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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
19 . May
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21 . April


ベルリン陥落と陥落後と。


消失がハッピーエンドならば、存在することはバッドエンド…なのかもしれない。


作中の年表はこちらを引用させていただきました。




拍手[35回]




ケーニヒスベルクが陥落したとの知らせをドイツが受けたのは、4月半ばのことであった。

「兄さんは、…プロイセンは無事なのか?」

伝令兵はそれに無言で首を振った。ドイツは「そうか」と呟くように言い、部屋を出て行くように促した。

 


1943年7月 イタリアが連合軍に降伏。ドイツに宣戦布告。

「…ごめんね。俺はお前を裏切る。…許してなんて言わないよ。ドイツ、オレももうお前が壊れていくのを見たくないんだ。だから、オレはお前を止めるために銃を向けるよ。……早く、目をさまして!」


イタリアは泣きながら、俺に銃を向けてきた。


1944年12月 枢軸側だったハンガリーが宣戦を布告。

「…どうして、こうなっなっちゃんだろうね。…ドイツ、プロイセンはあなたにどうして欲しかったのか、考えてみて?」


ハンガリーは悲しげにそう言って微笑み、踵を返した。

 

 

 その後も、裏切りが続く。
 どうして?…上手くいっていた。
 なのにどうして、壊れいく?

 

 


「…私は最期まで戦います。一度始めたことです。終わるときは…そうですね、私と言う「国」が終わるときだと思っています。…師匠は私に「適当なところで、手を引け。同盟に殉じる必要はない。引き際を間違えるな」と仰いましたが、私はもう引けないところまで来てしまいました。不肖の弟子がお世話になりましたとよろしくお伝えください。…ドイツさん、御武運をお祈りしています」

 

 


 そう言って、未だに戦い続ける国は、日本と俺だけだった。
 その日本も、米軍の攻撃に押され、壊滅的ダメージを受けていた。
 泣けばいいのか、笑えばいいのか解らない。皆が俺を裏切っていく。そして、孤立していく。

 ベルリンは度重なる空襲でぼろぼろだ。兵士の大半を最早、失った。…俺はどうすればいい?どうすれば、いんだろう?…兄さん、兄さん、どうして、あなたはここにいない?…俺を助けてくれ!

 

『この戦争は負ける。そのとき、お前は自分の犯した罪の重さを知ることになるだろう。その罪の代償にお前は大事な大切なものを失うことになる。泣いても叫んでもそれは決して戻ってはこない。…盲信を信じる愚か者に神は決して祝福を与えはしない。お前は嘆きの淵に立ち続け、贖えない罪を悔い、悲しみ続けることになるだろう』

 

…兄さん、あなたの言った通りになったしまった。

 


1945年2月 ドレスデン空襲
1945年3月 連合軍(西部戦線)、ライン川を渡河
1945年4月16日 ソ連軍、オーデル川を渡河 ベルリン攻撃を開始
1945年4月24日 ソ連軍、ベルリンを包囲
1945年4月25日 連合軍(西部戦線)、トルガウでソ連軍と合流
1945年4月28日 ムッソリーニ、パルチザンに銃殺される

1945年4月30日 アドルフ・ヒトラー総統、ベルリンで自殺

 


俺は贖うことすら難しい過ちを犯してしまった。

 


 長い悪夢から目が覚めたときには、もう何もかもが遅かった。

 

あなたが俺にくれた「国民」を殺してしまった。
あなたが俺に捧げた「領土」を荒廃させた。
あなたが上手くやっていけと言った「隣人」を傷つけた。

 

1945年4月 ソ連軍、ウィーンを占領 チェコスロバキア、臨時政府樹立 連合軍(西部戦線)、エルベ川到達
1945年5月2日 イタリアのドイツ軍降伏
1945年5月7日 ドイツ、カール・デーニッツ総統 ランスの連合軍司令部で無条件降伏

 

 身体がどこもかしこも痛い。痛くて、立っていられない。暗くて寒い。冷たくて、痛い…兄さん、痛い…いたいよ…おれをたすけて…。

 

 一際鋭い痛みが胸を穿つ。感じたことのない痛みにドイツは崩れ、床に伏した。心臓が軋み悲鳴を上げる。身体を丸めたドイツは歪む視界を眇める。視界いっぱいに赤が広がっていく。
(…にいさんの、いろだ…にいさん、そこにいたのか…)

 

「…ねぇ、痛い?」

 

頭上から降ってきた場違いに明るい声に、ドイツの意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 ああ、ここもやはり瓦礫になっちまったか。

