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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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02 . January


バイト君の忙しい年末年始の一部始終。


今年もコンビニをご贔屓頂ければ、幸いです。









拍手[20回]



めりくりあけおめ!今年もよろしくお願いします。







 
「お前、ところでクリぼっち?」


 
 
どこでそんな、期間限定流行りの日本語覚えてきたんだ?…レジを打つ手を止め、顔を上げればニコニコと上機嫌な顔のうさぎさん。俺はレジを再開する。
「…ですけど、クリスマスも俺はバイトですよ」
「バイト、何時からよ?」
「午前零時から」
「なら、時間あるな。じゃあ、お前、参加な」
オイオイ、俺の都合はまるっと無視して何、勝手に決めてるんスか。
「参加って、何に参加何ですか?」
「クリスマスパーティだよ。今年は菊ん家でやるんだ。皆、来るし、お前も来るよな?」
皆、来るのか。なら、顔ぐらい出した方がいいのか。…それにしても、各国のと皆様方と仲良くなったな。俺。
「パーティは何時からですか?」
「三時から、飲み食いするぞ。参加料は花見んときと一緒で食い物か飲み物を持参な」
「解りました」
頷く。また、あの美味しい多国籍の料理の数々が味わえるのか。花見のときのことを思い出し、唾液がじんわりと滲んだ。
「んでな、俺様、おはぎがいいぜー」
「季節外れじゃないですか。…って、さり気に指定ですか」
何気に持参品に注文が入る。エコバックに商品を詰めつつそう言えば、うさぎさんは口を尖らせた。
「ケーキはよ、ヴェストがシュトーレン焼くって言ってたし、フランシスも何か作るって言ってたしな。アントーニョはしこたまチュロス持ってくるだろうし、…あ、アーサーのスコーンとアルフレッドの青いケーキはお断りだけどな。足りないのは和のスイーツだろ?」
「ルートヴィッヒさんとフランシスさんのケーキは楽しみですけど、アーサーさんとアルフレッドさんのは同意です。でも、クリスマスにあんこは激しくミスマッチな気がするんですけど」
「いいじゃん。あんこ最高!あんここそが日本の甘味だろ!…だから、おはぎにしろ。無理ならどら焼きで勘弁してやる。羊羹でもいいぜ!」
「自分が食べたいだけじゃないですか。…でもまあ、善処しときますよ。234円のお返しです」
うさぎさん、羊羹、まだブームなのか。…いっそ、羊羹、生クリームでデコってやろうかと思うが、想像したら胸焼けがした。…うさぎさんにお釣りを返す。
「じゃ、24日三時に菊ん家に集合な!遅刻すんなよ!」
彼女いない、クリスマスは家族とバイトノルマのケーキを食う予定だった俺に、こうして予定が入り、それはまあ、思い出に残るクリスマスとなった。そして、慌ただしく、大晦日がやってきた。勿論、俺はその日もバイトである。大晦日は地方から来てるバイトの子が帰郷してしまう為に人手は足りなくなるが、まあ、そんなに忙しくはない。忙しくなるのはいつもは暇な一時から。初詣帰りの客が温かい飲み物と食べ物を、まあ、ちょっと小腹を満たすためにやって来るのだ。補充をコマメにしないと、直ぐに飲み物も肉まんとかも切らしてしまう。欠伸を噛み殺す暇もなく働いて、一息入った頃、本日の労働も終了。俺と交代で入ってきたバイト仲間と新年の挨拶を交わし、店長のポケットマネーから年末年始手当なお年玉を頂き、店を出る。外はまだ暗く、吐く息は白い。マフラーを締め直し、ニット帽をかぶり直したところで、肩を叩かれた。
 
