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「Axis Powers ヘタリア」の二次創作を扱う非公式ファンサイト。
20 . May
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06 . February

豆撒きならぬ、豆掴み大会なお話。








拍手[13回]



節分!!
 
 
 
 
 月ももうすぐ変わろうかと言う頃、コンビニにやって来た本田さんとうさぎさん。
 今年も節分を本田さん宅で開催すると言う。去年の大騒ぎで今年はやらないんじゃないかと思っていたので、
 
「今年もやるんですか?」
 
と、確認のために訊くと、本田さんはにっこりと笑った。
 
「去年は酷い目に遭いましたので、今年はルールを変更することにしたんですよ」
 
にこりと笑いつつ、本田さんは隣に立つうさぎさんを横目に睨む。うさぎさんは視線を合わせぬようそっぽを向いている。
 
「…去年は、…本当に酷かったですもんね…」
「…ええ。本当に…」
 
本田さんが溜息を吐く。
 
 去年の節分、俺は初参加だったのだが、非道かった。豆撒きなどという可愛いものではなく、日頃の恨みつらみをぶつけ合う豆撒き合戦と言うか…。
 本田さんが届いた配達の品を受け取りに玄関に立った隙にそれは勃発した。発端はハンバーガー君が眉毛さんに豆をぶつけたことからだった。それに眉毛さんがブチ切れ応戦し、それにエキサイトしたうさぎさんが乱入。いつ脱いだのか、股間に薔薇を装着した髭さんも参戦。眉毛さんに恨みでもあるのか、親分さんがハンバーガー君の味方に付き、逃げまわる眉毛さんを追い掛け、豆を投げ散らし、豆を避けようと正月前に張り替えた障子を眉毛さんが盾に取り、障子には穴が。眉毛さんが「大英帝国舐めんな!!EUなんか脱退してやるんだからな!!」と叫び始め、ムキムキさんが目に余る状況に止めに入ろうと試みるが、うさぎさんがムキムキさんを挑発する始末。親分さんが矛先を変えて、ムキムキさんに絡み始め、それに便乗して髭さんもムキムキさんに絡む。それにキレたムキムキさんが真っ先にうさぎさんをスープレックスで沈め、向かってくる親分さんをラリアットで倒し、ヘッドロックで髭さんを沈めた。その間、ハンバーガー君はひたすらニコニコ顔で眉毛さんを追い掛け回していたのだが、いきなり、硬直し、ダラダラと汗を掻き始めた。何事だ?と盾にした卓袱台の陰から、様子を窺うと、そこには鬼の形相の本田さんが寿司桶を手に立っていた。
 ムキムキさんのプロレス技で沈められた三人は襖に大きな穴を開け、うさぎさんは足を突っ込んで気絶してるし、ハンバーガー君の豪快な豆撒きにより障子には散弾銃、ぶっ放したような小さな無数の穴が空き、畳にには踏み潰された大豆の残骸が粉となり、酷い有様になっていた。
 
