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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
05 . April
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20 . October


16手の平:懇願(親父)


一度は書いてみたかった若フリッツと女普。
女普は、兄さんとはまた違った美味しさがありますな。



 




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「ラスト・ワルツ」
 
 
 
 
「何だよ、このドレス…」
 
喪が明け、王太子が王へと即位する前夜、お披露目を兼ねた舞踏会が開かれることになり、それに必ず出席するようにと、フリードリヒから念を押され、嫌々ながらも出席することになった。準備のために控え室へと呼ばれたプロイセンが見たものは、フリルとレース、リボンをふんだんにあしらった純白のドレスで、そのドレスの隣にはドロワーズ、つま先の細い刺繍の美しい靴、コルセットに薔薇の花…それを目にして、プロイセンは眉を寄せた。
「…まさかとは思うが、これを俺に着ろと?」
問えば、控えていた女官は頷き、それにプロイセンは顔を顰めた。
「冗談じゃない!何で、そんなもん、俺が着なきゃなんねんだ?…服はこれでいい。目障りだ。片付けさせろ」
踵を返して、部屋を出て行こうとすると年嵩の女官がプロイセンを止めた。
「殿下の御命令です。プロイセン様にはこちらをお召しになって出席くださるようにと」
「はあ?」
その言葉にプロイセンは女官を睨むが、女官は宮廷に務めて長いため、怯むこともなく、プロイセンを見やった。
「…こんなの、俺に似合う訳ないだろ。…フリッツには俺から言っとく。片付けろ」
「お召しいただけなければ、私共が殿下よりお叱りを受けてしまいます。…そうなると、ここを去らねばいけなくなるかもしれません。…そうなったら、年老いた両親に仕送りできなくなってしまいます」
目尻をそっと抑えた女官に合わせて、控えていた若いメイド二人も悲しそうな顔をして俯いて見せる。それにプロイセンは苦虫を噛み潰したような顔をし、がしがしと不精に伸ばした銀髪を掻いて、暫く、煩悶し、溜息を吐いた。
「着れば、いいんだろ!着れば!」
「お解り頂けて嬉しゅうございます。…では、早速、その軍服をお脱ぎくださいませ」
女官の変わり身の速さに唖然としつつ、あっという間に女三人に囲まれ、ぎゅうぎゅうにコルセットで腹を締めあげられ、プロイセンは悶絶した。着付けが済み、いつもはひとつに括るか、そのままにしてある髪を丁寧に梳かれ結われ、その髪には赤い薔薇の髪飾り。頬の傷を隠すようにたっぷりと叩かれた白粉の香りに辟易しつつ、唇を紅で塗られ、漸く貴婦人の支度が一通り済んだ時には、戦に出たときの何倍も疲れた顔をして、プロイセンは椅子へと凭れかかった。
「…苦しい。死ぬ…」
世の女たちの支度の何と大変なことか。特にコルセットと言うヤツは酷すぎる。拷問器具か何かか。…息が出来なくなるほどだ。それだけで、ごっそりと気力を持っていかれた。
「淑女が見っともない。背筋を御伸ばしください」
女官の言葉にプロイセンは顔を上げた。
「…脱ぎたい」
「何を仰っておいでです。さあ、殿下がお待ちです。きっと、驚かれると思いますわ」
「本当にお綺麗ですわ。我が国…」
「流石は我が国、美貌では隣国に引けを取りませんわ」
メイドが立ち上がったプロイセンを口々に褒める。それに、プロイセンは溜息を吐いた。
「驚くって、俺の女装にか?」
「女装とはおかしなことを。本来のあるべきお姿をされているだけではありませんか。さあ、自信を持ってくださいませ」
「…自信って、何の自信だよ…」
ぶつぶつと悪態を吐きつつ、女官の案内で大広間へとプロイセンは向かう。煌々と灯る明かりにオーケストラが奏でる音楽、綺羅びやかに着飾った人々たちは談笑に余念がない。プロイセンは溜息を吐く。
 
「…フリッツめ、覚えてろよ!」
 
不本意なこととはいえ、上司になる男に恥をかかせるわけにはいかない。小声で小さく悪態を吐くと、プロイセンは背筋を伸ばし、顎を上げ、来賓たちの犇めく、広間へと、危険な前線へ一歩、踏み出すような気持ちで足を踏み入れた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 不意に空気が震撼し、さざめくように広がっていた声が止む。壇上のフリードリヒは大臣との談笑を止め、顔を上げた。波が引くように人々の群れが二つに割れ、見えた赤い絨毯の上を一人の淑女が歩いてくる。
 
 月の光のような銀の髪を結い上げ、その髪を赤い薔薇が飾る。月夜に咲く花のようなかんばせ。彩られた唇が美しい。長い銀色の睫毛が震え、赤と青を合わせた夜明けを思わせる双眸がフリードリヒを囚える。赤い唇がキッと一瞬きつく結ばれ、ふうっと小さく息を吐くのを、言葉も無くフリードリヒは見つめた。
 