「ひゃ!」
 
驚いて、飛び上がる。振り返ればニヨニヨ顔のうさぎさんとその御一行。本田さんがにっこりと笑った。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します」
「Porsit Neujiahr!今年もよろしくな!」
「Porsit Neujiahr 兄さんが世話になった。今年も何かと兄さんがお前に迷惑を掛けるだろうが、よろしく頼む」
「Bonne Annee!今年もお兄さんをよろしくね♪」
「!Feliz Ano Nuevo!親分もよろしくやで~。あ、腹減ってへん?チュロスあるで、食うか?」
「A Happy New Year!今年もよろしくなんだぞ!」
「A Happy New Year …去年は世話になったな。…ってか、別に今年も仲良くしたいわけじゃなんだからな!」
本田さんの丁寧な挨拶にこちらこそとなりつつ、うさぎさんの凄く楽しそうな悪いイイ顔にムキムキさんが何気にフォローに入る。元旦早々からさり気にセクハラしないでくれませんか、髭さん。親分さんにチュロスを握らされ、ハンバーガー君に肩をバシバシ叩かれ、ちょっと痛い。眉毛さんのツンデレに苦笑い、各国語での新年の挨拶に、俺も挨拶を返す。
「あけましておめでとうございます。昨年は色々とお世話になりました。今年もよろしくお願いします。…で、皆さん揃って、何事ですか?」
初詣帰りの客らしい人々が遠巻きに俺らを眺めつつ、通りすぎていく。背の高い外国人集団に囲まれて、凄い目立ってるし。
「初詣行って、初日の出見に行くぞ。んで、大晦日もバイトな勤労なお前を労いつつ、連れて行くかって話になったんで、迎えに来た」
「…そうですか」
さっさと帰って、雑煮食って、爆睡。寝正月万歳!するつもりでいたのだが、早くも予定は瓦解した。何か、眠気も吹っ飛んだし、…ま、いっか。ぞろぞろと俺たちは神社へと移動する。