「一体、これは何ですか?説明していただけますか?」
 
額に青筋立てつつ、にっこりと笑う本田さんは般若もびびって逃げそうな程に恐ろしい。気絶していた三人は速やかに叩き起こされ、何故か六人で正座。俺も正座した方がいいのかと思ったが、本田さんに寿司桶を手渡された。
「先に食べてください」
「いや、俺も止められなかったし、同罪じゃ…」
しょぼんと言うか、今から落ちるであろう本田さんの雷に戦々恐々な面々が縋るように俺を見るので困った。
「この人達が暴れ始めたら、止めるのは上司だって無理ですよ。…で、この惨状の発端は誰ですか?…まあ、見当は付きますが…」
じとりと本田さんはハンバーガー君を睨む。ハンバーガー君は首を竦め、そっぽを向いた。
「…菊、すまない。止めるつもりがこんなことになってしまって…。襖は俺が責任持って直す」
悲痛な面持ちでムキムキさんが言う。それに本田さんは溜息を吐いた。
「ルートヴィッヒさんが責任を感じる必要はありませんよ。大方、ギルベルトさんとそのお仲間、二人の所為でしょう?」
じろりと本田さんはうさぎさんと親分さんと髭さんを見やる。うさぎさんはさっと視線を逸らし、下手な口笛をピューピュー吹き、親分さんと髭さんは我関せずな顔をしている。本田さんはまた大きな溜息を吐いた。
「…あの、本田、」
それに恐る恐る、眉毛さんが口を開く。それにつっと本田さんは冷たい視線を向けた。
「何ですか、アーサーさん」
「俺がアルの大人気ない挑発に乗ったからこうなったんだ。本当にごめん!」
その冷たい視線に怯えつつ、謝る眉毛さんに本田さんは視線を緩めると、うさぎさん、髭さん、親分さん、ハンバーガー君と視線を返して見やり、厳かに口を開いた。
「…素直に謝ってくるなら、許そうと思ってましたが、ギルベルトさん、アントーニョさん、フランシスさん、そして、アルフレッドさん…」
本田さんの声が一段と低くなるのに、四人は肩を竦めた。
「罰として、責任持って、障子と襖の張替え、散らかした豆の回収と掃除をする。歳の数だけ炒り大豆を召し上がって頂く…、お好きな方をお選びください」
掃除は兎も角、歳の数だけ、豆を食うって、大変なんじゃ?…本田さんを伺うとニコニコしている。それと反対に三人は青ざめ、何故かハンバーガー君は元気になった。
「800粒、食うのかよ?」
「え?俺なんか、軽く1000粒になっちゃうんだけど」
「俺もやで」
「400粒なら、楽勝なんだぞ!」
嬉々とするハンバーガー君に本田さんは悪魔の微笑を浮かべて言った。
「箸を使って、一粒づつ食べて頂きます。食べ終わるまで、寝かせませんし、正座で反省して頂きまます。逃げられると思わないでくださいね。本物の鬼に来て欲しくはないでしょう?」
箸に慣れ親しんでいない、正座の文化もない面々にそれはかなり厳しい。そして、最後の本田さんの言葉に四人はgkbr。…早朝から、障子、襖の張替え、掃除、片付けをすることに相成ったのだが、四人はそれでも素直に謝らなかった為、本田さんが近所の評判の寿司屋から出前で取った海鮮ちらし寿司は振舞われず、本田さん、俺、ムキムキさん、眉毛さんで頂くことになった。四人には本田さん特製の五目煮と具が干瓢のみの恵方巻きが振舞われたのは本田さんの温情だろう。…五目煮は俺らにも出されたが、美味しかった。…が、自業自得の結果とはいえ四人のジト目光線が凄かった記憶しかない節分だった。
 
「ルール変更って、どうするんですか?」
 
去年のことを思い出しつつ、訊ねれば本田さんが口を開いた。
「制限時間以内に箸でどれだけ豆を皿に移すことが出来るかにしようと思っています」
「…あー、それなら、障子に穴が空くことはなさそうですね。節分の趣旨からズレますけど」
「いいんですよ。どうせ、何かにかこつけてあのひとたちは騒ぎたいだけなんですから」
本田さんの言うことはもっともと言うか、多分、そうなんだろうなと思う。
「でも、皆さんに箸は大変じゃないですか?」
「正月の時にこのことは早々に申し渡してありますから、練習はなさってるんじゃないですかねぇ。それに皆さん、箸使いはそこそこお上手ですよ。アルフレッドさんは握り箸ですけどね。…本当は恵方巻きの早食い大会にしようかと思ってたんですけど、ルートヴィッヒさんに喉に詰まらせたら大変だと却下されてしまいましたよ」
心なしか物凄い残念そうに本田さんが言った。
「…恵方巻きの早食いですか。確かに喉に詰まりそうかも…」
そうならなくて良かったと心の中でムキムキさんに感謝しておく。…この日のうさぎさんは本田さんの不要な怒りを買いたくないからか、いつもの喧騒ぷりは形を潜め終始大人しかった。
 
 
 
 
 
 んで、節分の日がやって来た。
 
 この日、俺は夜中まで付き合わされるんだろうとバイトのシフトを変わって貰った。お土産に節分フェアで買った塩豆大福を土産に、本田さん宅へと向かう。いつもの顔なじみが既にもう揃って、卓袱台が二つ並んでその真ん中には豆を大量に盛った大皿がふたつ。空の皿と箸が四人分並べられていた。
「お、来たな!」
俺に気づいたうさぎさんが箸を動かしつつにんまりと笑う。俺は手にしていた紙袋を本田さんに預け、ムキムキさんが空けてくれた席に着いた。
「あの紙袋の中身は何だよ?」
「塩豆大福ですよ。好きでしょう?」
「おう!アレ、美味いよなぁ。お前、気が利くな!」
うさぎさんは更に御機嫌になった。…そして、問題の席順だが、隣の卓袱台のメンバーがかなり不穏過ぎる。ちなみに席順はこんな感じだ。
 
