛り、地に留めようと言うのか。…俺は国ではない。お前の想いだけが、俺をこの世界に繋ぐ。


 ただの愛情ではないと言ったな。その愛情が俺があいつを想う気持ちに勝るとでも?


 ハッ、お前の言葉を後悔させてやるよ。俺の手を取ったことを。そして、思い知ればいい。その言葉の甘さがどれだけ、上辺だけのもで意味などないと言うことを。

 生半可な気持ちなど、願い下げだ。俺が欲しいと言うのなら、お前の全てを俺に寄越せ。俺だけを見ろ、俺だけを愛せ。あいつはそうして、ひとならば与えられるあらゆるすべての幸福を祝福を俺に捧げ、俺を生かしてくれたんだ。

 その覚悟がお前にあるというなら、俺はお前の手を取ってやるよ。

 俺は欲深なんだ。…あいつのもとに逝くのを諦めろと言うのなら、それなりのものを、お前に差し出してもらわなければ、割に合わないだろう?

 願い祈り望んだものを諦め、お前と共に歩む絶望を受け入れるんだ。
 心が満たされないのならば、俺はいつだって簡単にお前の手を今度は振り払うぜ。

 

 

 本当に、その覚悟はあるんだろうな?
 さあ、その覚悟を俺に見せてみろ。

 

 


「ただの愛情でないと言うなら、もっと深く依存するまでに俺を愛せ」

 

 

 

 


 

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