「…皆さん、羽織、袴ですね。どうしたんですか?」

由緒正しき、日本の礼装に身を固めた御一行は本当に目立つ。何か、普段着な俺だけがこのメンツの中で浮いている。
「菊に頼んで、揃えて貰ったんだぞ!」
「日本の由緒正しき、お正月を満喫されたいと言われて、サイズ探すの大変でしたよ。本当に」
「そうでしょうね。でも、皆、似あってますよ」
「お兄さんは何、着ても似合うからねー」
「キモノは何というか、身が引き締まるな」
「でも、ちょっと苦しんだぞ」
わいわいがやがや、他愛のない会話を交わしてるうちに神社に到着する。まだ五時過ぎと言う時間帯の所為か、人は多くはない。列に並ぶが、うさぎさんとハンバーガー君が挙動不審気味にきょろきょろと忙しい。それをムキムキさんが左手にうさぎさん、右手にハンバーガー君で制御している。
「あれ、美味そう!買ってもいいか?」
イカ焼きの匂いに鼻をひく付かせ、うさぎさんが言うが、にべなくムキムキさんに却下される。
「駄目だ。帰ったら、朝飯だろう。我慢しろ」
「射的があるんだぞ!ギル、勝負だ!!」
「後にしろ。兄さんも乗り気になるな。ふたりとも、サンパイが終わるまで大人しくしてろ!」
…やんちゃな子ども(実際にはいい年した大人だけどな)に手を焼かされるお父さんみたいだな、…ムキムキさん。苦労が忍ばれるよ。…列は進み、俺らの番になる。本田さんが参拝の仕方を皆に説明し始める。
「姿勢を正して、賽銭箱に事前にお渡しした小銭を奉納してください。鈴は乱暴に鳴らしてはいけませんよ。軽く紐を振る程度です。もう一度姿勢を正します。90度の礼で、二回拝みます。胸の前で二回、拍手をします。手を合わせたまま、今年一年、自分への誓い神様に立ててください。そして、もう一度90度の礼で、一回拝みます。説明が解らなかったら、私の真似をしてくださいね」
本田さんの言葉に他の参拝客も聞き入っている。お願いじゃなくて、誓いを立てるって初めて訊いたけれど、毎度神様にお願いで他力本願は良くないよな。…俺も皆に倣って、財布から小銭を取り出し、姿勢を正し、奉納する。鈴を振り、もう一度姿勢を正して、二度、拝礼する。隣の本田さんは慣れているのか、所作が美しい。他の皆もぎこちないながらも本田さんに倣う。柏手を二回。…さて、俺は何を誓おう?
(今年も皆と仲良く、馬鹿騒ぎが出来ますように)
誓いと言われたが、やっぱりお願いになってしまう。ちらりと他の面々を伺うと真剣な顔をして、誓いを立てていた。一礼して、後ろの参拝客に前を譲って、恒例のおみくじを引く。俺は中吉だった。全般的に好調な一年らしい。新たな出会いが期待できると書いてある。他の面々は本田さん、ムキムキさんが吉。ハンバーガー君が大吉、髭さんと親分さんが中吉、眉毛さんとうさぎさんが末吉だった。
「…まあまあですねぇ」
「余り、高望みしても仕方がないししな。日々の平凡が一番だ」
「ですよね」
「新たな出会い有りか。可愛い女の子と知り合いになれれば、いいんだけどねぇ」
「金運イマイチやんなぁ。節約せい書いてあるけど、どこを節約すればええんやろなぁ」
「末吉かよー。チェチェー」
「凶じゃなくて良かったじゃないですか。それに結構、イイ事書いてありますよ」
「そうだよな。前向きにいかねぇとな」
「ですよ」
「HAHAHAHAHAHA!俺は今年も絶好調なんだぞ!…で、これはどうすればいいんだい?」
ハンバーガー君が首を傾けた。
「くじは持ち帰って、自分の戒めへとしてもいいですし、結び所に納めて、さらなる御加護をお願いしても良いですよ」
「ふぅん。日本の神様は親切だな。結んで来るか」
皆で結び所に移動し、おみくじを結わえると、「よし!」とハンバーガー君がうさぎさんを振り返った。
「ギル、勝負だ!」
「ハン!返り討ちにしてくれるわ!」
羊羹サバゲーの一件以来、ハンバーガー君はゲームでうさぎさんに負けたのが余程悔しかったのか、うさぎさんに何かと勝負を挑むようになったらしい。それを除いても、うさぎさんとハンバーガー君は気が合うようで、何かとつるんでは遊び回っているようだ。
「…仲、いいですね。あのふたり…」
「…だな。兄さんも年長者らしく、アルフレッドを諌める側に回ってくれればいいんだが、一緒になって馬鹿を率先してやるから、困る」
溜息混じりにムキムキさんが言う。
「根っこは似たもの同士だから、仕方ないんじゃない?…ってか、アーサー、涙目になってるけど。…羨ま悔しいの?」
「な!? 別に羨ましくも悔しくもないわ!ギルベルトになりたいなんて、思ってないんだからな!」
思い切り眉毛さんが否定するが、否定になってないし。
「…思っとるんやん」
チュロスを食い終えたのか、サーターアンダギーを貪り食ってる親分さんがぼそりと言う。それに眉毛さんが涙目になる。…あー、どうしたもんかと思って、口を挟もうかどうか迷っていると、射的の屋台から歓声が上がった。
「逸れても困りますし、ここでは他の方の邪魔になりますから、移動しましょうか」
「そうだな。兄さんが何か、問題を起こしてないか心配だ。行こう」
ムキムキさんの一言で射的のある屋台へと移動する。射的の屋台の周囲はちょっとした人だかりが出来ている。ライフルを模したコルク栓式空気銃を構え、次々と的をふたりは当てていた。それに屋台のおっちゃんは青い顔になっていた。
「お、ヴェスト、お前、何か、欲しい景品あっか?」
野次馬の中を割って入る。俺らに気づいたうさぎさんがムキムキさんに気づいて、構えを解いて振り返った。
「…あ、いや。俺は別に…」
そう言葉を濁しつつも、一瞬、ムキムキさんの視点が特賞のデカいリラックマのぬいぐるみに止まったのを俺は見逃さなかった。それはうさぎさんも同じだったらしく、ニヨリと笑い、リラックマのぬいぐるみへと狙いを定め、引き金を引いた。…パンっと軽い音と共にコルクがリラックマの眉間に命中し、落下する。それに「おおーっ!」と野次馬から歓声が上がった。
「持ってけ、兄ちゃん!クソ、やるじゃねぇか!」
ヤケクソ気味におっちゃんがリラックマのぬいぐるみをうさぎさんに差し出す。それを受け取り、うさぎさんはニッと笑った。
「おっちゃん、アリガトな。楽しかったぜ。欲しいの、コレだけだから、他の景品は返すな!」
台の上に積み上げられた景品を一瞥し、うさぎさんが言う。おっちゃんはその言葉に感激のあまり涙ぐんでいる。うさぎさん、マジ、カッケー!!その横では菓子大袋を大量ゲットしたハンバーガー君が御機嫌だ。…ってか、戦利品、菓子ばっかじゃねぇか、ハンバーガー君…。
 
「ん、やる。お兄様からのオトシダマだぜ!」
「…あー、うん。ありがとう」

ムキムキさんが恥ずかしそうにリラックマのぬいぐるみを受け取る。それを満足そうに見やり、うさぎさんも御機嫌だ。その横で本田さんのデジカメがパシャパシャと忙しい。
「年始早々、爺を萌え殺す気ですか!ウハwwwたまらんwwwww」
…本田さん、実に楽しそうだ。