俺       うさぎさん       髭さん    眉毛さん
     豆皿                 豆皿
本田さん   ムキムキさん     親分さん  ハンバーガー君
 
何事も起こらなきゃいいんだけど、マジで不穏過ぎ。うさぎさんが仲間にいない分マシなんだろうけど、眉毛さんとムキムキさんをチェンジした方がいいんじゃ…と、思うが、うさぎさんとムキムキさんが「絶対、勝つ!」「俺は負けない!」と和気藹々と仲睦まじいことをやってるのを見ると、何か引き離せないし。…ってか、眉毛さんがそれをすげぇ羨ましそうに見つつ、ハンバーガー君をチラ見してるんだが、それをガン無視するハンバーガー君がある意味凄い。流石、世界のAKYは伊達じゃない。
 
「じゃあ、メンバーも揃いましたし、始めましょうか。…制限時間以内にお箸でお皿に大豆を移してください。一番多く、豆を移すことが出来た上位三名の方には賞品を準備してありますので、頑張ってくださいね」
 
本田さんの声に色めき立つ。
「菊、ソレって、菊とリツに有利な条件すぎないかい?不公平なんだぞ!!」
握り箸なハンバーガー君が抗議の声を上げた。それに髭さん、親分さんが同調する。
「そうだね。だって、使い慣れてる訳だし?」
「そや!ハンデが必要やで!!」
「…ハンデですか、…終了後に皆さんには二十粒づつ合計するということでどうでしょう?律君、構いませんか?」
「俺はいいですよ」
「皆さんは?」
異議なし!と言うことで、本田さんがタイマーをセットする。
「ポチくん、お願いします」
「わん!」
控えてた本田さんの犬がタイマーのスイッチをえいと押した。よく躾けられてるってか、賢けーと感心している場合ではない。俺は大皿に箸を伸ばす。
 
 まずは、一粒。
 
俺の対面に居る本田さんの箸さばきは物凄く華麗で、皿には豆がどんどん増えていく。意外にも上手に箸を使っているのは、うさぎさん。ムキムキさんも大きな手に細い箸は使いにくそうだが、善戦している。これは負けられないと俺も集中する。…でも、隣の卓袱台が気になって仕方がない。こちらはひたすら無言なのだが、向こうが物凄く、喧しい。
 
「あ、俺がソレ取ろう思っとったのに!」
「はっはは!早いもん勝ち!」
「ああっ、もう!全然、掴めないんだぞ!!」
「お前ら、うるせえ!エビフライぶつけんぞ!!」
 
エビフライぶつけんぞって、どこでそんな日本語、覚えてきたんスか、眉毛さん!!…突っ込み入れたいのを我慢しつつ、俺は気にしない様に「集中!集中!」と念じるがどうにも難しい。
 
「もー、親分怒ったで!!喰らえ、ふそそそそそそそそそ~」
「何、それ?意味わかんないしー。ってか、お兄さん、脱いじゃう!!」
「もー、君たち、ウザい、アーサーよりも激しくウザいよ!!もー、全然、掴めないじゃないかー!!俺はヒーローなのに!」
「お前ら全員、黙れ!呪うぞ!!」
 
キラキラと星が飛び、衣服と薔薇の花弁が舞い、バキッと箸が折れ、どす黒いオーラが渦巻いていく。俺は助けを求めるように、本田さんを見やるが本田さんは気にもせず、豆を盛って行き、ムキムキさんもうさぎさんも我関せずで作業に集中している。
 
(駄目だ!俺はこの三人みたいに無我の境地には辿り着けない!!)
 