 プロイセンは軍用トラックからの幌を捲り、ベルリンの市街を見回す。街路は機甲操車のキャタピラに踏みにじられ、石畳の美しかった街路は見る影も無い。空襲の名残と市街戦の機関銃の弾跡が生々しく痛々しい。それに心臓が軋む。プロイセンは胸を押さえる。それを傍らに従う青年が気遣う。
「大丈夫だ」
心配そうな顔をする青年にそう言い、プロイセンは視線を伏せた。

連合国が宿舎にしているカールスホルストの工兵学校の前で、松葉杖を付いたプロイセンは青年の手を借りトラックを下りる。

「…行ってくる。お前はここで待ってろ」
「解りました」

青年を待たせ、プロイセンは宿舎へと入る。

 人々の顔は一様に暗い。そして、この地を占領した連合国軍の中で陽気なのは、ロシアとアメリカのみだろう。フランスもイギリスも酷く疲れた顔をしていた。

「生きてたのか、プロイセン」

会議室のドアを開いたプロイセンに満身創痍のフランスが顔を上げる。同じように消毒液臭いイギリスが太い眉を寄せた。
「…死ににいったんだが、生き残った」
「ハッ、悪運の強い奴だ。…この落とし前、お前はどう着ける気だ?」
毒づく様に顔を上げたイギリスの顔色は悪い。どこの国もこの戦火で傷を負った。プロイセンは目を閉じた。
「…死ねと言われれば死ぬつもりだ。ドイツを俺は止められなかった」
「ああ、死んでもらう。お前の残した軍国主義がすべての元凶だ。お前さえいなければ、ドイツもトチ狂ったりしなかっただろうさ!」
八つ当たりのようにイギリスは怒鳴り、口を噤む。プロイセンの軍国主義は既に滅びていた。それを誰もが知っていた。だが、プロイセンは何も言わずにそれに頷いた。
「…ああ、そうだな。その通りだ」
「…プロイセン、お前の所為じゃないだろう。否定しろよ。この戦争はお前の戦争じゃなかった。ドイツの戦争だっただろ?」
フランスが言う。それにプロイセンは赤を細めた。
「…普仏戦争の際、オットーがお前に遺恨を残さぬように進言したが、俺はそれを蹴った。…それを後悔している。…それがなければ、前の大戦でお前はそのときの遺恨を晴らそうとはしなかっただろう。ドイツも多額の賠償に苦しみ、自棄になることもなかった…。だから、俺が悪いんだよ」
昔のことを悔いたってどうにもならないけどな。…プロイセンは息を吐く。
「…ハッ、だから俺はあのとき程々しておけと言っただろうが、このクソ髭が。ドイツがああなったのにはお前にも責任があるぞ。あんな途方も無い賠償吹っかけやがって。大目に見ていれば、こんな戦争にはならなかった」
「ああ、そうだよ!でも、俺は譲れなかった。仕方がないだろ。俺だって辛かった。国民も苦しんだ。出来れば穏便に済ませたかったさ。…でも、前の戦争のことがあった。世論は厳しい賠償を望んでいた」
フランスは声を荒げそう返し溜息を吐き、イギリスは口端を歪ませた。
「…目先の利益に目を眩ませるからだ。…その結果がこれだ」
毒づくようにそう言い、イギリスはプロイセンを見やった。
「…ドイツのナチズムの発祥はお前ではない。それは俺たちがよく知っている。お前はどちらかというと民族のない国家だったしな。…だが、お前の解体はもう止められねぇぞ。決定した」
「王も既に去った。俺が戴く者は誰も居ない。解体の用意はとうに出来ていた。…なのに解体されないままずるずる来てしまった。今でも不思議で仕方がねぇよ。覚悟は出来てる」
「…潔すぎだろ。今まで散々、生き汚く足掻いて来たくせにさぁ」
「もう疲れたんだよ。…さっさと楽になりたい」
「楽にはしてやれねぇな。ドイツはロシアに殺されかけて昏睡状態だ。ドイツの国民は「ドイツ」を許さないだろう。国民はナチスの象徴だった「ドイツ」を望まない。だが、「ドイツ」が無くなるのは困る。ロシアの干渉を防ぐ要が失われるのは俺らとしても痛い。…だから、ドイツは新しく生まれ変わる必要がある。…プロイセン、お前が「ドイツ」になれ」
イギリスが言う。それに、フランスは頷いた。

