私の現在いるところは、春のようにのどかで暖かく、持て余すほど時間がある。たまにローマと言う男が神とどうでもいいことで口喧嘩を始め、それを無言でゲルマンと言う男が威圧し、仲裁するのがこの世界の日常だ。最初は何事かと思い、仲裁に入ろうとしたが無駄なことだと解り、関わらないようにしている。
余りにもすることがないので私は手持ち無沙汰にフルートを吹いたり、作曲したり誰も読みはしない論文を書いたり、たまにプロイセンがどうしてるかと地上を見下ろしたりする以外はすることがなく、暇を持て余してる。昔は暇などないほど、それこそ死の間際まで働いていたのだからな。だから、空いた時間を何に使って良いのか解らないのだ。若い時分は時間が出来たならやりたいことが山のようにあったはずなのだが…。…私は退屈なのだと思う。
「チチチ！」
不意に小鳥の鳴き声がして、私は辺りを見回した。黄色い小鳥がか細い足に何かを掴み飛んでくる。小鳥は旋回すると、差し出した手のひらに降り、掴んだ何かを落とした。
「鍵？…これは手紙かね？」
小鳥の足に結わえられた紙片を解くと小鳥は小さな翼を羽ばたかせ、空へと戻っていく。それを見送って、私は紙片を開いた。
プロイセンに一週間、目隠しで、とある一室でひとりで過ごして頂く事になりました。
プロイセンは寂しがり屋のクセに「一人楽しすぎるぜー！！」と強がりを言います。
そんな彼の元に、一日一回、部屋に誰かが訪問することになりました。
制限時間は、一時間。
訪問してきた誰かを当てることが出来たなら、プロイセンの勝ち。
当てられなければ、訪問者の勝ち。
勝った方の言うことをひとつだけ、どちらかが訊くと言うルール。
月曜日は日本。
火曜日はイギリス。
水曜日はフランス、スペイン。
木曜日はオーストリア、ハンガリー。
金曜日はロシア。
土曜日は「あなた」。
どうか、あなたに勝利の女神の幸あらんことを。
今日は土曜日。土曜日の訪問者は私、フリードリヒ。
たまには、あやつの顔を間近に見るのもいいだろう。天上からお前を遠目に見るには老眼には些か堪えるのでな。
[36回]
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