「…アーサー」
「何だよ?」

菓子を両手いっぱい抱えたハンバーガー君が眉毛さんに何かをずいっと差し出す。それに驚いたような顔をして、眉毛さんが緑色の瞳を瞬いた。
「これ、あげるよ。君、こういうの好きだろ?」
ハンバーガー君が眉毛さんに差し出したのは、可愛らしいうさぎのぬいぐるみ。それを挙動不審気味に受け取り、眉毛さんは瞳を潤ませた。
「…べ、別に欲しくないけど、も、もらっといてやる!」
何で、素直に「ありがとう」と言えないんだ、眉毛さん。でも、ぎゅうっとして、何か嬉しそうだ。
「こっちもこっちで、萌!…いやぁ、早起き、いえ、徹夜した甲斐がありましたねぇ」
…俺は、本田さんが実に楽しそうで、何よりだよ。
 
 
 
 お守りを扱ってる授与所に戻って、本田さんが皆にお守りを買ってくれた。お金を渡そうとしたら、
「お守りは人から頂くのが、更なるご縁を多幸を願う意味でいいそうです。私からの気持ちです。受け取ってください」
と断られてしまった。
「なら、菊の分は俺らが買ってやるよ。皆、異存はねぇな?」
うさぎさんが口を開く。それに皆が頷いて、うさぎさんが皆から回収してお金を受け取り、授与所でお守りを購入してきて、本田さんに手渡した。
「…有難ございます。何か、凄くご利益ありそうですねぇ」
「当たり前じゃん!」
紙袋から、本田さんがお守りを嬉しそうに取り出し、一瞬、困ったように表情を凍らせた。手元を失礼とは思ったが覗きこむ。
 
(…安産御守…)

これは言葉を失う。…漢字、読めなかったんだろうな…うさぎさん。一緒に付いて行けば良かった。
「…皆さんの想いが篭った御守、爺、大事に致しますね」
本田さんは大人だった。何事もなかったかのようににっこりと笑って、御守を懐に仕舞った。
 
 
 
 
 
 神社を後にし、神社の裏山に登る。遊歩道があるお陰で歩きやすいが塗装されているわけではない。着物の皆は大丈夫かと足元を見やれば、本田さんを除いて、流石に靴を履いていた。…日頃の運動不足に息を上げつつ、山頂を目指す。空は徐々に白み始めて、黄色い帯が広がる。裏山は御来光を拝もうと俺らの他にもカップルや家族連れがいる。日の昇る方向に視線を向け、日の出の瞬間を待つ。
 
「…日の出ですねぇ」
 
ゆっくりと遠くの山並みから太陽が顔を覗かせ、ゆらゆらと上がっていく。それを皆で眺める。
「やはり、元旦に見る日の出は格別なものがありますねぇ」
「だな。身が引き締まる思いがする」
 
世界が平和でありますように。
 
昇る太陽に柄じゃないけれど、そんなことを俺は祈った。
 
 
 
 
 
 
 さて、初詣を済ませ、御来光を拝み、どれ、帰って寝るかと思ってたんだが、うさぎさんに「雑煮を食ってけ!」と本田さん家に連行された。…まあ、家に帰っても、爺ちゃん婆ちゃん、親父に母さんは婆ちゃんの親戚の旅館に親族で集まるとかで泊りにいってしまっていないし、兄ちゃんは最近、彼女が出来たらしく、大晦日は彼女の家にお泊りらしい(リア充爆発しろ!)。…まあ、いっかと本田さんの家にお邪魔する。
 
「お雑煮は和風と洋風がありますが、どうしますか?」
 
本田さんに聞かれ、洋風って?と尋ねると、髭さんが特製ブイヨンを持ち込み、雑煮の出汁になるスープを拵えたらしい。それなら、そっちを食わねばと思う。庭では七輪でハンバーガー君とムキムキさんが餅を焼いている。この餅、クリスマスの翌日に餅つき大会を決行したときのものだ。
 
「餅が焼けたぞ」

漆器の美しい汁椀に餅を入れて、出汁を注ぐ。和風はすまし汁仕立てで、鶏肉にかまぼこ花形に繰り抜いた人参、三つ葉、椎茸のシンプルな雑煮だ。洋風は野菜が色々と入り、鶏肉が入っている。トマトの赤が目を引く。
「いただきます」
スープを一口。
 
「ウマー」
 
体も心も温まる美味さだ。雑煮を食し、今度こそ、お暇しようかと思ったが、今から皆、寝るのでお前も菊に風呂借りて、寝ろ。起きたら、耐久人生ゲーム大会をやるから、お前も参加しろと言う。大晦日、除夜の鐘を聴き終わった後、皆でずっと人生ゲームをしていたらしい。帰るに帰れなくなり、結局、本田さんのところで雑魚寝で爆睡。バイトの時間が始まるまで、白熱した人生ゲームに付き合わされる事になった俺だった…。
 
 
 
 
 まあ、そんな感じで、今年一年も始まり、振り回されながら過ぎていきそうです。
 



 






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