俺の心がぽきりと折れた所で終了のブザーがなる。それに「はー」と本田さんが顔を上げた。
「いや、爺、つい、夢中になってしまいましたよ」
「菊は流石だな。一番じゃないのか?俺も頑張ったんだが、及ばないな。兄さんはどうだ?」
「俺?…うーん、まあまあだな。…ってか、リツ、お前、たいしたことねぇのな」
俺の皿を見やり、うさぎさんが言う。
「…隣が気になって…」 
「甘いな。そんなもん気にしてたら負けるぞ。遊びとはいえ、勝負事には真剣にやらねぇと。な、ヴェスト!」
「そうだな。…でも、仕方ないだろう。あんなに五月蠅くてはな」
ゲームは終わったが、何やらモメている四人をちらりとムキムキさんは見やる。本田さんはそれを見やり溜息を吐いた。
 
 
 
 さてさて、勝負の結果だが、
 
一位 流石の圧勝で、本田さん。
二位 意外なことに、うさぎさん。
三位 堅実が物を言い、うさぎさんと二粒差だったムキムキさん。
四位 辛うじて、日本人の面目躍如な俺。
五位 エビフライぶつけんぞな、眉毛さん。
六位 ふそそそそ、謎の呪文な、親分さん。
七位 何で脱ぐ必要があるんだ? 髭さん。
最下位 箸、破壊。ハンバーガー君。
 
…と、なった。
 
 
 
「…さて、賞品ですが私は主催者ですので、辞退させていただきます。二位から四位の方に賞品を授与したいと思います」
 
二位のうさぎさんには虎屋の太棹羊羹セット、三位のムキムキさんにはリラックマの対面写真立て(正月に撮った皆の集合写真&うさぎさんとムキムキさんが仲睦まじい写真入り)が本田さんから手渡され、うさぎさんは「菊、愛してる!」と叫んで、本田さんにハグするわ、「ドイツに来た際には全領邦を上げて、歓待する!何でも言ってくれ!!」と、ムキムキさん。それに満更でもない顔な本田さん…。…ってか、賞品のセレクトから見るに結果を多分予測してたんだろうなと思う。
 
「さて、律君にはこれを。古いもので悪いんですが…」
 
本田さんが俺に差し出して来たのは一冊の古いアルバムだ。そのアルバムを受け取り、本田さんを俺は見やる。口を開きかけた所で、うさぎさんが首を突っ込んできた。
「お!コレ、キュウゾーが居た時、作ったアルバムじゃん。ウチにあったのは空襲で焼けて、今は坊ちゃんとこにしかねぇんだよな」
「懐かしいな。後で、見せてもらっていいだろうか?」
「…はい。…でも、これ、本当に頂いていいんですか?」
本田さんを見やると、本田さんはにっこりと笑った。
「私はもう既にデータ化しましたので。よければ、ルートヴィッヒさん、データを差し上げましょうか?」
「それは助かる」
アルバムを開く。色褪せた写真の中にはうさぎさん、本田さん、ムキムキさん、ここにはいない貴族さんや姐さん、イタリア君がいる。その中に若かりし頃の爺ちゃんが居た。それを見て、俺はとても不思議な気分になった。昔は爺ちゃんが、今は俺が皆の輪の中にいる。それは本当に偶然が生んだ奇跡に近いことなんだろうと思う。
 
 
 
 
 
 
…と、まあ、ここで感動的に〆られたら良かったんだが、そうはならないのがこの人達な訳で…。
最下位にはやはり、罰ゲームがあった。…本田さんは諦めてなかったらしい。
 
「じゃ、アルフレッドさん、イイトコ見せて下さいね」
 
凄くいい笑顔で本田さんがハンバーガー君に差し出したのは、超極太恵方巻き。それに、俺はドン引きだが、そうならないのが大食いの本場出身たるハンバーガー君だ。
「本当に全部、食べていいのかい?」
「ええ。丸ごと一本、行っちゃって下さい」
恵方巻きを掴み、ハンバーガー君があむっと咥えた瞬間、一眼レフのフラッシュが光った。本田さんを見やれば、あらゆる角度から、ハンバーガー君が恵方巻きを頬張るさまを激写している。…ああ、いつもの本田さんだなぁ、遠い目をして、俺はそれを見守った。
 
 
 
 
 その後はまあ、いつも通りのどんちゃん騒ぎとなったのだが、人気を払った廊下で眉毛さんが本田さんに何やら交渉していたのは、……見なかったことにしたいと、俺は思う。
 
 
 
 
 
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