忍者ブログ
「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
05 . April
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

03 . November


16手の平:懇願(親父)


1~2の間の繋ぎが悪いなと思ったので、若フリッツ視点の話を追加。

参照 フリードリヒ大王 啓蒙専制君主とドイツ 著 村岡 皙










拍手[5回]



「ラスト・ワルツ 幕間」
 
 
 
  親友を自分の過ちで失い、生きる価値もなしと消沈し、自死を図ろうと試みたが、周りに諭され、悔悟帰服の宣誓を父に誓い、キュストリンの町に粗末な部屋と漸く寒さを凌ぐことが出来る衣食を与えられ、厳しい監視が付き、紙やペンを手にすることも書物を読むことも一切許されず、軍人としての地位を停止され、幽閉され、死ぬことも許されず、自分の愚かさを嘆く悔恨の日々を私は送っていた。
 
 そんな日々が続く中、いつも父の傍らに控え、離れることのないプロイセンが、私に面会に来たのは夏の日差しを感じさせる初夏の頃だった。
 
 監視の制止を振り切り、従者を連れることもなく、一人で現れた彼女は、私の顔を一瞥し、鼻を鳴らした。
「…少しはマシな顔になったかと思って見に来たが、相変わらずだな。これじゃあ、カッテも浮かばれねぇな」
開口一番の皮肉に、彼女を睨むが彼女は意に介することもなく、赤を睨め付けた。
「いつまでも逃げてんじゃねぇよ。どんなに逃げたって、お前はどこにも、死ぬ以外の逃げ場はねぇんだ。いい加減、諦めろ」
解りきったことを告げられ、カッと頭に血が上る。私は父も、父の傍らに当たり前のように控え、女のくせに男の形をして、小馬鹿にしたように自分を見やる彼女も大嫌いだった。
「五月蝿い!お前に、私の何が解ると言うのだ!カッテを殺したのは父とお前だろう!」
怒鳴った瞬間、容赦のない平手が飛んだ。唇が切れて、血の味が口内に広がる。父に殴られ慣れてはいたものの、彼女に手を上げられたのは初めてで、打たれた頬を抑え、呆然と彼女を私は見つめた。
「直接、手を下したのは確かにウィルヘルムと俺だ。でも忘れるな!間接的に手を下したのはお前だ。お前の愚行が、カッテを殺したんだ!」
肩を怒らせ、私を睨む赤は怒りに燃えていた。彼女は息を吐き、私の胸ぐらを掴んだ。
「カッテはな、最後まで悪いのは自分だと、お前は何も悪くない。甘言に乗せられただけなのだと、自分の命と引き換えにお前を許すようにウィルヘルムと俺に嘆願していた。断首台に上がり、許された最後の言葉も、お前を許すように願う言葉だった!」
カッテの最期の瞬間を私は覚えてはいない。私はギロチンの刃が堕ちた瞬間、気を失ってしまったのだ。その後の記憶は曖昧で、茫然自失の体にあった。
「カッテは優秀な軍人だった。生きていれば軍功を上げ、名を上げていただろう。お前に関わったばかりに、汚名を着せられ、命を落とすことになった。…お前が今、生きているのはカッテが自分の命を差し出したからだ。それを解りもせずに、いつまでいじけて、腐っているつもりだ?」
襟元を掴んでいた手が、ドンっと私の胸を突いた。
 
「己の愚行を悔いているのなら、カッテが賭した命の価値に見合った王になれ」
 
壁にずるりと凭れた体が沈む。見上げた彼女は真っ直ぐに私を見つめていた。
「…私に、その価値があるだろうか…?」
その目を力なく、私は見つめ返す。彼女はつっと顎を上げた。
「それは、お前の今後次第だろ」
言いたいことは言い、用事は済んだとばかりに踵を返す。長い銀の髪が揺れるのを私は見送った。彼女の言葉が痛いほどに、この身に沁みた。嘆いているだけでは何も変わらない。
 
「…王になれ…、か…」
 
自分が王になるに相応しいか…、今、解ることは自分は相応しくないと言うことだ。そして、プロイセン、国家たる彼女の隣に並ぶには、覚悟も経験も足りぬ。自分には欠けているものが多すぎる。
 