「喪も明け、明日は国王としての即位。不肖、プロイセン、近衛隊隊長として王太子殿下へお慶びを申し上げます」
 
朗々とした口上を述べて、ドレスの裾を取り、腰を屈め、頭を垂れる。その優雅な仕草に、ほうっと息が漏れる。周囲のすべての人々が、プロイセンに見惚れた。細い項、露出した胸元は普段顕になることのないせいか白雪のよう。身に着けている装飾は髪飾りだけと言う質素さが、返ってプロイセンの美しさを際立たせる。一礼し、顔を上げたプロイセンは微笑してみせる。その微笑にフリードリヒは口を開いた。
「ありがとう。君に即位を喜んでもらえて、私も嬉しいよ。プロイセン」
壇上を降り、フリードリヒはプロイセンの前へと立ち、にっこりと笑んだ。それを見やり、プロイセンは周りに聞こえぬよう、小さな声でフリードリヒに皮肉を浴びせた。
「…女は嫌いじゃなかったのかよ?」
「君は特別だ。…まさか、こんなに化けるとは思ってもいなかった。ドレスも、君によく似合っているよ」
「…フン。褒めたって、何も出ないぞ。…っか、挨拶も済んだし、下がっていいか?…コルセット、苦しんだよ」
「それは、まだ困るな」
「何でだよ?」
首を傾けたプロイセンの手をフリードリヒは取る。指先だけは美しい衣装では隠れず、荒れている。日々、剣を握る手のひらは硬かったが、それでも華奢な造りをしている。フリードリヒは膝を折った。
「一曲、私と踊って欲しい。プロイセン」
恭しく、手のひらに口づけ、上目遣いにフリードリヒはプロイセンを見やる。驚いたように赤紫が瞬き、青を見下ろした。
「……喜んで」
暫しの逡巡。観衆の見守るこの場で、「無理」とフリードリヒに恥をかかせる訳にも行かず、プロイセンは不承不承頷く。それに嬉しそうにフリードリヒは微笑を返すとプロイセンの手を取り、大広間の中央に踊り出る。ドレスの裾がゆるやかに翻り、ぐっと抱き寄せられた腰が密着する。慣れないステップに蹈鞴を踏んで、プロイセンはフリードリヒの肩に頬をぶつけた。
「…悪い、汚した」
この日のために新調しただろう礼服に白粉が付いて、それにプロイセンは顔を顰めるが、意に介することもなく、フリードリヒはプロイセンの体を更に引き寄せた。
「気にすることはない。…君はダンスは苦手なようだな」
「…解ってるんだったら、誘うな。…ってか、顔、近ぇ」
「…気の所為だ」
そう返されて、プロイセンは俯くとひっそりと溜息を吐く。優柔不断のひ弱な坊ちゃんだった少年はいつの何か鼻持ちならない策士へと変貌を遂げている。女が嫌いだといい、正妃は傍にも寄せ付けず、このパーティーにも呼んでもいない。…先が思いやられるな…。視線を上げれば、青が自分を見つめていることに気づき、プロイセンは狼狽えた。
「…な、何だよ?」
「…君が、何を考えているのかと、気になってな」
「…別に、何も…、うわっ」
強引なリードについて行けず、足が縺れる。ぐいっと腕を引かれ、驚いて顔を上げれば、フリードリヒは庭へと出ようとしていた。それを引き止める侍従の声。それにプロイセンは足を止めようとするも、慣れない靴に踏ん張ることも出来ず、フリードリヒに引きずられ、暗い庭へと連れ出される。
 
「どうしたんだよ!?」
 
急かされ、辿り着いた先は庭の東屋。雲が切れ、覗いた月明かりが大理石を照らし、明るく見える。掴まれたままの腕が痛くなって来た。
「おい、フリッツ…」
振り向いた青に息を止める。次の瞬間、きつく抱き締められ、プロイセンは目を見開き、固まった。
「…君の前だと、私は冷静さを保てそうにない。君が何を見ているのか、何を聞いているのか、何をしているのか、何を考えているのか…君のすべてが気になって仕方がない」
腕が緩み、反射的に腰が引ける。「逃げないでくれ」と、懇願され、掴まれた手を振り切ることも出来ず、プロイセンは言葉を詰まらせ、黙りこむ。それをフリードリヒは見つめた。
「…私はずっと君が欲しかった。君のそばに居たかった。…その夢が漸く、叶う。…プロイセン、」
古傷の残る頬を撫でられ、プロイセンは肩を震わせ、フリードリヒを見やる。フリードリヒは驚くほど穏やかな微笑を湛えていた。
 
「君に私のすべてを捧げると誓う。君は何も返さなくていい、ただ、私の傍に居てくれ」
 
手のひらを手に取り、口づける。まるで、愛の告白だ。有り得ない。プロイセンは赤面し、口づけられた手を引っ込め、ぎゅうっと胸に抱き、俯く。…一体、これは何だ?…何の茶番だ?
「…お前が何、言ってんのか、全然、解んねぇ…」
「解らなくていい。ただ、私は君に尽くすだけだ」
伸びてきた指先が髪を飾る薔薇へと伸びる。結っていた銀の髪が解け、夜風になびく。その髪をフリードリヒは梳いた。
 
「…風が出てきたな…。侍従たちが私達を探しているだろう。私は広間に戻る。君は部屋に戻りなさい。侍従には私から、人酔いして気分が悪くなったとでも言っておく」
 
名残惜しげに離れてゆく指先。その指先に縋りたくなるのを、プロイセンは堪えて、背を向けたフリードリヒの後ろ姿を見送り、その場にへたり込んだ。
 
「…なんなんだよ…」
 
風とともにざわめく心。望んではならない、感情の変化を押し殺す。知れば、自分が変わってしまう。変わってしまえば後で、それに苦しむことになる。それを解っているからこそ、フリードリヒは言わなかったのだ。
 
 
 
 フリードリヒに二度触れられた手のひらが痛い。
 
 
 
その手のひらに唇を押し当てる。
懇願に応えられぬ我が身を嘆き、涙を流すことも出来ない自分をプロイセンは嘲笑った。
 
 




【幕間】
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