「お前なら、この「ドイツ」を別の形で復興させていくことが出来るだろう。正しい方向へ」

…多分、そうすることが一番良いのだろう。自分はそうやって時に流され、与えられた名を受け入れ生きてきた。…でも、駄目だ。自分は「プロイセン」であって「ドイツ」にはなれない。プロイセンは目を閉じる。
「…俺は戦うために生まれてきた。戦うことで「国」になった。…これからこんな大きな戦争はなくなるだろう。俺の存在意義はもう当の昔、普仏戦争の際に失われた。…ドイツは、…あいつはまだ若い。…チャンスを与えてやってくれ。ドイツは自分の過ちを認め、これから贖っていく。この過ちを受け入れ、お前らと協調してやっていけるはずだ」
プロイセンは言葉を切った。フランスとイギリスはプロイセンを見やる。
「…ドイツの軍国主義の象徴として、ドイツが招いた惨事は俺が責を追う。その責を負い「プロイセン」は滅びる。…ドイツを許せとは言わない。あいつに贖うチャンスと時間をくれ。頼む」
深く頭を垂れたプロイセンにフランスは溜息を落とし、イギリスは更に眉間の皺を深めた。
「…馬鹿じゃねぇの。お前、度々、あのちょび髭上司に楯突いて来たんだろ?敢えて汚名を被る気か?」
「…ああ」
プロイセンは頷く。
「国民は「ドイツ」を望まねぇぞ。ドイツ人たるアイデンティティさえこの戦争で壊された。ホロコーストに送られた者たちや、戦争で家族を失った者達の嘆きと悲しみは深い。今は解放され、戦争が終結したことで不安が解消されたことだけで安堵しているが、時勢が落ち着けば、こうなった原因であるドイツを憎むようになるだろう」
「だが、ドイツ国民にも責がある。あの上司を選んだのは国民だ。国民は「ドイツ」と供に、この戦争の過ちを認め、償っていかなければならないだろう。国民とともにもう一度、やり直す。それをやるのは俺じゃない。ドイツだ」
プロイセンはイギリスを見つめる。イギリスは深く息を吐いた。
「…何故、庇う?…お前はドイツを憎いと思わないのか?お前があいつに与えてやったものは破壊されつくした。そして、失われた」
「…あいつにやったものだ。あいつがどうしようが俺にはもう関係のないことだ。……そう言えればいいんだろうな。…「プロイセン」としての俺はあいつを殺してやりたくて仕方がなかった。憎くて憎くて気が狂いそうだった。でも「ギルベルト」の俺はあいつが可愛くて愛おしくて、何だってしてやりたいと思うし、何だって訊いてやりたいと思うんだ…」
プロイセンは顔を歪ませた。
「…イギリス、お前になら俺の気持ちが解るだろう?」
問われてイギリスは眉を寄せた。
「…解りたくないけどな」
小さく呟く。それにプロイセンは小さな笑みを浮かべた。
「俺はあいつが国として立ったときに消えるべきだった。そう出来なかったのは多分、未練なんだろう。…俺が死ぬことがドイツの為だったんだ。あいつはまだ若い。肉親と思えるような近い人間の「死」をあいつは知らない。その所為で失うことの「痛み」を知らないまま来てしまった。そして、こんなことになってしまった」
プロイセンの言葉にフランスとイギリスは俯く。親しい者の死はいつだってやさしい痛みと悲しみをこの身に残す。決して人の生の流れと、自分たちの生の流れは交わることはあっても必ず違えてしまう。でも愛した者の死はこの身の「強さ」へと変わっていくのだ。
「…お前は本当にそれでいいのか?…自分の名が地図から消える。人々から忘れ去られる。…それで本当にいいのか?」
フランスは口を開く。
「「プロイセン」になる前の俺の名は「ドイツ騎士団」だ。俺はドイツを守る為の存在だ。ならば、俺は自分の定めに殉じる。ドイツは俺が仕えると約束した「神聖ローマ帝国」だ。俺はあいつに助けられた。あいつが認めてくれたから国になれた。…俺はその恩を返す」

『…俺はここに誓う。…ドイツ、お前を王と仰ぎ、お前の身が危機に晒されたときには、この身を持って守ると。未来永劫、お前が俺の王である限り、俺はお前に尽くすと忠誠を誓う』

あの誓いから本当に遠くに来てしまった。プロイセンは思う。あんなにやさしく美しかった日々はもう二度とは戻って来ない。もう守ってやることさえこれで出来なくなる。でも、それでいいのだ。もっと早くそうしなければならなかった。あの手を離すことがやさしさだったのだ。

「…やっぱり、そうだったのかよ」
「…じゃなきゃ、お前があそこまで尽くす訳ないしねぇ」
遠い昔、一緒に暮らしたこともあった何年時が流れても、成長することがなく幼い少年のままだった。その少年の心臓を止めたのは自分だった。フランスは目を閉じる。
「…チャンスか。やりなおすことが出来なかったら、お兄さん、今度こそ、ドイツを殺すよ?」
「ああ。構わない。俺は止めない。…止めることは出来ないだろうしな」

 

 懐かしい日々が瞼の裏を過ぎる。

 

プロイセンは目を閉じた。

 





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