 王になること。
 
それが、私が親友カッテに対する供養であり、餞となるのだ。私は心を入れ替え、長年、憎むばかりであった父と和解を果たした。
 
 思えば、彼女はこうなることを望んで、私に会いに来たのだろう。
 
 父の政務を手伝うようになり、彼女と接する機会も増えた。粗野で乱暴者の礼儀知らずと思っていた彼女は、意外にも礼儀正しく、立場に甘えることなく自分を律し、寛容で気さく、下々の者とも軽口を叩き、周りに対する気遣いも忘れない。癇癪を起こした父を上手く宥め、諌めることが出来るのは彼女、一人だけだった。…思えば、私はこの頃から、彼女に惹かれ始めていた。
 名を呼べば、赤と青を混ぜた美しい瞳を細め、微笑い、長い銀糸を翻し、臆することもなく先陣を切って戦場を駆け抜ける彼女の美しさに惹かれぬ男はいなかった。
 
「…私は君の、王になりたい」
 
ポーランド王位継承戦争に出陣に際し、彼女がお目付け役として同行し、皇帝軍オイゲン公の本営に加わった際の事。私の初陣に彼女は喜び、私は彼女に自分を認めてもらえたことが嬉しかった。口にするつもりのなかった言葉を、私は漏らした。彼女はそれに目を細め、笑んだ。
 
「なれよ。いい王になれ。俺が自然と跪き、忠誠を誓いたくなるような王に」
 
彼女の言葉に私は彼女の隣に立つに相応しい王になるべく、一層励んだ。…そして、叶わぬと最初から解っている想いは募るばかり…。そして、運命の日が訪れる。
 
 父の崩御。
 
 臨終に立会い、長かった父と私の戦いは終わり、後事を託され、王たる責任の重さを知ることになった。…涙など、流すことはない。悲しむものかと思っていた私の頬を涙が伝う。過ぎ去っていった悲しい日々の思い出が脳裏を過る。
 
「自分は苦しめられた人々のための王となろう」
 
決意はカッテへの悔悟、そして、彼女への誓いだ。
 
 
 喪が明け、明日は即位式。前夜、それを祝うべく、宴を開いた。
 
 
 彼女にドレスを贈った。もし、それを、彼女が着て、現れたのならば、言うまいと心に秘めてきた想いを私は告げるつもりだった。軍服のままならば、胸に秘めたままでいようと思っていた。
 純白のドレスを纏い、ホールに現れた彼女は息を飲むほどに美しかった。どんなに美しく着飾っても、彼女の美しさに他の女が敵うことなどない。その場に居た全ての人々が彼女に見惚れ、息を潜めていた。
 
 彼女が自分をどう思っているのか?
 
私は知っていた。交わる視線の多さ。彼女が私に向ける困惑を含んだ微笑に潜む怯えを。禁忌に触れることを恐れ、拒絶するかのように伏せられる視線を。
 
 
 
 彼女が、何を考えているのか。
 
 
 
私のこの想いは、彼女にとって重荷にしかならないことを知っている。私は彼女と共に、永遠は生きられない。いつかは彼女をおいて逝く。それでも、彼女の心に深く残りたいと望んでしまった。
 
「君に私のすべてを捧げると誓う。君は何も返さなくていい、ただ、私の傍に居てくれ」
 
彼女の手のひらを手に取り、口づける。
 
 懇願。
 
彼女は口づけた手を引っ込め、ぎゅうっと胸に抱き、赤らめた頬で俯く。動揺、困惑しているのだろう。
「…お前が何、言ってんのか、全然、解んねぇ…」
「解らなくていい。ただ、私は君に尽くすだけだ」
そう、彼女に想いを受け入れられることはなくとも、その気持は変わることはない。彼女の髪を飾る薔薇を攫う。結っていた銀の髪が解け、夜風になびく。その髪を梳いた。
 
「…風が出てきたな…。侍従たちが私達を探しているだろう。私は広間に戻る。君は部屋に戻りなさい。侍従には私から、人酔いして気分が悪くなったとでも言っておく」
 
 
 
 
 明日からは、彼女と共に歩む永遠を願う日々が始まる。
 
 
 
 
背を向け、彼女の髪を飾った赤い薔薇を私は唇で撫でた。
 
 
 
 

【2】



PR
NAME
TITLE
TEXT COLOR
MAIL
URL
COMMENT
PASS   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Schalter
mail
メールアドレス記載の場合はメールにて、記載が無い場合はサイトにてお返事いたします。
P R
ACT
Powered by NINJA BLOG  Designed by PLP
忍者ブログ / [PR]